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中二病×クラシック音楽

※こちらは2020/06/13に別のアカウントにて投稿した記事です。

中二病ってあるじゃないですか。邪気眼を開眼させたり、全てのものに批判的になったり、他人と違う自分に陶酔したり…。
タイプも多岐に渡るし、概念としてもかなりあいまいだなと思う。
多様性も不明瞭性も認められている、ふしぎな共通認識。

けっこう前ですが、Naxos社が中二病をテーマにしたクラシック音楽のCDを発売し、話題になっていました。
Naxos社によると、

『思春期の少年にとっての精神的な通過点ともいえる、孤独、自意識、宇宙、神、死、前衛、反逆などのイメージを持つクラシック音楽を収録した』

とのことです。収録曲はというと、以下の通り。

1. edit.Alfonso X: Cantiga de Santa Maria No.77/119
~アルフォンソ10世の編纂によるカンティガ集 第77/119番
2. J.S.Bach: Violin Partita No.2 - Ciaccona~シャコンヌ
3. R.Strauss: Also sprach Zarathustra~ツァラトゥストラはかく語りき
4. E.Satie: Vexation~厭がらせ
5. C.Ives: The Unanswered Question~答えのない問い
6. I.Stravinsky: Le Sacre du Printemps~春の祭典(1913年版)
- 第1部 大地の礼賛
7. I.Stravinsky: Le Sacre du Printemps~春の祭典(1913年版)
- 第2部 生贄の儀式
8. C.Orff: Carmina Burana~カルミナ・ブラーナ
- 全世界の支配者なる運命の女神(フォルトゥナ)
9. J.Cage: The Perilous Night~危険な夜
- VI.(プリペアド・ピアノによる)
10. O.Messiaen: La Turangalila-Symphonie
~トゥーランガリラ交響曲 - 第3楽章
11. P.Glass: Violin Concerto~ヴァイオリン協奏曲 - 第3楽章
12. L.Vierne: Carillon de Westminster~ウエストミンスターの鐘





これ完全に主観なんだけど、違くない? ( 異論は認めます )
自分はクラシック音楽が好きですが、もちろんすべてを網羅しているわけではないし知識に偏りはあります。

でも、"春の祭典"や"ヴェクサシオン"などを『他人と違う、ちょっとひねくれた自分』を意識しながら聴く人は逆に中二病じゃない気がする。健全な感じがする。

じゃあお前が考える中二病っぽい曲はなんなんだよ、ってなりますよね。
なので、自分なりに12曲選んでみようと思う。
『他人と違う自分』を意識…とかではなく、聴いたときに『中二病っぽいな…』と私が感じる曲たちを選出します。

ルールとして、
・1作曲家につき1曲まで
・なるべく短い曲を選ぶ ( 動画を載せたいので )
・中二度を星3つで評価 ※もちろん主観
をがんばって守りたいと思います。

原題は省略。調性を書いていますが、その楽章の調性なので、曲自体の調性と異なることもありますよ。

《 始めます 》

1.  A.ドヴォルザーク / チェロ協奏曲 Op. 104, B. 191 ~ III. Finale: Allegro moderato ロ短調

⇒ おそらく生まれて初めてカッコイイと思った曲。中二病が過ぎるので、聴くと外であっても変な顔をしてしまう(自分が)。でも好き。中二度★★★


2. M.ラヴェル / ツィガーヌ (ニ長調)

⇒ これもたぶん生まれて初めてカッコイイと思った曲。こんな曲なんぼあってもいいですからね! 中二度★☆☆


3. R.シューマン / クライスレリアーナ Op.16 ~ 第3曲 Sehr aufgeregt ト短調

⇒ 実家の車でよく流れていた。聴くと血が騒ぐ。中二度★★☆


4. J.ブラームス / ピアノソナタ第3番 Op.5 ~ III. Scherzo: Allegro energico ヘ短調

⇒ 短調の3拍子からは強めの『狂』を感じられる。中二度★★☆


5. サン=サーンス / 死の舞踏 Op.40 ト短調

⇒ 上に同じく。『死』『舞踏』『狂』の役満では? 野球選手になったらこの曲を出囃子にしてバッターボックスに立ちたい。中二度★★★


6. F.ジェフスキ /「不屈の民」変奏曲 (主題はニ短調)

⇒ 主題が完璧。原曲は土くさいので(それがまたいいのだが)、あえて変奏曲のほうを選出。クソ長い。動画は最初の5分半のみ。中二度★★★


7. S.プロコフィエフ / トッカータ Op.11 ニ短調

⇒ 好戦的でゲーム音楽っぽさもある。最後バイオレンスになる部分が聴きどころ。中二度★★☆


8. F.シューベルト / 幻想曲 ヘ短調 Op. 103, D. 940

⇒ 「人生の嵐」と迷ったがより深いかなしみを感じるほうを選んだ。単一楽章の曲だけど長い。中二度★☆☆


9. D.ショスタコーヴィチ / 弦楽四重奏曲 第8番 Op.110 ~ II. Allegro molto ト短調

⇒ 最初からフルスロットル。中盤・終盤に現れる『ユダヤの旋律』、繰り返されるD-S(Es)-C-Hの音形の中二病感がすさまじい。中二度★★★


10. P.チャイコフスキー / 弦楽六重奏曲 「フィレンツェの思い出」Op. 70 ~ I. Allegro con spirito ニ短調

(1曲目)
⇒ 冒頭に激情型を持ってきているので少々の出オチ感がある(激情型なんて言葉はない)。でもカッコイイから選出。中二度★★☆


11. G.マーラー / ピアノ四重奏 断章 イ短調

(1曲目)
⇒ 『断章』というタイトルがよすぎる。未完の作品で、楽章が1つしかないだけなのに。ずるい。ちなみに続きはシュニトケが書いた。中二度★☆☆


12. B.スメタナ / ピアノ三重奏曲 ~ III. Finale: Presto Op. 15 ト短調

⇒ 『モルダウ以外のスメタナ聴いちゃってる自分』の中二病感も否めないが、曲自体アグレッシブ。終盤の葬送行進曲もポイント高い。中二度★★★


《 ざっくりとした共通項と想起されるイメージ 》
① 短調 → カッコイイ、陰鬱 (♭調が多く選出された)
② 民族的・ジプシー的 → クセがある・スパイシー・純西洋的でない感じ
③ テンポが速い → 好戦的、勢い、パワー、カオス
④ ロマン派以降 → 感情的、かなしみ、いたみ、孤独、陶酔、死生観
( ⑤ 3拍子 → 狂った舞曲風 )

《 感想 》
当初はぼんやりと、短調・ジプシー音楽 ぐらいが中二病っぽい曲の共通項だろうなと思っていたので、自分の感じる『中二病』の輪郭が以前より少しだけはっきりした気がする。

そして、選ばれた12曲は自分の好きな曲だけで構成されている。中二病などと揶揄しておきながら、大好きなのだ。
何かに対して、カッコイイ!と思っておきながら恥ずかしくて言い出せない自分が『恥ずかしいけど、これはカッコイイな』と本能で認めてしまう曲たちだ。
ほかにも中二病だ…!ってなる曲はいっぱいありますが、全部好きですからね結局は。

今回はフィーリングを頼りに選出したが、もしかしたらその中には理論的に ( 和声とか転調とかフレージングとか ) 証明できる共通項などがあるのかもしれない。
もうすでに調性と時代はかなり偏っているのでまた考えてもおもしろそう。

改めて曲目を眺めると『暴力を頑張りたくなる』もしくは『暴力を行使した後に無力感を噛みしめる』ような曲を選んでいることが判明した。
そうか、私の考える中二病は『暴力を頑張りたくなる』『暴力を行使した後に無力感を噛みしめる』ことだったのか。『暴力を頑張りたくなる』ってなに?

《 反省 》
短い曲を選ぶ、というルールを設けたものの「不屈の民」変奏曲をどうしても入れたくなり、途中からどうでもよくなった。
思いついた順で並べていったので、アルバムとしては成立しない。そもそもほぼ短調で暗すぎる。
ブラームスとショスタコーヴィチは短調かつパワータイプの曲だと、だいたい中二病曲に聴こえてしまい、困ったので適当に選びました。

《 まとめ 》
多様性と不明瞭性が認められた寛容な概念(?)なので、中二病と一言にいっても感ずるところは人それぞれでしょう、当たり前だけど。
私の並べた12曲を、こんなの短調で勢いがあってちょっと民族的な曲の羅列じゃないかと思う人もいれば、共感してくれる人もどこかにいるはず。

しかし、
『Naxos社がリリースした、中二病がテーマのCDのラインナップについて文句がある』
という発想は、世の中に対し批判的な、俗にいう中二病そのものな気がする…もう28歳なのに。


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