【首斬り処刑人】 type1 #逆噴射プラクティス
「生まれる時代を間違えたかな」
校長室、趣味の悪い革張りソファに腰掛け、トロフィーに歪んで映る自らの顔を眺めながら、山村クビトはぼやいた。
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全国高校総体剣道大会にて、見事に優勝杯を持ち帰ることに成功した山村は盛大な歓待を受けられるものと思っていたが、ミニバスに揺られて雨傘高校に戻った彼を出迎えるものは、顔をしかめた生活指導担当の安藤だけだった。安藤は無理やり作った明るい声で、山村を校長室に案内した。
どうにもうまくない空気、ニブさを自覚する山村にも察しがついた。これから校長と話すのは、あまりいい内容ではないだろうということに。
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3時間ほど前、雨傘県立体育館にてインハイ個人戦が挙行されたが、会場は凄惨そのものであった。救急車がひっきりなしに到着し、全国から集った腕に覚えある剣士たちを次々と会場から運び出していったのである。その対戦相手はいずれも山村であった。
山村の竹刀を振るう様が尋常でないことは、応援のために会場を訪れた素人の目にも明らかであった。素振りで竹刀が空を切る音は体育館中に木霊した。胴に剣を受けた者は壁まで吹き飛んだ。篭手に受けた者は骨が手の甲を突き破った。突きを受けた者は脛骨粉砕、呼吸困難に陥った。決勝戦に至るまで悉くを病院に送った。
トーナメント表の反対側の準決勝戦は、およそ試合の様相を呈していなかった。勝者は山村と相対する羽目になるのだ。双方及び腰、掛け声は震え、応援席も沈黙。判定にもつれ込み、決勝進出が決まってしまった勝者はへなへなと床に座り込んだ。棄権すればよいものを、彼は決勝の舞台に立ち、面を受けて頭蓋陥没、緊急救命室へと旅立った。
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「殺さないよう、加減はしました」
「ああ、君を呼んだのは説教のためではないよ」
山村の考えを察したように校長は言った。
「君にオファーが来てるんだ。降雨コーポレーション人事部からね。なんでも、首を斬ってほしいんだと」
【続く?】