見出し画像

資金調達計画実現への期待値の軸について

はじめに

起業家は、何かアイデアを思いつくと、そのアイデアをベースに事業としての構造化を試みるためにいくつかの仮説検証を回し始める。

そして、ビジネスモデルの全体像が解釈できるようになってくると、なぜその事業が世の中にとって必要とされるのか?について一定の理解が進む。

この理解が進み、その事業が世の中から無くなる可能性より、その事業がどんどん成長していく可能性の方を強く感じ始めると、その起業家の脳内は「この事業の成長のさせ方」でいっぱいになってくる。

この時、起業家は真に成長戦略を考え始める。

(誰かに相談した時に聞かれてしっくり答えられない経験をしたことがある人も多いだろう。解釈が追いついてないのにアウトプットできるわけがない。だから皆アウトプットできるようになるまでは目先のインプットに注力をする。それ自体は間違ってはいないと思う)

成長戦略が一定イメージつくと、今度はそれを事業計画に落とし始める。

(人によっては事業計画を考えながら成長戦略も併せて考える人もいるだろう。それ自体は別に否定される話じゃないと思う。)

事業計画がある程度描けてくると、今度はそれを実行可能にするために必要な資金の計算をし始める。

いわゆる資金調達計画と呼ばれる領域だ。

しかし、創業初期の資金調達を計画通りにい達成させることは極めて難しい。これはエクイティだろうが、デットだろうがトラクションが出てない以上、投資側に投資意思決定の軸を定量化させづらいからである。

また、そもそも人生で資金調達を考える機会というのはそうそうあるもんじゃない。仮にどこかのスタートアップで働いていたとしても創業者以外は大概最初の資金調達が終わったあとに入ってきており、そこはもうカオスではなく一定整理がついてる世界である。何が言いたいかと言うと、初期の資金計画から考えて実行したことがある人はかなり希少であるということだ。

最近はスタートアップエコシステムの発展もあってどのジャンルの起業家でもエンジェル投資家、ベンチャーキャピタル(以下VC)からのエクイティファイナスの存在は知っていると思う。しかしすべての起業家がエクイティファイナスを得られるわけじゃないが、それを判断できるような何かモデル化されているようなものやフレームワーク的なものの存在を聞いたことがない。

よって貴重な創業初期のリソースをどの資金調達にどの程度かけるべきか?すなわち資金調達計画達成に対する自分達の期待値は何をもってコントロールすればいいか?

このnoteでは発行体側の視点でこの部分を言及してみたいと思う。

本題に行く前に一応・・・

一応前提から入ると、資金調達はあくまでキャッシュフロー計画を達成するための1つの方法でしかない。一定の営業収益が上がっていて、その営業収益の一部を計画した投資に十分回せる状態であれば外部からの資金調達は必要ない。

単に創業初期はまだ収益がおぼつかない中、事業モデルの再現性を上げるために初期投資が必要なケースにおいて財務キャッシュフローを軸にキャッシュフロー計画を達成しないと倒産するというだけのもの。

財務キャッシュフローの種類は大きく株式割当による調達(エクティ)と金融機関からの借り入れによる調達(デット)がある。このあたりももはやここで言及する必要もないので、知りたい人は調べてもらえれば。

VCの事業モデルから推測される重要な論点

さて、冒頭説明したとおり、このnoteではあくまで創業初期の発行体として何を軸にエクイティによる調達実現への期待値を考えたら良いか?というところに定めてある。

まずはVCのビジネスモデルを考えてみよう。

詳しい所はCORAL澤山さんの解説を読んでみてもらうとして、

VCのビジネスモデルの特徴は以下の通り。

・ファンドレイズ後、10年でLPに約束したリターンを返すのがゴール
・約束してるリターンは3倍から5倍
・マネタイズモデルは保有株の売却
・売却のタイミングはIPO時の売出し、IPO後の売却、M&A

実際の活動は以下内容で構成される投資計画で管理される。

・投資領域
・投資ラウンドと保有率のポリシー
・目標投資社数
・想定エグジット時価総額
・想定エグジット回数(率)

このあたりからVCのビジネスモデルの財務KPIに対して重要となる指標はこの2つになると想像される。

・投資先のエグジット時の想定時価総額
・取得時の時価総額と保有株数

※このあたりはSTRIVE堤さんの記事からも読み取れるのではないかと思う。

これらの情報から紐解くと、VCは本能的にその事業モデルが急成長するかどうかも重要だが、それと同時に事業モデルがどの程度の時価総額まで膨らむか?を考慮しているのではないかと仮定できる

時価総額の考え方

そうなると考えるべき論点は時価総額の計算方法になるが、IPOとM&Aではその計算方法が大きく違う。筆者はIPOには届かなかったが、IPO直前期まで管理部門のトップとして監査法人や証券会社と喧々諤々といろいろやり取りしていたことがあり、その時の経験からざっと時価総額の目線合わせの計算式は単純に以下と認識した。

想定時価総額 = 申請期の税引き後利益 ☓ 想定PER

利益計算はまぁいいとして、想定PERなるものをどう計算するか?というのがポイントになるのだが、想定PERはぶっちゃけ成長シナリオすなわちエクイティストーリーの参考になりそうな既存のIPO銘柄のPERを足してアベレージ化するというあらっぽいマルチプルで計算して交渉したりする。

例えば仮にゲーム会社でIPOしよとすると既存のゲーム系銘柄のPERが参照される。(2020年6月6日現在)

ミクシィ 12倍

ガンホー7倍

それに対してAIテック系とかになるとこの通り。(2020年6月6日現在)

パークシャー211倍

アルベルト127倍

同じ税引き後1億円の利益だとしたら、ゲーム系は10億強の時価総額でしか交渉しづらく、AI系だと100億超える時価総額で交渉可能になる。

結局のところ時価総額は市場がそのジャンルの成長性をどう評価しているかが色濃く反映される部分であって、VCからすれば最終エグジット先である市場の評価が投資の意思決定にそれなりに強く影響を及ぼしていると理解できるかと思う。

ちなみに、事業会社によるM&Aのケースはバイサイドである事業会社の目的は転売ではないので時価総額はほぼ関係なく、その事業の現在または未来のPL連結が目的なので比較的DCFで時価総額が計算されるケースが多い。(はず)

ちなみに同じエクイティでもCVCのコンテキストは少し違う。このPERが前提となるので現在VCが投資領域としてゲームを持っていることは少ない事が想定される。しかしゲーム会社系のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ならば将来の買収の可能性を鑑みて投資検討は可能なのかもしれない。

まとめ

ということで、このnoteの目的である「貴重な創業初期のリソースをどの資金調達にどの程度かけるべきか?」「何の軸でエクイティファイナンスの期待値をコントロールすればいいか」については、自分達がその時点で描けている事業モデルのPERが高くなるかどうかでコントロールするというのが一つの切り口ではないかと思う。

PERが低い領域はVCの投資領域にはそもそも組み込まれていない事が想像されるわけで、交渉成功の不確実性は高くないやすい。その場合デットでの資金調達をベースに早期に営業CFを黒字にできるかを考えるべきであって、事業を進める先でVCが期待するPERに近づけられるようなモデルを思いついたらその時点でエクイティを計画に組み込むというのが良いのではないか?というのが一つの考え方なのではないかと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?