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あのころのおませさんへ

ずっと好きなものってありますか?
こどものころからでも、学生のころからでもいいんですが、大人になったいまでも好きなものってありますか?

昨年末、実家が無くなった。
正確に言えば、売られ、新たな住処へと両親が移った。

我が元実家は一軒家であった。
家自体の老朽化が進んでいること、二人いる娘はとうにそれぞれの暮らしをしていて、両親二人には一軒家は広いこと、ちょうどいい買い手が見つかったので、もう少し田舎の、マンションで父母が暮らすためだった。

思い入れはないといえば嘘になるけれど、二人が決めたことだし、
なにより、二人が、あるいはどちらかが亡くなってから、どうするか決めなければならないより、ずっと良かった。(両親には悪いが)

ちょっとずつ、母親が家財やら家にしまい込んでいたものやらを引っ張り出し、売ったり、捨てたり、整理していた最中だった。

幼少期の写真、アルバムが見つかった。結構な量あって、いや〜こういうのちゃんとやってた人だったのね、と両親な意外な一面を思いつつ、掃除中あるあるで、みんなで見ふけった。
わーかわいい、わー小さいね、このとき覚えてる、など口々言いながら、みんなで見ていた。
その小さい頃のわたし、めちゃくちゃおしゃれ、かつポージングがおませさんだったんです。

母親いわく、わたしは「きせかえ人形」だったらしく、洋服はもちろん、髪型から靴に至るまで凝りに凝った服を着ていた。
フリルいっぱいのギンガムチェックのワンピース、オーバーオールに赤いセーター、くるくるの髪の毛…
そういう格好で写真に写る、小さいわたしはどれも誇らしげで、なんていうんですか、一昔前のセクシーポーズ?右手を頭に、左手を腰に当てて、身体をひねる感じのあれ、でよく写っていた。

そう、わたしはおしゃれするのが好きだった。洋服自体もそうだし、着ている自分も好きだった。フリルとかレースとか、リボンとかギンガムチェックとかパフスリーブとか、そういうロマンチックなものが、大好きだった。

過去形にしてしまった。わたしはそういった類のものがつい最近、それこそ大学入りたてくらいまで大好きだったけど、なーんか、だめよね、大人なんだから、なんて封印してしまっていた。
社会人になってからもそれは加速して、オフィスカジュアルとはこう!大人の女性とはこう!といった雛形を、覚えては実践し、これがわたしに似合うものだ、イケてるイケてる!と思っていた。

でも気づいてしまいました。まだ好きでした。ロマンチックで、キュートで、スイートなものたち。ピンク、赤、白、ペールブルー、イエロー…かわいい色、ときめく色たちのことが、ずーっと好きです。

雛形のわたしは、まあイケてはいるけど、世間から見て、イケてるって感じ。いまの格好、好き?本当に?と聞かれれば、シックなブラウンより、純白のフリフリブラウスが着たい。ベージュの無難なパンツより、ピンクのカラーパンツがいい。靴だって、黒いリクルートみたいなパンプスより、赤とかピンクのバレエシューズがいい。

なーんで忘れちゃってたんだろう。わるいわるい、ごめんね。
あのころのおませちゃん、あなたが好きだったもの、今でもちゃんと、好きだよ。
あの、胸がきゅーんとなる、あの感じ、あなたよりもーっと可愛く、今っぽく着こなすから、見ててね。


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