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LAPUAN KANKURIT|フィンランドコラム

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フィンランドのテキスタイルブランドLAPUAN KANKURITさんのnoteにて、「Design&Art」シリーズを寄稿しています。写真と言葉による新たな視点をお届けします。
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#旅のフォトアルバム

Design&Art|デザインを探して 〈03.光の地下散歩〉

ひかり溢れる北欧の夏と、沈黙の冬。 北に位置するがゆえに、ヘルシンキの街を照らす太陽の光が季節によって大きくうつり変わることは広く知られていますが、この街には、いつも変わらず光に満ち溢れている空間があります。 ヘルシンキメトロ。世界の最北端にある地下鉄です。 ヘルシンキの東西方向に走るこの地下鉄は、1982年の完成以来、着々と延長工事が続けられていて、今日に至るまでちょっとずつ西へ東へとその範囲を拡大してきました。地下深くにつくられる駅にはもちろん太陽光は入ってきません

Design&Art|デザインを探して 〈02. ヘルシンキの残像〉

「見えない」ということが、かえって何かを予感させてくれる。 そんな美しい詩みたいな時の流れが、きっと日常にはあるはずだ。 失われた時を求めて、不確かな輪郭を掴もうとして、何かをもっと見ようとする。精一杯に感受しようとする。 まるで、冬の空気に澱む春の香りを感じるように。 フィンランドに住んでいた頃、ひとつの素晴らしいカメラに出会いました。 私たちが留学していたアアルト大学では、専門的な機材を無償で学生に貸し出してくれていて、その中にはとても高価なものや価値の高いものが

Design&Art|デザインを覗く 〈04.旅への空間〉

物語に起承転結があるように、旅にも始まりと終わりがあるものです。 まだ見ぬ大地へ旅立つこと、見慣れた土地へ帰ること。そのどちらも、少なからず感情の揺らぎを伴うもので、本質的に旅とはそのような情動を楽しむためのものかもしれません。 旅の行方は人それぞれですが、空・陸・海を繋ぐ空港や駅、そして港では誰かにとっての始まりと終わりが、そして誰かとの出会いと別れが絶えず生まれては消えてゆきます。空港とは、駅とは、港とは、そのようなドラマチックな空間なのです。 また、都市の要となる