「回避の超人」 【企画書部門】 #週刊少年マガジン原作大賞

キャッチコピー:

時速150kmを超える剣先、全身全霊の突きが、かすりもしない。

あらすじ:

 フェンシング部主将マトバが脚を負傷し入院。数合わせで練習試合に参加した初心者ワタヌキツルギは思わぬ活躍をして、フェンシング部に入部する。
 超人的な動体視力と反射神経で剣先を回避する能力を持つワタヌキは、その才能を遺憾なく発揮する。日本代表選手や、幼い頃から訓練を積んできた選手たちが、ワタヌキの前に、残酷なまでにあっさりと敗れていく。
 自分には何の才能もないと思っていたワタヌキはフェンシングにのめり込む。自らの存在価値はこれしかないと思い込むほどに。
 そんな中、ジュニア世界王者ワールドチャンピオンである主将マトバが退院し、部に復帰する。
 超人ワタヌキと王者マトバの戦いが始まる。

第1話のストーリー:

 運動部強豪の雨傘高校に一般入学したワタヌキツルギ。忘れ物や遅刻が多く勉強もイマイチ。自分には何の才能も無いと思っていた。

 雨の日、傘を忘れ教室で立ち往生するワタヌキ。
 フェンシング部のカサネガサネに、傘を貸す代わりにフェンシングの団体戦に出るよう頼まれる。世界王者である主将が脚を負傷し人数が足りない。

「世界王者の代わり? 負けたら責任取れないよ」
「ただの練習試合だし、俺だって強いから心配するな。体験入部だと思って頼む」

 翌日、遅刻しかけたワタヌキはユニフォームを借り、着替えながらルール説明を受ける。
 種目はエペ。剣先で先に相手を突けば得点。同時なら両方が得点。

「そんだけ?」
「超シンプルだろ。突きが先に当たればスコアボードが光る仕組みだ」

 団体戦は3人対3人の総当りで9ラウンド。1ラウンド3分。合計得点を競う。
 第1R、カサネガサネが危なげなくさばき、5−0。
 第2R、ワタヌキの出番。

「緊張するよ」
「楽しんでこい」

 カサネガサネはワタヌキに期待していない。初心者は剣の間合いを測ることが出来ないからだ。一方的に突きをもらい続けると予想した。
 だがワタヌキには突きが当たらない。全てかわす。
 相手選手は、踏み切って身を投げ出すように突きを放つ。このフレッシュ(飛び込み)と呼ばれる動きは、トップ選手であれば瞬間的に時速150kmを超える。
 だがスコアボードは光らず、得点なし。ワタヌキはかわした。
 カサネガサネは驚愕。初心者がすべての攻撃を回避している。それも剣を使わずに。

「つーか剣使え! 攻撃!」
「そうだった」

 ワタヌキの突きは慣れない素人の動き。それでもかわしつつ2得点。
 第2R終了、合計7−0。
 カサネガサネは稼いだ点差がなくなると思っていたが、結果は逆。

「ワタヌキ、まさか剣先が見えてるのか?」
「視力1.7あるから」
「そんなことを聞いてるんじゃねえ」
「?」

 その後もワタヌキは回避し続け、雨傘高校は団体戦に勝利。

「センスあるぜ。フェンシング部入れ。来年は団体レギュラーになれる」
「人数足りてないだけじゃん。でも面白かったし入部しようかな」
 
 相手校の選手がワタヌキに声をかける。

「強いのになんでいままで出場してなかったんだ? 団体メンバーには入らなくても、個人戦でそこそこやれたろ」
「? フェンシングやるの今日が初めてだよ」

 驚愕する相手を残し、ワタヌキは練習場を出ていく。

第2話以降のストーリー:

・ワタヌキ入部後の初練習
 カサネガサネともう一人の部員トラノオ。この2人は小学生の時からフェンシング道場に通っていた。10年近いフェンシング歴。
 そんな2人の鋭い突きを、ワタヌキはことごとく回避した。
 中級者は経験から間合いを掴み、相手の動きを読んで立ち回る。経験のない初心者ワタヌキにそれはできないはず。
 だが、ワタヌキの持つ動体視力と反射神経がありえないはずの回避能力を実現する。ワタヌキの資質は努力で手に入る範疇を超えていた。カサネガサネとトラノオはワタヌキに畏敬の念を覚える。

「あいつ、大谷翔平に3メートル前から球投げつけられても避けられるんじゃないか?」
「もはや人間じゃねえな」

 しかし、ワタヌキは突きがお粗末だった。超人的な回避能力も台無しの攻撃力の低さ。
 2人はワタヌキにどうフェンシングを教えればいいのか迷う。普段頼りにしている主将は入院中で不在。
 フェンシングの伝統的なアンガルド(構え)では、ワタヌキは動きがぎこちなくなり、回避能力を発揮できないことがわかった。結局、ワタヌキは我流の構えで戦うことにした。攻撃だけをひたすら特訓する。1ヶ月後の市長杯に向け、3人は切磋琢磨する。

・雨傘市長杯(1)
 入部から1ヶ月後。
 競技人口が少ないフェンシングでは、外部との試合の機会が貴重な地域もある。そのため、市長杯ではあるが、全国様々な地域の高校から選手が集まった。その中には、ジュニア日本代表選手の、タケノコとイトクズの2人が含まれている。トップクラスの選手にワタヌキの回避能力と攻撃力は通用するのか。入部後初の腕試し。
 ワタヌキには公式戦の出場歴がなく、他校からは完全にノーマーク。入院している主将のマトバの代わり、数合わせと見られ、一切警戒されていない。さらに、ワタヌキの構えは我流。ウォーミングアップを見た他校の生徒からは、伝統的な構えがまるでできていない、単なるド素人だと思われた。
 油断されている状況も有利にはたらき、ワタヌキは華々しい公式戦デビューを飾る。
 個人戦で、ワタヌキは準決勝まで順調に勝ち進む。それも失点ゼロ。

・雨傘市長杯(2)個人・準決勝
 準決勝の相手は日本代表選手イトクズ。
 イトクズは独特の軽やかなフットワークが特徴の選手。一定のリズムで動いているように見えるが、絶妙にタイミングをズラし続け、相手の攻撃や防御のタイミングを誤らせる。
 だが、この変則的フットワークは、ワタヌキには効果がなかった。そもそもワタヌキは自分からは攻撃しない。1ヶ月かけてワタヌキが習得したのは迎撃(コントラアタック)スタイル。攻撃をかわすと同時に隙の出来た相手を仕留めるカウンタースタイルで、終始優位に立ち回る。
 初出場にして日本代表選手を下し、決勝にコマを進めたワタヌキ。会場中の注目がワタヌキに集まる。

・雨傘市長杯(3)個人・決勝
 決勝の相手は日本代表選手タケノコ。
 トーナメント表の反対側で、カサネガサネとトラノオを接戦で破って決勝に進んできた。
 タケノコはワタヌキと同じくカウンター攻撃を主軸としたスタイルで戦う。
 ワタヌキとタケノコはお互い相手の出方をうかがう。ワタヌキは自分から仕掛ける方法を知らない。地蔵を決め込んだワタヌキ。タケノコはしびれを切らして積極的に攻撃を仕掛け、ワタヌキをピスト(移動可能範囲)の端に追い詰める。しかし最終的に、ワタヌキの回避→カウンター攻撃の餌食となる。 
 ワタヌキは優勝、初の公式戦で表彰台の頂点に。自らの才能に気づいたワタヌキは喜びながら表彰状を受け取る。

・専門店で買い物
 本格的にフェンシングをすることにしたワタヌキ。これまで装備一式を借りていたが、お年玉貯金を使い、自前で揃えることに。カサネガサネとトラノオとともにフェンシング用品専門店に行く。ワタヌキは各種装備の説明を受けながら自分の道具を選ぶ。

・王者の復帰
 フェンシング道場で新たな装備に身を包んでいると、スズメバチが次々と道場に侵入してくる。あまりの事態にフェンシングマスクを装備し逃げ惑う3人。
 そこに新たに入ってきた男が、剣を振るい、その先端で次々とスズメバチを撃墜する。圧倒的に正確無比な剣さばき。男の正体はジュニアワールドチャンピオンにして主将。脚の負傷で入院していたマトバアタルだった。

・インターハイ地方予選
 
雨傘高校フェンシング部のメンバー4人それぞれの、過去やフェンシングへの向き合い方などを掘り下げながら、インターハイでの団体・個人優勝を目指して努力する姿を描く。

 カサネガサネ:適当に誘った数合わせが超人だった件
 マトバ:強豪校なのに部員が少なすぎるたった1つの理由
 トラノオ:陸上部10000m主力選手なのに兼部している理由は?
 ワタヌキ:むかし死んだ伯父は無敵のプロボクサーだった。
など。

 そしてインターハイ地方予選。ワタヌキはカサネガサネとトラノオを完封。失点無しで決勝に進む。
 決勝が、超人ワタヌキと王者マトバの公式戦初対決の舞台となる。
 自らの唯一の才能にすがるワタヌキと、マトバの王者としてのプライドが激突する。
 結果は2-15でワタヌキの敗北。かわしたはずの攻撃が当たり続け、どうなっているのかもわからないまま敗れた。

・敗北から再び立ち上がる
 準優勝し、インターハイ出場を決めたワタヌキ。しかし、マトバに惨敗したワタヌキは激しく落ち込む。フェンシングが自分の存在意義だとまで考え、必死で積み上げた努力がまるで通じなかった。
 その感情を、自分をフェンシングに誘ったカサネガサネに吐露する。

「まるで太刀打ちできなかった。これしかないと思ったのに。才能があると思ったのに。」
「3ヶ月で俺を完封するやつが何いってんだ。おれは強いはずなんだよ。中学の全国大会は準優勝だったんだぞ? その俺を3ヶ月の練習で倒しておいてふざけたこと言ってんじゃねえ、クソが。さっさと立って練習するぞ。マトバ先輩を倒すのを手伝ってやる」
「勝てると思う? 無理だよ。何されたのかも分からなかった」
「勝てる。お前なら勝てる。認めたくねえがお前は強い。マトバ先輩だって意味分からねえ強さだが、お前の強さはもう人間じゃねえ」

・インターハイ決勝
 インターハイを勝ち進み、再び決勝で相対するワタヌキとマトバ。ワタヌキとカサネガサネの特訓の成果、そして回避の超人と王者の戦いの行方は如何に。
 

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