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誠意を貫く王子様

数年前の夏、ひょんなことから都内のインターナショナルスクールで、サマースクールのお手伝いをすることになりました。

帰国してから日本の保育園でしか働いたことのなかった私。もちろん日本の働き方しか馴染みがありません。


でも流石インターナショナルスクール、都内にありながらも中は別世界。

日本人の方ももちろんいらっしゃいますが、みなさん帰国子女やハーフなど、海外のバックグラウンドを持っていました。

夏休み期間の二ヶ月間だけでしたが、これが大変良い刺激になったのです。

そんな中でも印象に残っていること。それは、毎週金曜日になると、スクールから全職員にスターバックスが支給されること。

はじめて金曜に出勤した日、みんながフラペチーノを飲んでいるので不思議に思いましたが、どうやらそういう制度があるようで。


ウクライナ人の先生が、
「オーダーシート書かなかったの?」
と声をかけてくれ、初めて知りました。

お手伝い程度にお邪魔してるだけだし、来週からお願いするのすら恐れ多すぎる。なんて考えているわたしにその先生が、

「今から君の分も買ってくるよ!」

と。

いやいや、オーダーしてなかったのわたしだし、それはさすがに申し訳なさすぎる…。そう感じたので、

「ううん、本当に気にしなくて大丈夫だよ!
コーヒーそんなに得意じゃないし」

と全力で遠慮するも、

「一応メニュー見てみる?
カフェイン苦手ならチャイフラペチーノや
マンゴーフラペチーノとかもあるよ!」

わざわざスマホでメニューを見せてくれ、
これ以上遠慮してもあまり意味がない気がしてきたので、


「じゃあチャイフラペチーノで …?」

と小声で答えました。



この学校の近辺にはスターバックスがないので、スクールはウーバーで頼んでいたと思うのですが…  なんとこの男性は フラペチーノひとつのために片道40分ほどかけて買ってきてくれたのです。

仕事は?というツッコミもあるかと思うのですが、わたしが察するに、サマースクールの準備期間だったので、ある程度融通がきいたのかなと。(自主的に出勤してる感じ?)

「わざわざ本当にありがとう!」とお礼を言いましたが、見返りを求めるような様子も、自分に酔っているような様子もなく、終始爽やかでした。


それだけではなく、この男性は身長185は余裕でありそうな、絵画に出てきそうな整った顔立ちをしていました。なので余計に、わたしなんかのために、こんな王子様みたいな人が使いっ走りになっていいのか … と。

結局容姿かよ!という話ではなく、そんな優れた容姿を手にしていても、そこにあぐらをかかず、調子に乗らず、他人を優先して動けることに人として尊敬の念を覚えたのです。


中身に自信がないからこそ、容姿を磨けるだけ磨いて、少しでも自分を好きになろうとする人で溢れかえっているこの世界で。腐りそうな日があっても、そういう人がいることを思い出すだけで、頑張ろうって思えたり。

もう名前も覚えていないけど、
イケメンなんて安っぽい言葉より、王子様という表現が似合う、身も心も美しい人のお話でした。



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