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二兎を追うもの一兎をも得ず

ある日、知人と一緒にいる時に「ある店にいかなくてはならないからつきあって」といわれて店先まで付き合った

私は少し離れたところで知人を待つ

知人が用のあるその人は年配の男性

その人は私を見つけて

「名前は?」

と聞きましたが、私はにこりとだけして答えず

私とその人との距離は何メートルほどだったかな?
8mくらいかな?
その間を人が行き交っていくほどの距離が充分にあったから

きっと、知人がその人にひとりできたのかを聞かれたのだろう
私と一緒にいることを伝えたところ、その人は私を確認してみつけたのだろう

知人はその人が私に問いかけるその間もその人に話かけていたけれど、それを無視して名前を聞いてくる、、

私はその様子を直視してはならなかった

なぜなら「聞こえてるんだか聞こえていないんだかなー」を装い、その状況をうやむやにしたいとおもったから

なぜなんだろうか?
あれは

突然の出来事に防御作動が発令したのか???

だから
目の端でみているはずなのに、
その時のこと、彼がどんな様子だったかだけはしっかり覚えている

その周りはなんとなくぽんやりとした感じ

彼は、左手をカウンターにかけて
けれどからだも顔も真っ直ぐにこちらに向けている

一度もそらさずに、真っ直ぐに見て
私に名前を聞いている

関わってはいけないという直感

そのあと、戻ってきた知人に私の名前をいったのかど赤は特に聞かなかったとおもう

戻ってきた知人に
「彼、おじいちゃんなのにセクシーな人ね」
と、言うと
「おじいちゃんだけどね、そうなのよ」
と返してくれる
「寝れるわね」
「そうね」
「あはははははは」

40代女性の会話とは、、、


縁のある人というものは
それまでの40年ちょっとの人生の中で
必ずまた再会するようにできているものだと学んでいた

そう
その後十数日で、私は彼と食事の席で横に座っていた

彼は、食事の席のあと、
その席にいたみんなに見送られ
タクシーに乗る寸前に
必ず連絡するようにと私に伝えて帰って行った

結果、、、、

数日後には
二人でレストランでのランチをしていた

まずいかな?と思いつつ
興味があったのはたしか
ランチを一緒に一度するくらい問題ないだろうと。。。

彼はその約束のやりとりの中で「お迎えに行くね」と

「お」がついているのが可愛かったけど

なぜか行くと言っていたお店にたどり着かず
店に入ると黙ってる
なんだか緊張のランチタイム

でも店を出ると彼は自分の腕に私の手をくぐらせて、離れないようにねと言った
誰が見ているかわからないのにね
その段階でこそこそするということが
私に植え付けられなかった

帰りの車では、彼の中でつきあうことになっていた

帰り道、路上で知り合いに会った
車から降りて話す彼は、きっと助手席に乗る私のことを突かれている様子
本日見せた事のない笑顔で笑ってる

なんだ、この人、こんな顔して笑うんだ

家に送り届けてもらい別れ際、
「夜は出て来れるの?」
という彼

全くもって想定外のことが多かった
1日に2度?

結局
その夜、2人で夜の海を眺めていた

そして、その数日後には彼の家にいた

限られた時間を一緒に過ごす日々の始まり

彼は、既婚者だったけど別居をしていたので
ほぼ独身と言ってもよい状況
紙切れ一枚だけの関係で
なにかしらの事情で別れないんだなー
くらいだった

奥様やご家族のことを聞く必要は、感じられなくて
それよりも、むしろ時々ちらりと見える「女性の影」には信頼を持てず

どちらかといえば、いや、ほぼほぼ、そのことのほうに気が行ってた

私としては、他にもだれかいるのなら
彼と一緒にいる意味はなくて

どんなに愛していたとしても
天秤にかけられるのは嫌だった

他にはなにもない、それだけは嫌だった

何度、やきもちをやいては喧嘩しただろう

「二兎を追うもの一兎をも得ず」
と言えるようになるまでに時間はかかったものの

彼にとって「抵抗」というものはありえなかった
それを言い出すと
彼は怒って連絡を閉ざす
私も意地になって連絡をしない

なんどそれをやったことか

それでもなんとなく、気持ちが落ち着いてくる頃にまたふらりと帰ってくる
なんて事のない顔してね
なにもなかったかのようにね

そんな時を過ごすこと数年

私は絶対に彼の家のことはしないと決めていた
食事も彼がつくったものを食べたし
掃除も彼がして私を迎えた
家事を一緒にやることもあったけど
メインは彼で私はお遊び程度のことをするまで

自分の家のことだけでも大変なのに
よそでやるつもりは毛頭ない
家政婦みたいな扱いは嫌だったし
やりたくないことをやるのは
自己肯定感をさげるだけ

とはいえ、なにがどこにあるのかを知れることは、したりするというね
自分で笑っちゃう

それだけ一緒にいればさすがにそんなことはわかるんだけれども

洗濯物はあえてたたんだりして
たたみ方を変えてみても嫌がらないことを確かめたりしてね

そうしているうちに、この家に他の女性が入ることはないんだと、私の疑いは晴れていく

次第に、昼間、彼が一人で行かなくてはならない仕事がある時にも、帰らずに彼の家で待つように言われるようになって、信じられていることも感じてた

合鍵を持つようになったのはいつの頃からだったか

少しずつ私のものも増えていき

今思えば、心配するほどのことはなかったのかもしれない
だいたい彼女が思うより、モテたりはしないものだものね(笑)

とはいえ、彼が言い逃れられないこともちょこちょこは、ありましたけども

でも、モテないよりはいい

だって、いつも彼は夫がいる家に私を送り届けてくれるんだもの

と、今なら、言える
彼が死んでしまった今ならね



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