私たちの思考と認知力の関係
私たちの思考と認知力の関係
私たちの思考は、自身の認知力の容量を占有するものである。これは、短期記憶の容量が限られているために起こる現象だ。例えば、心配事があると知識の習得が大きく阻害されてしまうのは、そのためだと考えられている。恐れや不安を感じてストレスを受けていると、集中力が著しく低下するのだ。
このような現象が起こるメカニズムについて、心理学者のシアン・バイロック氏は興味深い研究を行っている。バイロック氏によると、情動が脳のスケッチ帳を埋め尽くしてしまうことで、認知力が大きく損なわれるのだそうだ。特に注目すべきは、ごく幼い子どもにもこの影響が及ぶという点である。小学校低学年の子どもが悩みを抱えて頭がいっぱいになると、負荷が重すぎるために認知力が大幅に低下してしまうのだ。
これは、子どもの教育を考える上で重要な示唆を与えてくれる研究結果だと言えるだろう。子どもたちが学習に集中できる環境を整えるためには、単に知識を教え込むだけでは不十分なのだ。むしろ、子どもたちの心理的負担に目を向け、ストレスや不安を和らげることが肝要だと考えられる。
現代社会におけるストレスと認知力の低下
大人になってからも、私たちは日々様々なストレスにさらされている。仕事や人間関係、将来への不安など、現代社会を生きる上では避けられないストレス要因が数多く存在しているのだ。そうしたストレスに晒され続けることで、知的生産性が大きく損なわれてしまう可能性があるのである。
創造性を発揮したり、難しい問題に取り組んだりするためには、高度な認知力が求められる。しかし、ストレスを感じている時は、脳のリソースが情動の処理に割かれてしまうため、十分な認知力を発揮できなくなってしまうのだ。アイデアが思い浮かばなかったり、シンプルな解決策が見つからなかったりするのは、そのせいかもしれない。
また、短期記憶の容量が限られていることも、ストレス下での認知力低下に関係していると考えられている。短期記憶は、一時的に情報を保持する機能を持っているのだ。電話番号を覚えておくのも、計算途中の数字を記憶しているのも、短期記憶のおかげである。しかし、その容量には限りがある。一度に覚えられる情報の量は、多くても7±2程度だと言われているのだ。
ストレスを感じている時は、脳内のスケッチ帳が情動に占有されてしまうため、肝心の情報を覚えておくことができなくなる。必要な知識を記憶できないために、思考力が大きく低下してしまうのだ。何かを学ぼうとしても、頭に入ってこないと感じるのは、こうした状態だからかもしれない。
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