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lumikka original|フィンランドコラム

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lumikkaがお届けするコラムシリーズ。雪の結晶のような小さな視点から日常を見つめ、そこで発見した美しき風景や思考をお届けします。
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2023年9月の記事一覧

手仕事がつくる風景

以前のコラム「光のかたち」でもご紹介した、フィンランドの古都トゥルク。今回は、市街地に残された古い美術館を巡りながら、かつての手仕事の痕跡を辿ります。 まずは、薬局美術館。 当時、この家には貴族が住んでおり、ある時期においては街の薬局でもありました。 家の中には18-19世紀のロココ様式やスウェーデンのグスタビアン様式のインテリアがいまだに現存しており、当時の生活を記録する場所として非常に歴史的価値が高いです。 薬局だった頃のノートや薬瓶。ひとつひとつに個性があり、「

羊の島の夏

すべり込みの夏コラムです。夏至祭の記事と合わせてぜひご覧ください。 羊の島、ランマサーリ島の夏のこと。 旧アラビアファクトリーの裏の海辺に、Lammassaari/ランマサーリという島があります。日本語では「羊の島」。その名前からも、のどかな雰囲気が溢れ出ていますが実際はもっともっとのどかな島です。 島への橋。ここは観光客よりも、地元の人たちが多い印象です。 この島は夏の時期にだけ、どこからか羊がやってきます。それだけでなく、島全体は湿地帯のようになっていて野生の鳥を

セウラサーリ島の夏至祭

秋の風がそよぐ美しい季節がはじまろうとしています。フィンランドはもうすっかり夏が終わり、ひんやりとした空気に包まれている頃でしょうか。 少し季節外れになってしまうかもしれませんが、今年の夏に訪れたフィンランドの夏至祭のことを書こうと思います。すべり込みで2つの夏コラムを書きましたので、よければ合わせてご覧くださいませ。 ヘルシンキの西側の海に、セウラサーリ / Seurasaariという島があります。ここはフィンランドの伝統的な建築物が集合して(移築されて)おり、島全体が

屋根の上、空の下

ヘルシンキの中心部に、街を見下ろすことのできるルーフトップバーがあります。見晴らしの良い丘や山、高いビルのないこの街で、街の全貌を見ることのできる数少ない場所です。 ホテルのエントランスを抜け、エレベーターで12階まで。その後、とても狭い螺旋階段をぐるりと一周かけて登るとその場所へと辿り着きます。 よく行くおすすめスポット…と言いたいところですが、ここを知ったのは最近のこと。今年の夏の滞在中、偶然出会った日本好きのフィンランド人の方に教えてもらいました。 「高い」と言え

ヘルシンキの壁と窓

中と外、家と街。 それらに境界線を引く「壁」と、繋ぐ「窓」。 相反するような「壁と窓」ですが、街側から見ればそれらはひとつの平面で、街の生活の背景として日常に溶け込みます。 街の風景は壁と窓がつくる。と言っても過言ではないかもしれません。 今回は、ヘルシンキで壁と窓を探す旅に出かけます。 西の港の方の壁と窓。この地区は、ヘルシンキの中心部と違って新しい建物が多く、どれも似たような雰囲気をしています。 軒がなく、全体的にすっきりとしているところも特徴的。 続いて、