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LAPUAN KANKURIT|フィンランドコラム

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フィンランドのテキスタイルブランドLAPUAN KANKURITさんのnoteにて、「Design&Art」シリーズを寄稿しています。写真と言葉による新たな視点をお届けします。
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#アート

Design&Art|Colors in Finland 〈05.レッド〉

フィンランドの「色」が織りなす風景をご紹介する「Colors in Finland」シリーズ。今回はクランベリーパウダーの赤色を出発点に、人やモノ、都市から自然まで、様々な風景をお届けします。 赤から連想されるもの。たとえば森のベリーや野花、街中の信号やポスト。紅葉や提灯、鳥居など。空の青や木々の緑と違って、赤は「面」というより「点」として存在していることが多く、他の色よりも目立つ存在・特別な状態なものとして感じられます。 「赤」とは、他の色とはすこしだけ距離のある、わず

Design&Art|Colors in Finland 〈04. ブラウン〉

フィンランドの「色」が織りなす風景をご紹介する「Colors in Finland」シリーズ。今回は、秋の乾いた風に漂う落ち葉のブラウンを出発点に、様々な風景をお届けします。 春の新緑にはじまり、時の経過と共にその色を変えてゆく木々の葉たち。最後は、新たな生命のための養分として地に還るという一連の巡りは、人生そのものに例えられたり、人という生命の儚さと重ねて語られることがよくあります。 夏の終わりの切なさや、秋の風がもたらす感傷は、そこに自分自身の残像が含まれているという

Design&Art|Colors in Finland 〈02.グリーン〉

フィンランドの「色」が織りなす風景をご紹介する「Colors in Finland」シリーズ。今回は、サーモンスープなどでお馴染みのハーブ、「ディル」の緑を出発点に、様々な風景をお届けします。 フィンランドではじめてサーモンスープを食べた時、「なんだか森の香りがする」と思ったことを今でも鮮明に覚えています。パクチーほどの刺激はなく、ネギのように馴染み深い香りでもなく、不思議な、けれどフィンランドの森の空気をほのかに感じるさわやかな香りでした。 フィンランドといえば国旗に見

Design&Art|デザインを覗く 〈09.言葉と物語〉

言葉の連なりは文となり、文の集積は物語となる。 そして、物語は本となって、大きな世界を人々の心へ届けます。 言葉とは、それ単体では極めて小さなものに過ぎません。しかし、そのような「言葉」でも糸のように編み込んで、より大きな塊へ、より意味のある物語へと昇華させることで、人の心に長く残り続けるものとなるのです。 糸を編むこと、言葉を編集すること。 そして、そこから生まれるテキスタイル(Textile)とテキスト(Text)。そのどちらも行き着く先には「コンテキスト(Conte

Design&Art|デザインを覗く 〈07.春色の彩り〉

おどる春風、新たな季節の訪れに——。 多くの地域で桜が春を運んできてくれる頃。北の地域ではやっとこれから桜が咲き始める、そんな頃合いでしょうか。 夏から秋への移り変わりはセンチメンタルで、どこか切ない気持ちになりますが、冬から春へと向かうこの季節は朗らかで、エモーショナルなものです。それは、寒い冬を越してまた新たに花を咲かせる草木たちに、これからの自分の姿を重ねてしまうからでしょうか。卒業式の頃に咲き始め、入学式の頃に満開を迎える日本の桜の姿は、まるで私たちの出会いと別れ