藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第7話】
第二章 空蝉の身をかへてける木のもとに なほ人がらのなつかしきかな
「それで? 今日はどんな事件の話を持ってきたのかしらね、左衛門督どのは」
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従四位外、左衛門督──それが眼前の青年の、現在の位階と官職だった。
『源氏物語』の通りであれば、本来は近衛中将であるはずの時期なのだが、彼は敢えてその道を選ばなかったという。
父親である桐壺帝には、やはり近衛(内裏内郭の警固)の職を薦められたようだが、彼はそれを断り、わざわざ左衛門府の官職を希望したらしい。