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渦巻く命のエネルギーに泣いた。 「霊気を彫り出す彫刻家 大森暁生展」 @そごう美術館

こんにちは。

大事なのは、作品が生きていて、「気配」を帯びること。
目に飛び込んできたポスター。これは見なくては!と導かれるように入ったそごう美術館。

大森暁生:1971年東京都生まれ。1996年愛知県立芸術大学美術学部彫刻専攻卒業。1995〜2002年まで彫刻家・籔内佐斗司のアシスタントを務め、1999年より工房「D.B.Factory」(2005年に東京・荒川区から北千住に移転)を開設。霊気が宿るまで徹底的に創り込む彫刻で知られている。

皆が求めるものは過去の自分。皆の想像を超えるものを提示することが創造でありそれを恐れたり面倒に思った時、創造の火は消える。

入り口を入った途端、ザワザワしました。急に空気が軽くなり、何かが待っててくれてる予感。

あっ、烏の舟!

《カラスの舟は昇華する》

なんてすごいエネルギー。

物、じゃない。抜け殻じゃない。氣が渦巻いてる。

美しい靴。

《KAZAKIRIのヒール》

彫刻のモチーフは燕なんですが、影は鷲。
ああ、空気が軽くなったのは境界線が曖昧になったからなのね。

《Eagle's hearts》

固定されていた現実から解き放たれて、次元を自由に行き来出来る軽さ。

《ぬけない棘の狼》
《ぬけない棘のエレファント》

そっと話してきた。

自分にとって動物は愛でる対象ではありません。風のように空高く飛び、稲妻のように地を蹴り、波のごとく大海原を自由に泳ぐ、人間にはとても真似できない”超”能力への敬意と憧れ、それに尽きます。

大森暁生

水の向こうの世界からこちらを覗くクーガー。

《月夜のテーブル ーCougarー》

大事なのは、作品が生きていて、「気配」を帯びること。

《Two Anacondas trapped in the frame》

惹きつけられたのが薬瓶。

そもそも薬瓶や遮光瓶って、なんだかたまらない。なにがたまらないか不思議だけど、漢方薬屋さんや理科室のあの感じ…いけないものを見てしまったそんな感じ。
漢方薬屋さんのマムシだとかカエルだとかは、きっとその世界観を作るがためで、それ自体は売れなくてもいいんだと思う。つまりそう、その感じ、あぁ魅惑的。

大森暁生

《鱗乃粉》:それはそれは美しい蝶々の体から採集した鱗粉。ちなみに銀座あたりに舞う夜の蝶ですけどね。

《龍乃角粉》:ラベルのごとく、龍の角を粉に挽いたという古来より伝わる秘薬。中国の深く高い山の頂にのみ存在すると言われる秘薬が、まさか近所の薬局で入手できるとは。和名「龍角…」。

むにゅっとした手が愛らしい龍。低い声で囁いてきた。「ちょっと舐めてみる?」って。

このセクションに入った途端、ぐぅーっと塊が込み上げてきて流れた。何を見ているのか知覚しないうちに泣いてた。自分の意思と関係なく涙が流れてきたので、ちょっと隅っこで泣かせてもらった。

殺処分ゼロを掲げ活動している熊本市動物愛護センターで生きる犬や猫たちだった。

つくる対象への取材をキチンとすることで自分にルーツが出来、そのモチーフをつくることへの許可が下りたような気持ちになる。

大森暁生
取材の様子はこちらで読めます。

《光の肖像》と名付けられた彼らから、大きなエネルギーが静かに流れ込んできました。言葉にできません。

《光の肖像ーすみっこのポンザ ー》
《光の肖像ー片目のうみんちゅー》

10代の頃から”本質でモノを見ること”が出来る人間になりたいと思っていて、それが出来る先人達をいつも憧れの眼差しで見ていました。
それはもともと自分が他人の意見に惑わされやすく、どこかミーハーで、なにより自分というものに確固たる自信が無かった表れに他なりません。
けれどいつも心の奥底では”常識”や”慣例”、”一般論”というものを確信的に胡散臭く思い疑っていて、いつかそれに対して正直に立ち向かえる自分になりたいと思っていました。

大森暁生

もう一度見に行きます。

《月夜のテーブル ーArowanaー》

霊気を彫り出す彫刻家 大森暁生展
2023年6月3日(土)~7月9日(日)[会期中無休]
そごう横浜店 6階=そごう美術館
開館時間:午前10時~午後8時
※入館は閉館の30分前まで。

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