無感情の白兎が白蛇になる夢の話
生きてる意味を喪って
うさぎ小屋の白兎、
ただ無感情を食った。
食べたことは
兎の寂しさを閉ざしたよう。
ただの見せかけだけれど。
無感情で満腹になったお腹は
タプタプ喋ったけれど、
小屋には他の何者もいないし
命無いものは喋ることを知らない。
白兎の虚ろに陰った暗闇の瞳は
何処も見ていなかった。
白兎は、
いつか白蛇になれるだろうか
そんな夢を毎夜見て眠る。
朝になると、
白い毛色がだんだんと
黒く汚れていたのを
本当は知っていた。
秋の満月の晩には
白兎の仲間が月で餅をつき、
頑張れ、と
囁いた。
あの影が
兎でないことくらい、
白兎にも
到底わかっていた。
真っ白だった毛が
だんだんと抜け落ちていることに
白兎は気付いていた。
白蛇になったら
幸せな夢を見ながら
黒く薄汚れた毛を整えた。
抜け落ちた毛の色を見て
絶望はしたけれど、
夢を見ていたから
大丈夫だった。
そんなある日に
無感情を食った白兎は自分が
白兎でいることに疲れたことを認めた。
もう白い兎でいることも、
もう丁寧な毛ずくろいをすることも、
月にいる仲間兎を応援することも、
白蛇になる夢を見ていることも、
いらなくなった。
無感情に全てを支配された白兎は
純白で美しいふわふわの兎ではなく、
ただ僅かに生きる小さな生き物になった。
白兎は目を閉じ、
明日が来ないことを切に祈った。
しんでいても
生きていても、
誰も迎えにこない事実を見たくなかっただけ。
瞳を閉じて深く眠った。
明日が来るのか来ないのか、
目は覚めるのか、朽ちるのか、
だけれど。
心の隅に
大切な家族と仲間を思い出して
そっと、
瞳を開いた。
世界は美しいと信じた
白かった兎のその瞳に
キラキラの星空と宇宙が広がった。
兎は深く息を吸って吐き
また瞳を閉じて
闇の中へと落ちて、
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