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【3分で読める#14】油跳ねがエグい件について

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油跳ねがエグい。

 さっきから唐揚げを揚げるのに、身の危険を感じている。箸で肉を裏返そうにも、油跳ねの弾幕がえらい事になっていて、迂闊に手を出せない。時々流れ弾が手の甲に当たって、マジで熱い。
 なんなんだコイツは!おれに唐揚げを作らせたくないのか、油にもイヤイヤ期があるのか!?とにかく油にやたらと落ち着きがない。

グゥアァァツ!

 油の野郎がおれの首筋に飛び込んで来やがった。熱と痛みに悶える。何なんだいったい!油はこの前変えたばかりで、まだ2回くらいしか使っていないし、温度も170度だし、油に不備が見当たらない。

トリ肉の方か!?

近所のスーパーで買ってきた、ブラジル産トリモモ肉100グラム68円。コイツか!?コイツのせいなのか?今日の揚げ油にはサンバのノリが足りなかったとか、そういうことなのか?それとも、味付けに使った醤油と酒とマキシマムがお肌に合わなかったのか。

 なんだか知らんが、相変わらず唐揚げの現場は惨状と化している。ここまで来るとおれとしては達観の境地に辿り着きつつある。あぁもうコイツらの好きにさせてやろう。跳ねたっていいじゃないか。油だも…

ダァァッチィィ!!

 また跳ねて来やがった!今度はアゴに当たった!これ万が一、目に入ったらマジでヤバいやつだ。よし、火、消そう。もし食べてみて半ナマだったら、その時は電子レンジ先生にお任せしよう。おれにはもう無理だ。唐揚げで負傷なんてシャレにならん。

 おれが主夫になってからというもの、わが家の水曜日は唐揚げの日と決まっている。カラアゲウェンズデーだ。これまでこんな事は無かったのに、今日だけやたらとデンジャラスなのは何か原因があるんだろうが、おれにはさっぱりわからない。ひょっとしたら、来週になったら機嫌が直っているかもしれない。

女心と揚げ油

昔からそう言うではないか。


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100円→今日のコーヒーを買う。 500円→1時間仕事を休んで何か書く。 1,000円→もの書きへの転職をマジで考える。