フィンランドのダイナミックな学び
こんにちは。
つい先日、フィンランドの学校現場を何校か訪問し、見学させていただきました。今回はひとまずそこから学んできたことの一部をお伝えするとともに、日本の教育を考えていきたいと思います。
遊びと学びの一体化
教育学で遊びと聞くと思い浮かぶのはデューイ。
古典的な考え方のようにも思いますが、現代の日本の学校教育で育ってきた私の眼には、学びと遊びが一体化した光景は何とも新鮮に感じられてしまいます。
フィンランド中南部のイーサルミという街にある、Kauppis Heikki Kouluという学校を訪問しました。ここにはプレスクールと小学校が併設されており、イタリアのモンテッソーリが考案した「モンテッソーリ教育」という教育方法を実践している学校です。
この学校を見学して特に重要だと思われる発見を一言で言うならば、
この学校には学びと遊びの区別がない。
これに尽きます。
もちろん、すべての活動においてこのように言えるわけではなく、
授業の様子を見れば先生たちがこの授業で子どもに何を学ばせたいか十分に練り上げたうえで指導されていることは一目でわかります。
ただ、そういった授業や学校生活の中に「勉強」という空気感が感じられない。(言いたいことが伝わるでしょうか?笑)
学習だけど、まるで遊びのよう。
授業はしんどいことではなく、楽しいこと。
そんな雰囲気で満たされているように感じられました。
例えばプレスクールでは、こんな授業が行われていました。
車のおもちゃにカラフルな塗料のようなものを塗って、紙の上で8の字に走らせる。子どもたちは何度も楽しそうに車を走らせています。こうやって数字の「8」を書くための練習をしていました。
日本では薄い灰色でプリントされた「8」という字を鉛筆でなぞるというような方法で文字の書き方を覚えるものしか見たことがなかったので、衝撃的だったのを覚えています。
日本のようなやり方でも「8」の書き方は問題なく習得できます。しかし、同じことを学ぶにしても、その方法をひとひねりするだけで学びの中に楽しさが出てくる。この学校ではこのような工夫が至る所で見られました。
子どもがイスの上に立っています。先生がいくつか単語を言って、ある単語が言われたときに子どもはイスからジャンプし、先生が空中で広げている新聞紙に飛び降りて破くという授業を見ました。
授業の詳細までは知ることができませんでしたが、推測するに、幼児の語彙をつけるとともに、
特定の言葉を認知する→ジャンプという行動に移す
という過程、すなわち認知と判断と身体使いを育成している授業だったと思われます。
他にも、廊下でけんけんぱをしながら数字を覚える授業、自分の名前の文字をおもちゃを使って覚える授業など、実に様々な授業が展開されていました。
学校は「教室の中で」「座って」「静かに」学ぶための場ではない。
この学校を見学して衝撃的だったのは、
そもそもこの学校が「教室の中で座って静かに学習する空間」と考えてつくられているのではない
ということです。
おそらく、日本にも少なからず学習とは教室の中の座学だけではないと考える教師がいるはずです。
しかし、彼らは日本の学校では個人の力で堅苦しい勉強のイメージを打破しようと教材開発や学習テーマ、活動形式などの面で努力しているのであって、学校や教室そのものは箱型の均質な空間であることが多いと思います。
この学校(後日訪問した他の現地の学校にもありましたが)は廊下にけんけんぱをしながら数字が学べるデザインが描かれていたり、授業中に理解度が遅れている子を廊下にある個室のようなスペースに連れて個別指導をしたりと、教室以外の空間をも学びの場として活用できるようにつくられているのです。
だから、この学校では教室の外の空間も行き来するような授業スタイルが普通に行われています。
一体、誰がこのような学校をデザインしたのか?
僕は、フィンランドの学習環境と教育心理を架橋している存在に迫りきることはできませんでした。しかし、フィンランドの学校教育と日本のそれとを対比したとき、学校デザインの設計はまだ日本には決定的に欠けている視点だと思います。
でも、これは日本の教育に対して受験準備というイメージが強い僕の意見。日本の学校には日本の学校の良さもある。ただ、一度でもじっくりと考え直してみる価値はあるのでは。
教科で分ける必要はない。遊びと学びを区別する必要もない。
ずっと気になっていたのが、ゲームの教育利用。
僕は中学生のころまでゲーム大好き人間だったので思うだけなのかもしれませんが、ゲームしながら学校の勉強ができたらどれだけいいかと考えたことがあります。
また、ゲームで知ったカタカナ言葉のおかげで吸収しやすい英単語があるように、少なからず学習にも良い面があると思うのです。
ゲームに熱中しすぎて時間を忘れるほど遊んでいた時期がありましたが、そのようなアディクションを学習に逆利用することはできないか。
神経や脳科学にお詳しい方、いらっしゃればご一報ください。笑
早々に脱線しましたが、フィンランドではパズルやカードゲームなどが教材として実際に利用されていました。
これは惑星の絵が描かれたチーム対抗で遊ぶパズルです。台紙に惑星を配置していくと隙間ができるので、その隙間を埋めるピースを集めてこればよいのです。
ただし、ピースは部屋の真ん中に置かれてあって、自分たちのチームのパズルは部屋の四隅に置かれています(この授業では小さい体育館を利用していました)。
一往復で持ち運びできるのは1ピースのみで、ピースを持ってくるにはピースの裏に書かれたミッションをクリアしなければなりません(フィンランド語が読めず、これ以上詳しいルールやミッションの内容が分からなかったのが辛いところ)。
このゲームではパズルを上手く埋めるために必要なピースの形状や配置を考えたり、必要なピースを素早く持ってくるための運動だったり、ミッションの完遂に必要な知識だったり、様々な能力を動員することが求められます。
子どもたちが遊びながら、教科の枠にとらわれず学べるような教材が学校の授業で利用されているというのは、やはり日本ではなかなか見ることのできない光景だと思います。
遊びという経験と不可分な形で得る知識。
ゲームの文脈をより現実的なものに近づければ、真正な学習にもつなげられるのではないでしょうか。
遊びの中で必要だから何かを学ぶ。そして、学んだことを活かして遊ぶ。
ゲームと言うのは学びと遊びを繋ぎ合わせ、循環を生み出す重要な要素なのかもしれません。
最後に、日本でもゲームが教育に利用されている例を見つけましたのでリンクだけ貼っておきます!こういうアイデアは良いですね!
今回、フィンランドの学習観・教育観を少しだけ垣間見ることができたような気がします。
次回はもう一つ、フィンランドの学校から感じたことをお伝えできればと思います。
それでは、この辺りで。
最後までお読みいただきありがとうございました!!
✳︎学校デザインや教育心理、環境心理に少しでも関心のある建築関係の方、
✳︎ゲームやスマホなどの依存性と教育や学校、学習に少しでも関心のある神経学・脳科学関係の方
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