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【ぼくの思い出#04】ぼくとベトナム、日本とバオ君4

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ぼくが高校2年生のとき、クラスにベトナムからの留学生がやってきた。

名前をバオ君といった。

彼と過ごした期間はたった1年間だったけど、本当にステキな1年間だった。これはそんなぼくの思い出話#04だ。これまでの話を読んでいなくても分かるように書いてあるので、まぁ読んでいってくれ。


ー 4 ー

文化祭の準備に追われていたから、秋頃のことだったと思う。
ぼくとバオ君のふたりで、クラスに飾るなにかのオブジェを作っていた時だった。突然にバオ君がソワソワしながらぼくに話してくれた。

「ユキノさん綺麗だね」と。

そう。バオ君に好きな人ができたのだった。
ちなみにユキノさんというのは同じクラスの女の子で、クラスの中ではあまり目立たないタイプの小柄な女の子だった。ぼくのクラスには、いわゆる「カワイイ子」が4人くらいいて、クラスの男たちは大抵その4人のうちの誰かが好きだったから、バオ君のチョイスはけっこう意外だった。

ただその一方で、彼女を好きになるのはすごくバオ君らしいな…とも思った。ユキノさんは学年の中でもトップクラスに勉強ができる人で、そして彼女は相当な努力家だったからだ。

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「なぁ、ぢぇぃ。ユキノさんに何を言うとイイ?」

バオ君はかなり積極的で、あっという間に告白しようとしていた。ぼくはもうちょっと距離を縮めてからの方が良くないかと思ったが、どうやらバオ君は気持ちを抑えきれないらしく、気付けば文化祭当日に告白しちゃえ!ってなことになっていた。
プランとしては、文化祭の片付けが終わったところでユキノさんを渡り廊下(校舎内では一番ムードのある場所だった)に呼び出し、そこで告白することにした。まぁ…今考えればザックリし過ぎた雑なプランだったと思うけど、当時のぼくらは本気だった。
「あなたのことが好きです!」っていうのが一番分かりやすくてイイ!と、ぼくはバオ君にアドバイスして、背中を押した。

そして告白当日。バオ君はソワソワしながらもぼくに最終確認するのだった。

「ぢぇぃ、あなたのことがのことが⚫︎ ⚫︎ ⚫︎って何か?」

バオ君はどんな時も日本語に敏感だった。
ぼくは軽くため息をついて、「ことが」は「very very very」だと、テキトーなことを言っておいた。


結局、バオ君の恋は儚く散ることとなる。
こういう時はやけ食いしよう!ぼくはバオ君を誘って、一緒にハンバーガーとフライドポテトをアホほど食べることにしたのだった。


【ぼくの思い出#05(最終話)】へ続く。


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100円→今日のコーヒーを買う。 500円→1時間仕事を休んで何か書く。 1,000円→もの書きへの転職をマジで考える。