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過去のドラマ鑑賞時間「dele〜ディーリー」第5話の語りすぎない秀逸さ

最近新作ドラマが収録・放映できないとあって、例えゴールデンタイムだろうが過去の人気作品をお届けすると言う現象が起きてます。

再放送しているのに限ってあまり興味が沸かないのはなぜだろう。

そんな中、毎週録画予約してまで見ているのが、現在BS朝日で再放送をしている「dele」。原案脚本に名を連ねているのが本多孝好さん、そして脚本に金城一紀さん。現代にありそうででも近未来(そう遠くない)には登場するだろうことをテーマにするのがすごくうまいと言う印象。
当時も見ていたはずだけれど、今見ても古くない。さすが。変わったことと言えば、菅田将暉がとても若くてフレッシュ感が残っている、ということだけだろうか。
内容を全く知らない人のために少しだけストーリー説明をする。

【ストーリー】
圭司(山田孝之)は車椅子生活だがそのスキルを活かして、依頼してきた人物の死後のデータ削除を請け負う仕事をしている。その会社「dele.life」に保証人のような形で関わっている敏腕弁護士の姉舞(麻生久美子)が連れてきたのは、他人の人生に安易に首を突っ込む天然幸せキャラの真柴(菅田将暉)。
誰にも心を開かない気難しい圭司だったが、人の心にするりと入り込む天性の才能を持つ真柴とは不思議とうまく仕事をするようになる。


今ではほとんどの人が持っているスマホ、パソコン、その中に入っているデータ。それらの中から「死後抹消してほしいデータ」を依頼すれば、確実に遂行してくれると言うこの会社の存在。当時でも「確かにあるな」と納得した記憶がある。
その依頼が意味するものは、その人が「家族ですら知られたくない事実をデバイス内に保存してある」と言う事実。
思えば寂しい気もするけれど、これまでだったら心の中に上手くしまい込めさえすれば墓場まで持っていけたものが、今はそうもいかない。生前は必要だけれど死後には不要、それどころか誰にも知られたくないと言う秘密。

特定されたデバイスが決められた期間起動しなければ信号が届く。そして真柴が死亡確認を行う。圭司とタッグを組んで仕事が上手く軌道に乗り始めたと言う頃にこの問題の5話が登場。
いつものように死亡確認に行こうとする真柴だが、圭司がいつもよりお洒落をしていることに気づく。
実は圭司は年に一度会う人がいて、その相手は元恋人で生徒と教育実習に来た先生と言う立場で知り合った沢渡(柴咲コウ)なのだ。

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と言うのは全く説明されず、2人の会話から推察していくしかない。冷めるような説明口調なセリフは全くなくて、2人の間の空気と共に語られる会話からそれらが解き明かされていく。
過去2人が恋人だったこと、一年に一度会う約束をしていること、圭司は病気が原因で足が不自由になったことで彼女と別れる決意をしたこと・・・それらが何となくわかっていく。
多くを語らない会話が親密さを醸し、付かず離れずの2人の距離が気持ちがまだ不安定に残っていることを示唆する。

一方で、真柴が向かった先は、依頼者の27歳男性のもと。実は事故にあって意識不明の重体であることがわかる。真柴は自分がついた嘘が原因で、見舞いに来ていた幼馴染みの婚約者百合子(橋本愛)に付き合い、しばらく行動を共にすることになる。
そんな中、男性の親友だと言う男性とコンタクトをとる真柴。そこには想像していない事実があって・・・

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百合子は重体である聡史のことが知りたくて仕方がない。それは自分に都合の良い事実。事故前には決して聞けなかった言葉を期待する百合子は、deleの存在を知って中身を消さないでと頼んでくる。
その中身は最後まで明かされないのだけれど、聡史の隠そうとした秘密は物語冒頭でほんの少しだけ匂わせていたように、彼の心の中の葛藤をいつも駆り立てていた事実だった。

その事実は百合子が望んだものだったのか、それはたった1つのシーンでひっくり返る。

交互に挟まれる、沢渡と圭司とのやりとり、百合子の揺れ動く気持ち、これらが絶妙なバランスで溶け込んで進んでいく。

好きな人のこと、あなたは本当に全て、知りたいのか。

言えなかった言葉、聞きたいこと、言ってほしいこと、絶対に言えないこと。

人の奥底に根強く横たわる「自分だけの領域」。人はいつからスマホにそれを移し始めたのか。自分とは切り離した存在の中に、もう1人の自分を作り始めたのか。
結局今は、秘密を墓場まで容易には持っていけない時代、なのかもしれない。

ドラマ「dele」はHuluなどでも配信しているようです。
最終回まで後数話、 BS朝日で再放送中なので気になった方は一度見てみてください。

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