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2023年2月のふりかえり|春になってしまう

2月◯日

慶應義塾大学SFC 環境デザイン表彰(槇文彦・伊藤滋賞)の講評審査会に参加。24名の学生さんたちのプレゼンを聞きながら、飯野賢治さんの言葉「ゲームはワンアイデアではつくれない」を何度か思い出した。

思い付いた一つのアイデアでつくり始めて、一度行き詰まると袋小路から出るのが難しく(単視点なので他の角度で再アプローチしにくい)、どうすればいいかわからないまま時間がすぎてしまう。何名かの学生さんにそんなことが起きていたかも…と思った。

若い人、あるいは企画の素人さんは、本人のアイデアに縛られて不自由になってしまうことがままある。そこから動けなくなることが。

でも仕事量は厚く、学生さんたちはよく温まっている感があった。伴走する先生方の働きがいいんだろう。
講評審査会は朝から夜まで時間を要したけど、最後の最後まで「やれやれ」という表情をする大人が一人もいない。金運、勝負運、仕事運などいろいろな運があるが、「人に恵まれる」こと以上の運のよさはないよな…と思いながら帰宅。

2月◯日

遠野のクイーンズメドウ・カントリーハウスに2週間ほど滞在して、3つのワークショップを連続開催した。

 2/6〜9「ひとの居場所をつくる|田瀬理夫さんと」
 2/13〜16「馬と暮らす、その方法と実践」
 2/17〜20「やまの自習室|QM Country Study House」

食事は弘前で「ゆぱんき」という店を営んでいる山崎綾子さんが、お店を閉じ、看板猫の世話を友だちに頼んで来てつくってくれた。

2週間の滞在は初めて。厳寒期の遠野も初めて。ワークショップも初めての内容が多く、自分にも想像以上の体験になった。感じたことを書き留めておきたくなってテキストを2本書いた。どちらも長い。

3つ目のワークショップは「やまの自習室|QM Country Study House」で、それぞれが読みたい本や、集中して取り組みたいことを携えて集まる滞在。静かな図書館のような、国際便の機内のような、旅人が集う山小屋のような不思議な情景が展開した。

別々のことを、同じ場所で、影響を与え合いながら…というのは理想的。一瞬「ワークショップってもう全部これでいいんじゃないか?」という気にもなったけど、しばらく後味を確かめる。

後日、参加していた女性の滞在記(note)を見かけ、同じ場所で自分が撮っていた写真とのクオリティの差に驚く。

2月◯日

遠野の滞在を終えて南下。某企業のミーティングで大阪に2泊。終えて東京へ戻り、その足でプールへ。
泳いでいるときは無心、ということはなくて、いつもその大阪の会社のことを思い浮かべている。去年プール通いを始めた頃がちょうどその仕事が始まった頃だったから、スイッチがつながっているのだと思う。

原宿駅前のスティルウォーターのオフィスを訪ね、代表の白石宏子さんにミネアポリスの現代美術館での体験談をきく。知りたいことや体験したいことは、増えてゆく一方。

2月◯日

世田谷区の生活工房で「対話の効用」というシリーズ企画に参加。「どう?就活」の仕事を一緒にやってきた中村幸さんがご担当。この日は斎藤環さんによる「オープンダイアローグ」のレクチャーとワーク。

「なんとなく想像がつく…」と思い込んでいたオープンダイアローグは、想像とだいぶ違った。配布された台本を読み上げる形で、そのプロセスを追体験するワークがわかりやすかった。

わかったことの一つは「けっこう形式的なんだな」という点で、そこがいいと思った。熟練の個人技に依存しないというか。
使いこなしのソフトウェアを人が加えないとまるで機能しない「お箸」と違って、それ自体に使いこなしのソフトウェアがあらかじめインストールされている「スプーン」のようなよさがありそう。こう書くと現地でトレーナー研修を受けてきた人(現在日本に6名いるらしい)にムッとされるかもしれないが、その汎用性がポイントだなと思った。

個人技に矜持のある精神科医は、そこが気に入らなくてむしろ批判的になりやすいかも。当日のふりかえりの一部をTwitterに書いている。(まだ途中)


2月◯日

映画「ケイコ 目を澄ませて」を見る。16mm。説明が少なくて行間の広い作品。メ~テレ(名古屋テレビ放送)や朝日新聞社と、制作委員会を組んで実現している。できるんだ。低予算映画の、現在の可能性を知りたい。でもこう書いてゆくと、自分は「知りたい」ことが多すぎるな。


2月は、その大半を遠野でのワークショップが占めた。

その最中、参加メンバーのミニワークを体験しているときに「春になってしまう」という言葉がポロッと出てきて驚く。もう少し冬がつづくと助かるんだけど、そうもいかないか…。身体が感じていることに、頭や気持ちが追いついていない。