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はじめに

2021年12月、東京都世田谷区の生活工房で「どう?就活/自分と仕事の出会い方」というイベントがひらかれた。私(西村佳哲)は、そのプログラミングと、当日の進行役・きき手を担当しました。

ゲストは、初日が本城慎之介さん(1972年 北海道生まれ。学校法人軽井沢風越学園理事長)、牟田都子さん(1977年 東京生まれ。校正者)のふたり。2日目が東野華南子さん(1986年 埼玉生まれ。Re Building Center Japan)、団 遊さん(1974年 京都生まれ、アソブロック株式会社前代表)の計4人。

それぞれと各2.5時間のトークセッション。会場に集まった方々を交え、就活や仕事や会社の話をたくさん語り合った。

チラシの裏面にはこんな言葉(リード)が載っています。

進学・サークル・恋愛・家族のこと、いろんなことが忙しい10代~20代。この時期だれでも必ず一度は直面する悩み、それは「自分の未来」について考えること。「何になりたいか分からない」「どんなふうに自分をいかしていけばいい?」「何のために働くんだろう?」など、将来について漠然とした不安や疑問を抱いたまま、いわゆる《就活》がはじまって戸惑っている人も多いかもしれません。

このイベントは、働き方研究家の西村佳哲さんやゲストとともに「働き方・生き方」「仕事との出会い方」について考えるセミナーです。いろんなゲストや参加者同士の対話から、それぞれの「自分の未来」について、もっと柔軟で多様な可能性を見つけるきっかけとなることを願っています。

これは、生活工房の担当スタッフで本プログラム実施の起点にあたる中村幸さんが、意を汲んで書いてくれたもの。ちなみに私が送った素案はこちら。

リクルートスーツやエントリーシートや合同説明会のほかに、仕事と出会う方法がないのはつまらないな…と思っている就活生はいませんか。あるいはそんな先輩の姿をみて不安を感じている後輩も(中高生も含む)。「就職出来ればどこでもいい」わけじゃないよね? ゲストの力を借りて、一緒に考えてみよう。

私自身は、25年ほど前になるか。ある1社の1,2,3次試験を受けて新卒入社。その後6年少々働いたのち30歳で退職。以後、自分の会社も始めながら、なかばセルフエンプロイド的に仕事を重ねてきた。
自分自身の就活を思い返すと、努力や工夫はしたものの、さしたる苦労はしなかったし、美大卒ということもあってよく聞く「◯◯ナビに登録」「エントリシートを何枚も書いて」といった就活は体験していない。知らない。就活について蘊蓄を述べる立場にはありません。

でも日本の就活のあり方については、それをくり返している企業などの雇用者にも、受け入れている就業者たちにも、「本当にそれでいいの?」という気持ちがある。エンプロイアビリティ(employability/雇用される能力)という言葉も嫌いです。

個人の商品化を促進してなにかいいことあるのかな。モノやサービスや、さらに人まで商品だらけの世の中は、売るとか買うとか、損とか得とか、そんな経験と価値観でいっぱいになってしまうんでないの? そういうのはつまらない、と思っている人間です。そんな私が「就活」というテーマにどう向かうのか。集まったみなさんとどんな時間をつくり出せるか。

二日間の初日のテーマは「働くってなに?」。以下、チラシから。

「卒業して社会に出たら、嫌なことでも、我慢して働かないといけない」。もしそう感じている部分が少しでもあったら、それはあなたの周りにいる大人たちの問題。社会には他にもいろんな大人がいます。そもそも〝働く〟ってなんだっけ?

2日目は「会社ってなに?」。

大人が集まって働いています。社会に必要なものをつくって、お金を稼いでいます。でも中には「本当に必要かな?」と思うようなものもある。稼げれば、なにをしてもいいんでしょうか。そもそも〝会社〟ってなんのためにあるの?

といったことについて、会社の起業と成長を体験し、現在は学校をつくって経営している人(本城さん)。20〜30代前半を通じいくつかの職場で働いたのち、いまは自宅で校正の仕事を日々重ねている人(牟田さん)。いわゆるリクルートスーツでの就活を経て、出会ったパートナーと小さな職場づくりに愛情を注いでいる人(東野さん)。大学卒業後は小説家になるべく就職活動をせず、いろいろあったのち、人を育てる会社を形にして20年経営してきた人(団さん)。

彼らの「仕事って」「会社って」、そして「いまふりかえる自分の就活」を語り下ろしてもらいました。

「就活はこうすれば上手くゆく」みたいな学習ポイントの指南や要約は頼んでいないので、彼らの語りは、ほぼそのままノーカット版で公開します。冗長な情報。「こういう人になりましょう」という意図は本人たちにもないと思う。「私はこう」という話でしかなくて。でもその個別的な話に照らされて、自分のことや、道が、少しでもよく見えるようになればいいなと。

各編2時間近くあるので、いっぺんに聴くのは大変だと思います。少しづつ聴いたり、他の人と一緒にあーだこーだ喋りながら見ると楽しいんじゃないかな。

2022年の4月末以降、この4名とのアフタートークをオンラインで実施します。それぞれのつづきを聴きたい・参加したい人は、西村佳哲のTwitterを眺めていてください。アナウンスします。また「どう?就活」は、この秋に第2回をひらくことになるかも。この件も決まったらアナウンスします。◎


本城慎之介(ほんじょう しんのすけ)
1972年 北海道生まれ。学校法人軽井沢風越学園理事長。1997年に三木谷浩史さんと楽天株式会社を創業。取締役副社長を務めたのち、30歳で退任。「教育」をテーマに定め、横浜市立東山田中学校長、学校法人東京女学館理事、軽井沢町の野外保育・信州型自然保育等の現場を経て、2020年4月に軽井沢風越学園を開校した。5児の父。2007年から数年間、高校生を対象に5泊6日の『仕事の学校』を主宰。副題は「大学の先にあるコト。受験の前に学ぶこと」「仕事力の前に、仕事観」。就活を迎えてからでなく、高校生の頃から仕事観が育まれるには?という課題意識から開かれていた場で、同プログラムを通じて西村とも出会った。

牟田都子(むた さとこ)
1977年 東京生まれ。校正者。和光大学人文学部文学科(現・表現学部総合文化学科)卒。図書館司書の仕事と、店舗スタッフの仕事を経て、30歳から出版社で校正の仕事を開始。独立後は、ナナロク社、亜紀書房、晶文社等の文芸書を軸に、日々ご自宅を中心に働かれている。その様子は番組「7RULES」でも紹介されているが、自分のペースを大切にした働き方を、ご自身でつくり出されている様子が印象的だった。ご両親やパートナーも校正者。共著に『あんぱん ジャムパン クリームパン 女三人モヤモヤ日記』(亜紀書房)、『本を贈る』(三輪舎)。現在単著を執筆中とのこと。

東野華南子(あずの かなこ)
1986年 埼玉生まれ。中央大学文学部卒。大手カフェチェーンの店長、ゲストハウスでの女将を経て、2014年から東野唯史氏と空間デザインユニット「medicala」をスタート。旅先のポートランドで訪れた古材住宅資材販売ショップ「Re Building Center」に感銘を受け、許可を得て同名のお店を諏訪市にオープン(2016)。「REBUILD NEW CULTURE」を掲げる同社には、現在14名のスタッフを軸に多くの人がかかわっている。古材を循環させるリサイクルショップのあらたな業態開発と同時に、働く一人ひとりの人生に息を吹き込む仕事場として、無数の工夫や愛情が注がれているように見える。

団 遊(だん あそぶ)
1974年 京都生まれ。商業ライターとして活躍したのち、27歳で「世の中を編集する」アソブロック株式会社を設立。同社は業務実績だけでなく、「複業必須」「出社義務なし」「ギャラ自己申告制」などの就労制度でも注目を集めているが、応募も内定も二人一組。片方が採用基準を満たせばともに採用。片方が辞退したらともに辞退という「コンビ採用」を試みた年もあるとか。一般的な企業との違いは、「会社とはなにか?」という価値観の違いから生まれているはず。サイトの求人ページには、「個人が持つワークビジョンや、ライフビジョンの実現に向けて、何かしらの力になりたいと願うインフラです」とある。詳しく聞いてみましょう。


つづく