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おしまいの日


「おしまい」が好きです。
別に悲観論者であるわけじゃありません。
大晦日が不思議と楽しい。
その年最後の夕日を眺めて、何処かの街で蕎麦など啜りながら、小さなテレビで特番を眺めつつ、日本酒をかたむけて。
宿に入ってベッドに横になって、除夜の鐘を遠くに聞きつつ眠りたい。

樋口一葉の小説に「大つごもり」というものがあります。
実は未読であり、書評だけみての事ですが、この小説も筋書きは未完のままで終わります。
後のストーリーはご自由に、ということですね。

「大つごもり」とは大晦日のこと。
主人公の「お峰」は、伯父の困窮を助けるため奉公先に2円の無心を頼みます。
奉公先の息子「石之助」は、勝手に稼ぎを持ち出しする放蕩息子で、それにかこつけて、お峰の頼みを断るのです。

ある日、お峰はある引き出しの中に20円が入っていることを思い出します。
お峰は、そこから2円を拝借してしまいます。
そして伯父の家にそれを渡してしまう。
その日の夜、奉公先の奥方が、20円がしまってある場所から金を持ってくるよう、お峰に言いつけます。

自分が盗んだことを告白しようと覚悟したお峰ですが、20円があった場所は空で、中に石之助の手紙が入っていました。
「引き出しの分も拝借致し候」
…これで事実は闇の中へ。
お峰は御咎めを受けることなく、目出たし…という事になります。
但し、その後のストーリーは謎なのです。

…まるで「聖夜」だと思いませんか?。
聖夜には奇跡が起きる。
日々の暮らしを続けてくれば、大概心も磨り減ってしまいますから、年に一度は奇跡が欲しいですよね?。

最近はクリスマスと年明けを同時に祝う
「merry christmas and a happy new year」
…が、日本でも浸透してきました。
クリスマスから大晦日、そして新年へ。
この繋がっていく時間こそ、私が愛して止まない「おしまいの日」なのです。

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