「蝶の国への招待」―シロクマ文芸部|お題「紅葉から」参加記事
小牧幸助さん企画の「シロクマ文芸部|お題「紅葉から」に
参加させていただきます 小牧さん どうぞよろしくお願い
いたします
題「蝶の国への招待」
蝶の国へと招かれる
紅葉からキラキラした光が
見えた。森は すっかり秋の
装いとなっている。私は28歳、若手
デザイナーとして そこそこ
名が売れはじめていた。
私は好奇心に かられて
その光る物を手に取った。
それは トパーズ色で 小さく丸い形を
していた。両手で包んでやると
小さく震えだし、殻が割れ
青い蝶が生まれて来た。ゆるゆると
トパーズ色の羽根を 動かすと
陽のひかりに まぶしく輝いた。
私は ただ驚いてみつめる。
蝶がしゃべる
「あなたがいらっしゃるのを お待ちして
おりました。無事に羽化させて頂き
ありがとうございます。
王子さまが お待ちです。蝶の王国へ
お連れするように 言われております」
私には、何が起こっているのか全く
訳がわからず、頷くだけ。 すると蝶は
フワリと飛び立って 少し先の道上で
羽根を広げて 私がついて来るのを
まっている。
王子様との対面
蝶の道案内で、黄色に色づいた
トンネルを通り幾つも抜ける。
途中で出会う 沢山の虫たちが
お辞儀をして 歓迎してくれた。
蝶の王国は 白い霧に覆われている。
厳めしいクワガタムシの門番が
立ち上がり 敬礼をしてくれる。
王宮は ブルーのバラの 花びらを幾重にも
重ねて作られている。
香しい香りが 辺り一面に漂う
王子さまは 虹色にひかるガウンを
纏って 私を迎えてくれた。青く透き通る肌が
動くたびに色を変える。澄んだ目と
真摯な心の 持ち主のようだ。
「よく お越しくださいました。
あなたのデザインされる蝶の柄、この王国でも
とても評判です。今日は色々な蝶の
美しさを もっとご覧いただきたくて お招きを
いたしました。どうぞ存分にお楽しみ
ください」
王国での おもてなしはとても手厚い物
だった。世界中の蝶たちが 舞台で
おどり、うたう。 黄金色の鱗粉が
大空で、一面にかがやく。
飲み物は 沢山の花の蜜を混ぜ合わせ
えも言われない香りとコクのあるジュースで
これを飲んでいると 空腹を感じない
一体 どれだけ時間が経ったのかは
わからない。(ふと そろそろおいとま
した方がいい}という声が何処からか
聞こえて 我に返った。
王子様に 辞意を伝えると
深々とお辞儀をされ、目に涙を浮かべた
「もう お帰りとのこと。私どもは
もっと居ていただきたい気持ちです。
また人間の国に戻られたら 蝶の美しさを
世間に 存分に広めてください。
お土産に このタブレットを
差し上げます。 夜寝る前に
タブレットを立ち上げて 画面に
でてくる蝶に、ご自分が旅したい
場所をお伝えください。夢の中で
それが 実現されます。では
ご機嫌よろしゅう」
夢のなかの旅
帰り路は 私は小さな姿に
なって、黒いアゲハ蝶の背中に
乗って 自分の家に戻ってきた。
それからは 立て続けに華麗な
蝶たちのデザインを発表し、昼の
ワイドショーなどでも 取り上げられた
私のプライベートでの楽しみは
夢の中での 世界旅行だった
シスコでは 坂道をノロノロ登っていく
ケーブルカーに乗った
楽隊をしたがえた ベニスの
ゴンドラ遊覧を楽しんだ
リスボンで 市電の中で
演奏された物悲しい「ファド」の
歌に涙した
でも どの旅も 一人旅だった
夢の終わり
ある夜 タブレットにお願いした。
「自分が 少女時代をすごした
{故郷のみかん畑}に行きたい!!」
タブレットはしばらく フリーズしていた。
そして「過去に戻るのですね??
二度と戻れないかもしれませんよ」と返答してきた。
私は 迷わずにタブレットの「実行」ボタンを
押した
眠るとすぐに みかん畑の
木の下にいた。 バアバは
「彩ちゃん 少し手伝いんさい。
もうすぐ 日が暮れるけんね」と
シワシワの笑顔でいう。
みかんもぎを 手伝って
家に戻る。そこには 事故で天に行って
しまった 父さんと母さんが 笑顔で
待っていてくれた
「彩ちゃん お疲れ様 夕ご飯できとるよ」
今は 変わってしまったふるさとが
昔と変わらずここには 残っている
涙を浮かべながら 夕飯をたべ
両親に 甘え続けた
やがてタブレットが自動で立ち上がり
「警告 警告 もう夢の終わる時間です!!
すぐ リターンキーを押してください。
押さなければ 永遠に夢の世界に
閉じ込められます。あと3分以内に
押してください」
私の指は リターンキーを押さず
タブレットの「電源ボタンを切る」を押した
そして、私の 夢は今もずっと続いている。
長々と御読みいただき ありがとうございました。
厚く 御礼申し上げます
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