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男三人|散文

家に三人の見知らぬ男が来た。いらっしゃいませ、どうぞこちらへ。パソコン用の椅子しかないので皆様床へ座ってください。男三人が1Kの小さい面積を吟味している間、私は彼らが勝手に自分のベッドへあがらないように見張った。そういうところだけ潔癖症なのだ。ずるずると本棚の横に腰を落ち着けた三人は声を合わせてこういった「ハイボール三つ」。この場合ハイボールは三杯なのか九杯なのか?半畳ほどのおまけみたいなキッチンにグラスを二つだけ見つける。常温のままほったらかしになっていたペットボトルを注ぎ、冷凍庫に氷を探す。見つからない。外の熱気とともに妹が帰ってきた。氷の場所知らんよな?さぁ、全部つこたんちゃう。こんなにぬるいハイボールを知らない方々に出すわけにはいかない。焦ってティファールを取り、水を注ごうとするとカレーが出てきてしまった。ぷつぷつと泡の踊る透明な液体がドロドロになっていく。え、なんで?ティファールの蓋を外して中を見ると炊き込みご飯が詰まっていた。焦りで無駄に私の心拍数を増やす男三人に猛烈に腹が立つ、エネルギーの無駄遣い。部屋を覗くとベッドの奥に何故かテレビが現れていて、男三人と妹がお互い狭い部屋で他人の距離を確保しながら食い入るように見ていた。微動だにしない黒い後頭部を見て、私は怒らない代わりにハイボールを出さないことに決めた。


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