ヘッベル「秋の絵」(ドイツ詩を訳してみる 20)

Christian Friedrich Hebbel, Herbstbild (1852)

見たこともないような秋の日だ。
息をひそめたような静けさのなか
ここかしこのあらゆる木から
美しい果実の落ちる音がする。

おお 自然の祝祭に手を出すな!
これは自然みずからによる収穫なのだ。
太陽の光のやさしさに耐えかねたものだけが
今日 木の枝を離れて落ちてくる。
Dies ist ein Herbsttag, wie ich keinen sah!
Die Luft ist still, als atmete man kaum,
Und dennoch fallen raschelnd, fern und nah,
Die schönsten Früchte ab von jedem Baum.

O stört sie nicht, die Feier der Natur!
Dies ist die Lese, die sie selber hält;
Denn heute löst sich von den Zweigen nur,
Was vor dem milden Strahl der Sonne fällt.

 *

今回はちょっと原詩から離れすぎてしまったかもしれません。

「耐えかね」は八木重吉の詩からお借りしました。

素朴な琴

この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美くしさに耐えかね
琴はしずかに鳴りいだすだろう

より忠実(?)な第1稿も併せて載せておきます。

見たこともないような秋の日だ。
誰もほとんど息をしていないかのように空気はしずかだ
それでいて 音を立てて ここかしこで
世にも美しい果実が 木という木から落ちてくる。

おお 自然の祝祭をじゃまするな!
これは自然がみずから収穫しているのだ。
今日 枝を離れてくるのは
穏やかな日光のために落ちるものだけだから。

 *

ハンス・プフィッツナーによる歌曲(1907)があります。


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