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時間の見積り、多く取るか、短く取るか

フィンランドからイギリスへ帰る飛行機の運航が1時間弱遅れる、と航空会社のアプリから通知が来た。

いま私がいるのは、ヘルシンキのヴァンター国際空港。

2日間で5万歩を歩いて、ヘルシンキの街を探索した。夏の北欧は、陽の光も空気も草木も水も目を見張るほど美しくて、魅了されてやまない。

素敵なポストカードを見つけ、思わず家族へ文を送る。

日にちが変わってしまう搭乗時間まで、眠りに落ちないようにnoteでも書こうと思い立った。

出発できるまで、実際は倍の時間はかかるだろうな、と腹を括る。それで思い起こすのは一週間前の出来事だ。

日本の同僚が、イギリス本社での勤務のため渡英することになった。籍は日本法人においたままで、数ヶ月間の出向ということになる。

「サービスアパートメントに入居するので、チェックインを手伝ってくれないか」という同僚からのお願いを快諾した。

私は大好きな北欧への旅を計画していたが、日本の実家から持って来て欲しかったものを託してあるので、断るわけにはいかない。
まぁ、それがなくとも10年来の仲なので、喜んで手伝うのだが。北欧トリップは1週間後ろ倒しにした。

ヘルシンキで見つけたパブ。押韻のうまさに思わず「へぇ!」と声が出た。
本文はイギリスの話なのに、写真は全部フィンランドのものです。

フィンランドを経由してイギリスに到着した同僚は疲れもさして見せず、数年ぶりの再会をほどほどに喜び、滞在先へと向かう。

便利な一等地にある瀟酒な建物だ。会社の経費で住めるなんて羨ましいが、それは同僚の仕事での専門性と将来性が見込まれての投資である。

同僚が着いたと連絡を入れると、不動産エージェントが額に汗をかき、慌てた様子でアパートから出て来た。
曰く、前の滞在者の退去が遅れ、入れ替えのための清掃がいま始まったばかりだという。
数人がかりで急いで着手したが、当初の契約時間より45分から50分は遅れる見込みだというではないか。

こういう時、イライラしてはいけない、ということを1年半の英国生活で学んだ。
どうせ遅延は遅延で変わらないし、嫌味なんか言っても自分も後味が悪いだけ。
予定通りに行かなくて何をしようか!?とワクワクするくらい転換する方がハッピーだ。

「オッケー、わかった。大変だね。適当に時間を潰してるから、終わる見込みが立ったらメッセージして!」とエージェントに笑顔いっぱいで伝え、スーツケースを預け、同僚と街を散策することにした。

「50分で終わるって言っていたけど、たぶん、あと2時間はかかるよ」同僚に告げた。
24時間近く旅していて、ようやく眠れる!と期待していたであろう同僚の意識を保たせるためだ。

仕事でも日常生活でも、見込み時間にバッファを持たせて長めにいうケースと、期待を込めてなのか短くいうケースがある。

イギリスでは、実際には終わるはずのない(できるはずのない)時間を見込み時間として伝える傾向があるように見受けられる。

もちろん人や背景によって変わるので一概には言えないが、私の経験則での印象だ。
私は、相手に長めの時間を伝えておいて、ほんの少し早く終わらせるタイプなので、「なんで最初から無理な見積もりを言っちゃうんだろう」と常々思っている。

しかしその裏には、「相手に遅いと思われたくない」、「自分(たち)ならできるはず、目標は高く持つべし」というような心理が見え隠れする。

それもわかる。
しかし、約束通りできなければ、遅延を伝える気まずさが生じるし、宣言通りできなかったことを恥じてしまう、などと私は思ってしまうのだが、素直にそしてユーモアを込めて謝る文化があるこの国では、大したことではないのかもしれない。

一通り、生活圏内の名所やスーパー、おすすめの食料品を同僚に紹介し、ピザを食べて一緒に待っていたところに、同僚の携帯にようやく「清掃完了、入居できるよ」の通知が来た。

それは私の予想通り、2時間遅れだった。

そんな出来事を思い出しながら、さて、私の飛行機は何時出発になるかな〜。

スオメンリンナ要塞にて。

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