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『かかわり方の学び方』 伊勢達郎さんたちの「とえっくラジオ」で…その1・お金の話

『かかわり方の学び方』や、私のファシリテーション観に大きな影響を与えている徳島のフリースクール・トエックの伊勢達郎さんが、月イチの「とえっくラジオ」にゲストとして招いてくれた。まもなく私が神山町を離れるので、その前に!と。4月12日(火)夜にライブ配信されました。

すると翌々日の朝、友人の辰巳真理子さんが音源をテキストにして送ってくれた(早い…)。読み返すと面白かったので、4話にわけて公開します。


その1:お金の話

フナ まっちょさん@岡山からの質問。「〝仕事〟について考えています。〝食べていくために仕方なくやるもの〟と思っていましたが、もっと大切なものだなと。生活の一部であり、遊びの一部でもある。好きで得意なことで、誰かの役に立って、幾許かのお金をもらえる。そう考えるようになりました。

 一方で〝仕事=商売、お金儲け=卑しいこと〟と儲けることにどこかで罪悪感を感じています。トエックも、『清貧は美徳』という考えに則っているような。そうじゃないような。〝お金〟についてどう考えていますか?」

西村 〝仕事〟という言葉に抱いているイメージで、不自由になっている感じですね。「儲ける」というと、自分の働き以上でウハウハって感じだけど、「稼ぐ」だともっと等身大な感じで悪い印象も浮かびにくいから、言葉選びの問題かなと思う。

 もう少し言うと、お金そのものは善でも悪でもなくて、ただの道具やメディアでしかない。話がそれるけど、初めて電話が登場したときってすごい賛否両論あったそうです。「会わずに話を済ませるのは無礼」とか。でも電話自体はただのテクノロジーであって、それで犯罪も可能だし大切な関係も育める。
 〝お金〟もそうで、私たちがそれをどう取り扱うか。「お金はなんか汚い」とか「お金を得るのはよくないんじゃないか」とあらかじめ考えているとしたら、ちょっと不自由でもったいないと思う。

達郎 罪悪感もなにも、これまで過剰に儲けたり、過剰に稼いだ経験があまりにもないのでね。もちろん「清貧でいいな」と思ったことも一度もない。
 仕事については、僕は「働く」という言葉を使う。子どもたちにもよく言うのは「働くことは、お金を稼ぐことじゃない」って。「違う」って強く言いたいな。そこをイコールで言いがちなんだよね。すごく貧しいことだと思う。

西村 お母さんの仕事なんて、全部ないことになってしまうよね。

達郎 そう。「働く」を尊重する。お母さんや、お父さんも含めて家事を再評価して、その中身と豊かさの、先にあるのはキャンプなんです。キャンプが豊かで楽しい。いろんなことが学べるんですよね。
 手応えのある働き方。お金を超えてる。究極的に言うと、みんながお金なしにそうなれば(キャンプの中でのように働き合えれば)と思う。
 働かずに、手や頭や身体をなにも使わずに、お金だけ動かしているのは、いくら荒稼ぎ出来ても貧しい。いっぱいあるじゃないですか。やったことないけど。

西村 キャンプは大事な出発点なんだ。

達郎 そう、実感としてね。「キャンプが楽しい」ということの中に、たくさんの答えがあると思う。なんで、あんな不便なことが楽しいんだろう?って。ひっくり返すと。「便利は豊かさ」じゃないっていうことなんだよね。勝ち負けじゃなくて。

 自分が貢献したり、大好きな場所に無償の愛を届けても、なんか認めてくれない。存在が際立たない。やってることが見えない。誰がコンビニのトイレを掃除してる?っていう話ですよ。あんなピカピカで。
 でもキャンプでは、みんな目立つんですよ。役立たないことまでが目立つ。なんかこうよくわからんことやってるのも、なんか「ありがとう」みたいになる。花一輪いけることだって。魚釣ることだって、みんなが食べて「ありがとう」ってなる豊かさがある。

西村 出発点はキャンプ。

達郎 二本立てですね。キャンプとカウンセリング。トエック以前の、僕が子どもの頃のキャンプは軍隊みたいなそれで。
 大きくなってキャンプ場のお兄さんをしていた頃は、それをもう少しグループワークで科学しよう。子どもたちにプログラムを提供して、豊かなものをつくっていこう。感動する。みんなで火を囲んで歌を歌って涙を流す、みたいなことがあったけど、カウンセリングに出会ってね。もうなんかできなくなったというか。
 そうでない豊かな場を経験しちゃって…というのが、トエックをつくってる。

ぷー カウンセリングというか、キャンプカウンセラーっていう。

達郎 カウンセリングに基づいたフリーキャンプ。それにインスパイアされて、そういうのをしようと集まった仲間がトエック。
 

それがなにを運んでるか

ふな プーさんは、さっきの質問に応答します?

ぷー お金のこと、私にあまり聞かない方がいいよ。(笑)

達郎 ぷーさんの口癖は「金ならある」だから。(笑)

ふな どう考えてもあると思えないんだけど。(笑)

ぷー 私の親は、高度経済成長の世代。沖縄でも(やりとりが)どんどん現金に変わってて、父母はそのお金を貯める。焼け野原になったところなので、すごい厳しい中を辛い思いして、お金を貯めるっていうことをしていたんだよね。
 けど子どもの私は、お年玉をもらうより、一緒に座ってお話ししてほしいし、一緒にご飯をつくってっていう時間を求めてた。「金じゃない。愛だ」みたいな。「欲しいのそれじゃない」っていうのを、子どもの私の心の中が叫んでたんよ。
 だから笑い話で「金などある」「金じゃないんよ」って言うのね。でもそれを言ったら母には泣かれてね。大人になって、トエックに出会って、生意気になってから言ったんだよね。

ふな 「お金じゃなくて、一緒にいてほしかった」って言ったんだ。

ぷー そう。でも辛いよね。そのお金をどうやって生み出してるか。いまなら想像もつくし…っていう。そこがすれ違ったままね。

西村 立川談志さんが「お札は2種類あった方がいいんじゃないか」という話をしていたらしい。
 お金自体がお金を増やす仕組みがあるじゃない。マネーゲームのような。その中で生まれたお金のお札の色と、たとえば農家さんが丹精込めてつくった米や野菜を売って得たお金や、ぷーさんのお母さんが一生懸命働いて得たお金の印刷の色はちゃんと変えるべきだって。

達郎 談志らしい。(笑)

西村 〝お金〟という言葉でつまずかずに、それがなにを運んでるかだよね。

ふな そういうお金とそうでないお金の色の見分けが、自分でも出来たらいいのにね。西村さんから(私たちへの)質問はいかがですか?

> その2:「学力」の話 につづく


動画リンク 2022年4月12日の「とえっくラジオ」
・導入:ゲスト紹介、伊勢達郎・トエックとのつながりなど、なごやかな語らい
・その1:お金の話
・その2:学力の話
・その3:「おもしろい」ってなに?
・その4:民主主義、どうよ?

>「とえっくラジオ」
子育て・人間関係・教育現場の悩み事に、伊勢達郎・プー・ふな、トエックの3人が、楽しく真面目にこたえるネットラジオ。

*伊勢達郎さんのインタビューが収録されています