【手記#2】カエルの交尾

こんにちは、牢村です。
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カエルの胚を用いた実験はご存知ですか?高校生物の図説を眺めていた時、アフリカツメガエルの初期胚を用いて器官形成の経過を観察する実験が目に留まりました。と言っても僕は理系に暗い上学習熱心でもなかったため、引き付けられたのは実験そのものではなく、その手順説明でした。

①雌雄のアフリカツメガエルにそれぞれホルモンを注射する。
②蓋を閉めたバケツに1日放置すると、受精卵ができている。
③…

初めてこれを読んだ時、僕は形容し難い不快感のようなものに襲われました。カエルにどれほどの知能があるか僕は知りません。恐らく、殆ど持たないのでしょう。ただ、この淡白過ぎるテキストの掌の上で、この雌雄は生殖本能の昂りがホルモン注射による虚構とも知らず、互いを求め交尾し、新たな個体を作ろうとしたのです。その末にできた受精卵を、ついには実験材料として取り上げられたのです。僕にはこのカエルの無知や錯覚が、そして実験者という神の俯瞰が、何とも恐ろしかったのです。断っておきたいのは、僕には科学における生命倫理の在り方を疑問視する意図もなければ、絵空事の陰謀論を広げて不用意に危機感を煽るつもりもないということです。ただ、自分の感情即ち葛藤や苦悩そして愛、更には行動までもが全て、知覚し得ないバイアスや環境的要因に支配されている事に慄いたのです。サブリミナルの話ではなく、もっと内面的な、一個体という存在の無力が生々しく抉り出されたような気がしたのです。何を以て愛とし、何を以て意思とし、何を以て自己とするのか。カエルの実験如きでそこまで考えるなよ、と突っ込まれるかも知れませんが、僕にとってこの感覚は、アフリカツメガエルという長いカタカナを一発で長期記憶してしまうほどに衝撃だったことは確かです。

読んでいただきありがとうございました。

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