ヴェルレーヌ「白い月が……」(フランス詩を訳してみる 6)

白い月が
森を照らす、
木の葉のかげの
枝という枝から
声が漏れる……

ああ 愛しい人。

池の水が、
深い鏡のように、
黒い柳の木の
影を映す、
風が涙をこぼす……

今こそ 夢見よう。

月に照らされた
七色の星空から
大きく柔らかな
ひとつのやすらいが
降りてくるよう……

これぞ 至純の時。

(永井荷風・渋沢孝輔の訳を参考にした。)

La lune blanche
Luit dans les bois;
De chaque branche
Part une voix
Sous la ramée…

Ô bien aimée.

L'étang reflète,
Profond miroir,
La silhouette
Du saule noir
Où le vent pleure…

Rêvons, c'est l'heure.

Un vaste et tendre
Apaisement
Semble descendre
Du firmament
Que l'astre irise…

C'est l'heure exquise.

やすらい」は、この詩が収録されている詩集の La Bonne Chanson というタイトルを『優しき歌』と訳した立原道造の用字を借りました。

 *

レイナルド・アーンによる歌曲(1893年)[楽譜]があります。


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