おすすめ画像診断教科書〜放射線科医/MR初心者の放射線技師向けのMRIの原理編〜

こんにちは、画像診断医/放射線科医のるなです。私は放射線診断専門医であり、核医学専門医、マンモグラフィ読影認定医も持っております。

今回、よく”おすすめの教科書”を質問して頂ける中で、MRIの原理の教科書を質問されたので、私が読んだ本でおすすめの本をご紹介します。

完全に独断と偏見で、私の教科書の"推し"を紹介したいと思います。

MRIの原理については正直、私は放射線技師さんではないですし、大学入試も物理選択ではなく生物選択ですので、“画像診断・検査のクオリティコントロールに必要最低限の知識”しか知りません。もっともっと賢くエキスパートな先生や技師さんがいらっしゃいますので、私はエキスパートになるためというよりは、”効率よく学べる””割り切って学ぶ”というところを重視して、お話ししたいと思います。

ですので、達成目標は

①”読影や検査クオリティ向上に放射線科医として必要なMRの知識を知りたい”先生、②MRIに興味があるが全く初学の先生/放射線技師、③MRIに興味は無いが、業務に必要なので最低限のMRIの知識を知りたい放射線技師に絞りたいと思います。MRIを極めたいという方はもっと、エキスパートの先生に教わってください^^;

書籍の他は、日本磁気共鳴学会が主催している、MRI講座がよかったです。個人的には下記、書籍で最低限の基礎が分かったら「入門講座」を飛ばして、「基礎講座」を受けるのがイイと思います。入門講座は1日間だけですし、本当に基礎の基礎しかないので、書籍でも十分学べると思います。年に1回、隔年で関東・関西で開催されます。私は基礎講座でかなりMRIの知識が深まりました。

あと私は読めてないですが、結構kindleで「MRI 原理」で検索すると、技師さんやエキスパートの先生が、自作で教科書を作られているようなので、そういうものもよいのではないでしょうか?

昔は日立のHPにMRIのパラメータをいじると画像がこう変わります~みたいなシュミレーターがあったのですが、いつの間にかなくなってしまいましたね;_; リニューアルされているんでしょうか?もし何かMRIシュミレーションでいいHPやアプリあったら教えてください^^

恐らくMRIの原理なぞ知らなくても、画像診断レポートを書くことは出来ます。ただ、私は放射線科医でもやはり、最低限のMRIの知識は必要と考えています。私が、考える放射線科医に必要なMRIの知識の要素を因数分解すると以下の2つかな~と思っています。

①検査プロトコルの組み立て

大抵の病院には一人くらいMRIに詳しい技師さんがいて、そういう技師さんが素晴らしい検査プロトコルを組んでくれており、大抵検査時間中に主治医が必要な画像を撮影してくれていると思います。しかし、一方で、ときに特殊な依頼のときに細かく撮影画像を工夫すると、主治医や患者さんに大きく貢献できることがあります。そこには最低限のMRIの知識は必要になってきます。細かいパラメータをいじれる必要は無いですが、MRIのシーケンスは多彩である反面、帯に長し、たすきに短しです。何かを優先すれば何かが犠牲になることが常です。そこがおもしろさでもあるのですが、この検査に優先すべきことは何か?ということを考え、主治医の意図をくみ取り、技師さんに「こういう画像を撮ってほしい」という”中間管理職・翻訳家”としての仕事は放射線科医の大事な仕事だと思います。また、技師さんは画像を撮影するプロですが、読影のプロではありません。「読影しやすい画像」という観点は(恐らく)画像診断医の方が持っていると思っています。そういう観点から、検査を組むためにも個人的には、医師も翻訳家たるための最低限の知識は持っていた方がいいかなと思っています。

②画像の成り立ち(アーチファクト含む)について

”MRIはアーチファクトである”なんて先生もいるくらい、MRIはその画像の信号の成り立ちにはMRIの原理が関わってきます。同じ病気でも、磁場や病変の性状、撮像したシーケンスによって信号は多彩に変化します。もちろん、わからないこともありますが、「このようなシーケンスでとればこういうことはありえてもいいよね」という解釈は深い読影をするには必須の知識です。また、「所見がアーチファクトなのか、異常なのか」を判断するのは放射線科医として大事な仕事です。この画像の成り立ち、アーチファクトを理解するにはある程度、MRIの原理から逃げることはできません。

前置きが長くなりましたが、それでは書籍を紹介したいともいます。

上記項目に従って

(1)MRIの原理を1から理解するための教科書

(2)MRIの検査目的別の撮影プロトコルの教科書

の2つに分けてご紹介したいと思います!

(1)MRIの原理を1から理解するための教科書

MRI自由自在

私が研修医の時代は、1から勉強する本はこれくらいしかありませんでした。ですのであえて、一番にあげさせていただきます。今、もしや絶版ですか?(汗)正直今思うとこの本は間違ったことも書いてあります(もちろん著者の先生は理解を進めるために便宜的に意図的に書いてあるんだと思います)が、この本の内容は非常にクラシカルかつ、単純です。恐らく、MRIがまだT1強調像・T2強調像・FLAIR・MRA・プロトン密度強調像・脂肪抑制など比較的古典的なシーケンスしかなかった時代に書かれた本だと思いますので、最近出た本より、そのへんの根本的な部分がすごい、しっかり書いてあるんですよね。名著だと思うので、もし絶版になってるなら、再版をお願いしたいですね・・・。

MRIに強くなるための原理の基本やさしく、深く教えます〜物理オンチでも大丈夫。撮像・読影の基本から最新技術まで

ここ5年くらいで羊土社から2冊の名著が出ました。個人的には自由自在を読んで次にこれを読むのがオススメですが、この本から読むのもイイと思います。羊土社のものなら青本がより原理より、紫本がより実践よりになっています。ですので青→紫の順で読むのをオススメします。青と紫では一部似たような内容もあるので、2冊読めば復習による”地固め”効果でより学習が進むのではないかな?と思いますね。

MRIに絶対強くなる撮像法のキホンQ&A〜撮像法の適応や見分け方など日頃の疑問に答えます!

一目でわかるMRI超ベーシック

この本、本当にわかりやすかったです。私が初学のときは無かったので、復習用でよかったのですが、結論から言うと個人的な最短コースは「自由自在→羊土社の青本&紫本→MRI超ベーシック」です。MRI超ベーシックは羊土社の本に比べると、専門的な内容なのですが、その代わり、上記3つの教科書ではわかりやすさを重視してごまかしていた部分が書いてあるので、「省略されていた行間」を補完するのに最適です。恐らく、MRIを専門にするのであればこの本では足りないのでしょうが、画像診断医はこの本に書いてあることが分かれば、日常診療では困らないと思います。イラストも豊富ですし、本当に初学の頃にこの本があればよかったのに~と思う本です。

MRI基礎と実践―カラー版

一方私が初学の時代に、この本が一番専門的な教科書ではわかりやすいかな~と思いました。当時は羊土社の本もなかったので、自由自在を読み、MRI基礎講座に行き、この本をハァハァ血の涙を流しながら読みましたが・・・正直、今でもこの本に書いてある内容、全部理解してるわけではありませんが、超ベーシックよりはもう一歩踏み込んだ本だと思います(MRI専門の先生には物足りないのかもしれませんが^^;私には難しかったです)。超ベーシックを読んで「もっとMRIを!」という先生にはお勧めしますね。

MRIデータブック−最新用語辞典 第3版

この本は上記3つの本を読み進めるときに、辞書的に傍らに置いておくと学習がはかどるのではないかと思います!MRIはどうしても専門的な用語に加えて、各MRI会社によってシーケンス名が異なってるので、やはりこの本は読影室に1冊あると助かる本だと思いますね!

MRI応用自在

この本は、最初に紹介したMRI自由自在の兄弟本ですが、どちらかというとこちらは辞書色の強い教科書になっています。無数にあるMRIのシーケンスの中で、シーケンスごとに原理やパラメータについて記載してあります。この本も、読影室に辞書的に1冊あるとGoodではないかな~と思います!

改訂版 超実践マニュアル MRI

こちらの本はどちらかというと技師さん向けの本というか、どの病院にいっても一冊は大体置いてある本です。恐らく、MRIを実践でする技師さんが最低限読む一冊なのではないか?と推察していますが、この本を読む意味は、「技師さんのコモンセンス」を知ることです。私達放射線科医の仕事は読影レポートを作成するだけではありません。放射線技師さんがいて初めて成り立つ仕事で、技師さんが何を考えているのか、どういうことを知っているのか知る必要があると思っています。なので、技師さんがどういうことをしてMRIを撮っているのか知るために熟読せずとも、さらっとでもいいので読んでおくべき本かなと思います。

フルカラーCGで学ぶ MR撮像のポジショニングとテクニック

こちらの本も恐らく技師さん向けでしょう。基本的に医師がMRIの撮像自体をすることはないので、オプションかもしれませんが、やはり病院によっては技師さんのスキル差があり、読影しにくい画像が出てくることがあります。それを指摘できるのは画像診断医だけです。そういう意味で、実践にあたらなくてもどういうフローを経て、読影する画像が出てきてるのか最低限は知る必要があると、個人的には考えています。その理解にこの本はいい本ではないかなぁと思います^^

(2)MRIの検査目的別の撮影プロトコルの教科書

画像診断ガイドライン2016

ここからは、検査の指示だし、MRIの撮像シーケンスをどのようにして決めるか?どのような画像をとるのが推奨されているのか書いてある教科書を紹介したいと思います。まずは「画像診断ガイドライン」です。残念ながら、すべての項目について撮影プロトコルが記載してあるわけではありません。ただし、FOVなどのパラメータから細かく記載してくれている項目もあります。もし迷ったら一番に参照すべき本だと思います。また、最近はBI-RADSにはじまる「○○-LADS」による標準化がはやっていることもあり、これらの「○○-LADS」にも推奨パラメータが記載されていることが多いのでご参照ください。

画像診断2020年2月号MRI再入門1-2

2018年末~2020年にかけて画像診断・臨床画像から合計4つのCase/Disease Basedな特集が4つ組まれました。これらの特集全て、素晴らしく、細かく、○○な病気とったほうがいいですよ~という症例集になっています。放射線科医ではなく、放射線技師さんがプロトコルを決めている病院もあると思うので、是非、放射線技師さんにも放射線科医目線でほしい画像というのが、存分に記載してあります。4冊まとめて買っても損させません(利益相反なし)!と言えるくらい名著ですね!

画像診断2018年12月号 ちょっと悩み画像検査のプロトコル

臨床画像 2019年4月増刊号 特集:症候別画像診断プロトコル

一目瞭然! 画像でみるMRI撮像法

上記の4つの本が出るまではこの本が割と撮影プロトコルを細かく日本語で書いてくれている名著でした。結構、専門的な内容まで触れてくれているので上記4つに加えて、清書として1つ持っていてもいいかもしれません^^

診療放射線技師必携  画像のアーチファクトを探せ!

最後に技師さん向けの本ですが、アーチファクトの特集号となっています!ちょっと画像がイマイチ綺麗じゃないのが難点なのですが、アーチファクトの教科書として一冊持っておくとイイかな~と思っています!

以上、今回は終わりです。

最後に色々書きましたが、実践に勝る学びはありません。「放射線科医は出てきた画像を読むのが仕事」という医者もいますが、私はそうは思いません。放射線科医として読影しやすい画像をだすことは、主治医のため、患者のためだと思っています。ひとつひとつの症例に対して、もっといい画像がとれるんじゃないか?このシーケンスとったほうがよかったんじゃないか?と思って日常診療にあたることが大事だと思います。馬鹿だと思われても技師さんに「こういうことできませんか?こういう絵とれませんか?」と質問して教えてもらうのも大事です。放射線技師さんは我々の思っている以上にMRIのことに詳しいです(プロですからね!)。これを機に一人でも多くMRIについてくわしくなってくれれば幸いです。

という私もまだまだ勉強中。

頑張って勉強しましょうね~!これ以上難しいことは私、わかりませんので^^; 誰か賢い先生や技師さんに聞いてください♡

それでは♪

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