シャルル・ドルレアン「冬よ お前はまさにならず者だ」(フランス詩を訳してみる 2)

雪の降る寒い日に、前回に引き続き、中世フランスの詩人シャルル・ドルレアン(1394-1465)のロンドー(rondeau)を訳してみました。

Yver, vous n’estes qu’un villain,
Esté est plaisant et gentil,
En tesmoing de May et d’Avril
Qui l’acompaignent soir et main.

Esté revest champs, bois et fleurs
De sa livrée de verdure,
Et de maintes autres couleurs,
Par l’ordonnance de Nature.

Mais vous, Yver, trop estes plain
De nege, vent, pluye et grezil ;
On vous deust bannir en essil.
Sans point flater, je parle plain,
Yver, vous n’estes qu’un villain.
冬よ お前はまさにならず者だ。
かたや夏は 親切で気持ちがいい、
朝から晩まで夏のお供をしている
五月と四月が その証人だ。

夏は 野や森や花に
緑色の衣装や
色とりどりの衣装を 着せる、
自然が命じるままに。

しかし 冬よ お前は
雪や風や雨や霰ばかりを携えている、
そんなお前は国外追放しなければならない。
公明正大に私は告げる、
冬よ お前はまさにならず者だ。

国外追放(essil、現代フランス語では exil、英語では exile)という言葉が出てくるのが面白いですが、シャルル・ドルレアン自身が英仏間の百年戦争のためにイングランドの捕虜になり、25年間も幽閉されていたというので、とてもリアリティのある言葉だったのでしょう。

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この詩にもクロード・ドビュッシーが音楽をつけています。1898年に作曲され、無伴奏合唱組曲「シャルル・ドルレアンの3つの歌」の第3番として1909年に出版されました。アカデミックな作曲法を嫌ったドビュッシーとしては珍しく、対位法が使われています。

さらに晩年になって、2台ピアノのための「白と黒で」(1915年)の、ストラヴィンスキーに献呈された第3曲 Scherzando にも、この詩の1行目が掲げられています。


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