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鬼才にして天才、アルモドバル監督最新作「ペイン・アンド・グローリー」は是非劇場で見てほしい

ベドロアルモドバル監督の最新作である「ペイン・アンド・グローリー」を観た。

近くのミニシアターでの最終日。コロナ禍で様々な作品の上映期間が混乱している最中、近くの劇場で見られたのはラッキーだった。

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円熟期を迎えた映画監督であるアルモドバルが、同年代の落ちぶれた引退同然の映画監督を描く、と言うことでノンフィクションとフィクションが織り交ぜられた印象を受けた。

【ストーリー】
自身の身体的不具合と、愛する母親を亡くした喪失感から立ち直れない映画監督のサルバドールはもう30年以上新作を発表していない。完全に表舞台から姿を消していたが、最後の作品のリバイバル上映の話が舞い込み、そこから様々な人たちとの交流が再び始まる。動き出した人生の歯車は、果たしてサルバドールにもう一度生きる活力を取り戻させるのか。

サルバドールの回想を通して描かれる、少年の母親への愛、多感な時期の奇妙な待遇、そして初めて覚える恋。サルバドールは何度もその思い出に陶酔し、過去の瑞々しい感覚が蘇る。

その過去・現在を行ったり来たりする映像は全て、アルモドバル監督独特の感性で作り上げられる極彩色の世界。

一つ一つの色が際立っているのに、決して喧嘩をしない、その計算し尽くされた配色は、見ているものを瞬時にその映像の中に連れ去ってくれる。

彼の作品を劇場で見る、大きな理由の一つだ。

どの画面を切り取っても、それだけでポストカードになるような、美術館に並ぶ一枚であるような、でも決して押し付けがましくないところにいつも唸らされる。

特に最後の作品となったと言う映画のポスターが素晴らしい。実際にあったら絶対に見てみたいと思わせる、細部までのこだわりに脱帽した。

サルバドールを演じるのは、アルモドバル作品の常連であるアントニオバンデラス。奇抜ともいえる衣装を見事に着こなし、どこからどうみてもまだ活力のくすぶるオヤジであるし、また、どこからどうみてももう死を覚悟した晩年の男であった。

上映期間が地域によってまちまちらしいので、お近くの劇場でこれから公開、と言う方がいたらぜひ、2時間と言う時間を割く価値はあります。

鑑賞後の満足度は、近年にない重量感だった。非常に良かった。

サポートをいただければ、これからもっともっと勉強し多くの知識を得ることに使います。