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【後半】「心の知能指数(EQ)を大切にする教育とは?」対談&ミニセミナー イベントレポート

 6月21日に開催された、Learx X Creation (ラーン・バイ・クリエーション)の第4回オンライン対談の後編をお届けします。米シナプススクール からケイコ・サトウ ペリー先生をお招きし、Learn X Creation 代表の竹村詠美と「心の知能指数(EQ)を大切にする教育とは?」についてお話しいただき、後半では、日々取り入れていただける要素が沢山詰まったミニレッスンもしていただきました。

 後半をお読みいただきながら、ケイコ先生の問いについて是非読みながら気持ちを感じてみたり、ワークをしてみたりしていただけましたら嬉しいです。また、EQ チェックインやスペシャルタイムのお話など、日々生徒さんやお子さんと接する中で、すぐ取り入れていただけるエピソードをケイコ先生から沢山ご紹介いただいております。

前半のイベントレポートはこちらからご覧ください。

文責:LXC 島田敦子

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ミニレッスン「EQチェックイン」

 ミニレッスンに入る前にまずは気持ちを落ち着けるために深呼吸。そして、1つ気持ちに気づく習慣について、試してみましょうというワークを全員で行い、zoomのチャット機能を使って感情について感じたことを共有しました。

ケイコ先生: 

「気持ちに気付く習慣があったらどんなことが起きるでしょうか?自分が自分や子どもの気持ちに気付く習慣が今の環境にあったらどんなことが起きるでしょうか?」

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ケイコ先生の問いかけに対して、参加者の方からは

・相手にかける言葉優しくなる
・本当に望むものなどを知ることができる
・深く繋がることができる
・生活が穏やかになりそう
・集団全体が落ち着く

 と言った言葉が皆さんからどんどんチャットから溢れてきました。つい、日々後回しにしてしまいがちな自分自身の感情を見る、感じるということですが、1日1回でも自分の感情にフォーカスしてみることで、自分や子どものことを良く知るきっかけになるかもしれません。皆さんは、「気持ちに気付く習慣があったらどんなことが起きるでしょうか?自分が自分や子どもの気持ちに気付く習慣が今の環境にあったらどんなことが起きるでしょうか?」と問いかけられたらどのような感じがするでしょうか?

 そして、EQチェックインを行う前に、ケイコ先生よりシナプススクールでの様子をお話しいただきました。まずは「EQチェックイン」についてです。例えば、シナプススクール では、朝子どもたちがその日の気持ちを1-10のコップに自分の気持ちに近いスコアのところに小さなバーを入れたりします。(下記の写真参照))例えば、1とか2とか気持ちの状態が低い場合には先生が個別のフォローなどをします。

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  また、その日のテーマに合わせてチェックインをします。「色」であれば今日の感情を色で表たりなどをします。また小学生のクラスでは、気持ちが色で表されている図に自分の顔写真を貼って、一番感情に近いところを表現するなどもあります。

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 バラの花、蕾、トゲなどを使って気持ちを表現するなども取り入れています。バラの花は嬉しかったこと、トゲや嫌なこと、蕾はこれから期待していることなどを表現しています。

 EQチェックインについてのお話の後、実際にセミナーに参加された皆さんにミニレッスン形式でEQチェックインを体験していただきました。

ケイコ先生:

「実際に家の中にあるもので、今の気持ちに一番ぴったり合うものを持ってきてください」

というお話があり、各自自分の選んだ物とそれを持ってきた理由を少人数で別れた時に、気持ちと理由を話しました。

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 ミニレッスン後では、皆さんバラエティに富んだアイテムを持ってこられていて、気持ちを表現するツールは本当に多岐にわたり、そして一人一人違うということがとてもよくわかるエクササイズでした。是非、こちらのイベントレポートを読まれた方にもご自宅でご家族で試してみていただけたら嬉しいです。

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Q&Aセッション

Q&Aセッションでは、参加された方々からいただいた質問をケイコ先生に一つ一つ丁寧にお答えいただきました。

質問:「セルフサイエンス」というのはSELを学ぶ「教科」の位置付けになるのでしょうか?

ケイコ先生:

 「セルフサイエンス」とは、自分自身を対象に学ぶことになります。例えば生徒たちで話しあったり、感情シェアをしたらどうだったかを分かち合ったり、時にはプロジェクトにしたり、絵を書いて表現したりなどをしながら、自分自身について学ぶことです。また、学校カウンセリングで教えているようないじめについても学んだり、友人関係をどう作れるのかについても学日ます。中心はどうやったら心の知能を高めることができるかを学んでいます。

質問:子どもたちのEQ検査とは、どのようなものになるでしょうか?

ケイコ先生:

 EQ検査では、子どもの感情に関わる知能の傾向や自己評価がわかります。教師の結果、子どもたちの結果を踏まえて特性を理解したり、教え方についても論理派か感情派なのかを知って教え方を変えたりなどに活かしています。まだ小さい子どもの場合には保護者が子どもに代わって質問に答えていただきますが、小学校2年生から自分で受けることができます。

質問:繊細なお子さんへの対応など、保護者として大事にしたほうが良いこと、何か保護者へのアドバイスがあればお願いします

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ケイコ先生:

 一番申し上げたいのは、気持ちや心の知能のことに関して、教科書がない。私たち教員や親が自分の気持ちをどうやって感じ、行動を選び、どんなことを社会に貢献しているか、どんなふうに人と繋がっているかが全て子どもにとっては教科になります。是非、自分のことを労って上げて、自分自身に共感して、助けを求めていい、気持ちが大変だったら休んでいい、というのを知っていただきたいのが一つのメッセージです。
 また、気持ちにチェックインをしたり、気持ちがどうなっているのかを見ているよというメッセージは子どもと繋がる上で大切なことです。例えば、スペシャルタイムという時間を区切ってその間だけ絶対に他のことには目を向けないで一対一で愛情を注ぐ時間を作るということを取り入れて見てはどうでしょうか。

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質問:アメリカの学校現場におられる立場として、今の日本の学校教育及び教育環境についてお感じになられる事はありますでしょうか?日本にSELを導入する際に、気を付ける事、配慮すべき事などがありましたら教えて頂けますか?

ケイコ先生:

 美術、音楽などどこからでもSELを取り入れることはできると思います。例えば、先生であれば、授業の中で気持ちに訴えることに取り入れて見たり、EQチェックインは誰でもできるのでやってみたりなど。また、今まで取り組んできた中で比較的うまく行っていることに、もっと気持ちの認識などを取り入れたらどんなことができるのかな?などを考えてみたり、うまくいっているものに少しだけSELのようにするのはどうしたら良いか?など考えてみるなどはどうでしょうか?また、SELに関しては研究結果は多く出てきています。

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 様々な質問がでていましたが、一つ一つとても丁寧に言葉を選んで回答されるケイコ先生の姿がとても印象的でした。最後に参加された方々からのご感想や、LXC運営スタッフの感想もご紹介させていただきます。

参加された方からのご感想

 子どもたちはすごく自分の気持ちを表現するのが言葉で表現するのが難しいので、先生の方から気にして見ていくというのと同時に、子どもたちからどんな気持ちか表現しやすい方法などがとても勉強になりました。取り入れていきたいと思って聞いていました。すごく楽しかったです。(モンテッソーリスクール 教諭)

 小学校5年生を担当していて、自分の気持ちなどを表現するということのが難しいなとちょうど思っていたところでした。(コロナ対策で)シールドに囲まれていたり、クラスも半分の中でどうやって子どもたちの気持ちを表現することを行って行くのが良いかと思っていたので、早速、薔薇の花、とげ、蕾のエピソードなど、子どもたちと共有できたらすごく変わると思いました。明日から何ができるかなと思いお話を伺っておりました。(小学校教諭)


LXCスタッフ感想

 SELとしてどんなことをするのか、たくさん具体的に紹介して頂けたのが何よりの収穫でした。SELについて興味を持てば様々な文献にリーチできる昨今ですが、それを目の前の子供とのやりとりにどう落とし込んだら良いかについては、これまでなかなか知る機会に恵まれませんでした。
 併せて、”special time”という、子供と向き合う時間をどう確保するかの考え方を知れたのは収穫でした。毎日子供と共に生活する中で、どうしてもSELの観点を頭に置いて向き合う機会が流れてしまいがちだったので、これなら自分にも続けられそうだと思えました。ケイコ先生のお話を伺って、私は先生のファンになりました!日々子ども達の心に向き合う中で、どうしたらもっとその心に届くだろう?と追っかけて、修士を取り、アメリカに渡り、self-scienceの先生にまでなるなんて、なんて素敵なのだろうと。先生と帽子をまぶかにかぶった男の子のお話はグッとくるものがありました。方法論の発展や、学術的研究の深化ももちろん価値は高いですが、何より、SELによって一人でも多くの子供が幸せへの力を手に入れることがイチバンだなと感じました!私も私の息子と、関わる子供達と、ケイコ先生のように向き合えるように頑張っていきます。(LXC スタッフ:日出間 真理子)

最後にケイコ先生からメッセージをいただきました。

「気持ちをチェックインすることをミニレッスンでやってみて、参加者の方々から沢山のフィードバックをいただいたり、感想をお伺いして、今日お話しした内容を取り入れてみたいと言っていただけると嬉しく思っています。
 これからどんなふうに日本が変わっていくのかとても関心がりますし、どう変わっていくのかを注目したいですし、自分も一員として加えていただけたら嬉しいです。ありがとうございました。」

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ケイコ先生からSELをご家庭などにて実践いただけるようにといくつかツールをご紹介いただきましたので、こちらに掲載させていただきます。
スペシャルタイム チェックリスト
自己認識のための6つの質問
プルチックモデル:感情リテラシーを高める感情の輪
EQを学び始めたいすべての人のための基礎講座 Unlocking EQ
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登壇者


佐藤ペリー・恵子 (Keiko Sato-Perry)

東京生まれ。慶應義塾大学教育心理学の修士号を取得。 私立母校で中高の英語教員を務め、 教員として生徒の抱えている悩みや問題に対応しきれないことに涙した結果、2度目の教育学修士号のため米国スタンフォード大学に留学。 現地高校で日本語教諭を務めた後、 感情インテリジェンスの勉強に専念するようになる。 非営利団体ハンドインハンドで子どもの気持ちに耳を傾けることと 親子の信頼関係を育むことの大切さを学び、 インストラクターとして親を対象としたクラスを教える。のち、 非営利団体シックス・ セカンズの感情インテリジェンスのトレーニングを経て、 シリコンバレーの私立小学校のSEL スペシャリストとなり、現在キンダーガーテン(5歳) から小学校4年生までを対象としたSELの授業を担当、 生徒の感情、対人関係のサポートを務めている。二児の母。

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竹村 詠美

マッキンゼーを卒業後、アマゾンやディズニーなどで、消費者向けインターネットサービスに従事。2011年に日本最大級イベントコミュニティプラットフォーム、 Peatix.com を共同創業。グローバルビジネスの最前線での経験から日本の教育環境を憂慮し、2016年の Most Likely to Succeed の上映会開始を皮切りに教育の世界に。FutureEdu を通じて全国での上映会実施をサポート。2019年から「創る」から学ぶ環境が当たり前になることを願う団体、Learn X Creation 事務局長。創造性溢れるライフロングラーナーを育てる教育文化作りや世界レベルのSTEAM/PBL教育を中心テーマに活動中。小・中学生二児の母。
慶應義塾大学経済学部卒 | ペンシルバニア大学ウォートンビジネススクール修士卒|ペンシルバニア大学国際ビジネス修士卒

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