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児童養護施設では、「丁寧なケア」は難しい?

こんにちは、ヨウです。

今回は、児童養護施設の職員について考察します。

タイトルの通り、私は、児童養護施設で丁寧なケアをしていくことには限界があると思っています。その理由について、解説します。



職員一人が抱える児童が多い

職員数および労働時間の海外との比較

これは、2008年発効の「保育・看護・福祉プリマーズ」(吉澤英子・小舘静枝編・ミネルヴァ書房)に記載されている職員数およぎ労働時間の海外との比較です。

ちなみに、今の日本は児童:職員=4:1になっているので、少し改善されているのですが、それでも諸外国の20年近く前の支援に追い付いていない現状がわかると思います。


ちなみに、2010年の段階で、日本の「児童のいる世帯の平均児童数」は1.70人です。出生率は年々下がっていますから、今はもう少し数字が小さくなっていると予想されます。つまり、今の日本では、一つの家庭で子どもが2人いれば多い方です。そうなれば、仕事として子どもの世話をする職員が、「1人で4人の世話をする」ことは、相対的にとても困難なことだと言えるでしょう。

当然、担当1人がずっと世話をするわけではありません。しかし、一般家庭のように毎日世話をしてくれる人がいるわけではないのです。安定した人間関係がないことは、子どもに良い影響を与えるとは言えません。



児童養護施設に空きがない

施設数は603か所 定員32,613人 入所者数27,288人というデータがあります。これを単純計算すると、施設の空きは約16%です。しかし、これはあくまで全体の数字で、地域によって、余裕があるところと満床になっているところがあるでしょう。

現在、厚労省では、施設の小規模化や里親委託を進めています。しかし、私の経験上、子どもの特性から「里親委託が難しく、専門的なケアが必要」と判断され、施設措置になる子は多かったのです。また、施設によって仕組みが異なるため、「空いている施設にとりあえず措置」ということも難しいのです。


つまり何が言いたいのかというと、施設は慢性的に空きが少なく、満床状態に近い施設も多い、ということです。

そうなると、施設職員は常に最大数の子どもたちのケアに追われます。ただでさえ、職員一人で抱える子どもの数が多いのにも関わらず、常にMAXの人数を相手している職員に、「丁寧なケア」は難しいのではないか、と考察できます。



悪いのは、施設側ではない

ここではっきりさせたいことは、「丁寧なケアが難しい」のは、児童養護施設側の落ち度ではないということです。

前述したとおり、今の日本の制度が原因で、丁寧なケアから遠ざかっているのです。

職員一人が抱えている児童が多く、子どもそれぞれが心に傷を負っていて、解決してあげなければならない課題が山積みです。その上、施設職員の人手不足、求められる高度な専門性、低賃金、離職率の高さ等々、職員自体が抱える問題も多いのです。

これらの問題を現場レベルで改善することは難しいことは明白です。やはり、国や自治体が手を加えることが必須といえます。



終わりに ~人手が必要~

私は、高校生から施設に入所しました。そのおかげか、自分のことはある程度でき、必要最低限の支援で十分だったので、ここまでやっていくことができたのだと思っています。アフターケアについても、私自身、必要だと思いませんでした。制度による金銭支援がありましたから。

しかし、「もっと目をかけてほしかった」という思いもありました。私は手のかからない児童だったでしょうから、尚更です。


やはり、職員さんの負担を軽減しつつ、今施設にいる子に丁寧にケアできて、アフターケアまでできるようするには、職員の数を増やすことが先決でしょう。児童:職員=1:1が理想です。そうすることで、職員さんの専門性も上がっていく(専門性を高める行為に時間を割くことができる)と思います。


厚労省には、システムレベルで職員の待遇改善に着手して欲しいと思います。

今日はこの辺で。


参考資料↓(児童養護施設等について:平成29年 厚生労働省)


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