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貸したお金を弁護士の僕ならどうやって返してもらうか-15(「仮差押え」という方法もありますが)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:貸した金を返してもらう 】

今日も引き続き「貸したお金を返してもらう」についてお話していきます。

昨日の話では、返済を求めることができる相手は僕が貸し付けた人物=キャバ嬢だけなので、キャバ嬢の財産のみが返済原資となることから、キャバ嬢本人の財産を調査する必要があるという話をしました。

訴訟を提起して判決が出ても、結局、返済原資となるのはキャバ嬢の財産だけなのです。

どうあがいてもこの事実は変わりません。よく、「子どもの借金を肩代わりした」とか「夫の借金を代わりに返済した」なんて話が出ますが、それは、連帯保証人にでもなっていなければ成り立ちません。

夫の借金であれば、夫の財産のみが返済になります。たとえ妻だろうが、連帯保証人でなければ、代わりに返済する必要はありません。

「日常家事債務」という仕組みもあって、これを根拠に、夫の借金の返済を妻に求めてくる貸金業者がいるかもしれませんが、これは、あくまで「日常家事」について、配偶者の一方が負担した債務(借入金)の連帯保証人になる、というだけです。

「日常家事」かどうかで結論が左右されますが、夫婦の生活費(食費や夫婦で住む賃貸物件の家賃)に充てる目的でお金を借りたのでもない限り、片方の借入金について、もう片方が負担することはありません。

さて、キャバ嬢の財産のみが返済原資となるとすれば、キャバ嬢がその財産を全部使い果たしてしまうと非常に困ります。

「天下無敵の無一文」という言葉がありますが、無一文の相手に対して返済を求めることはできません。だって、無一文だからです。

有り金全部使い果たして、最終的に生活保護を受給して暮らすようになってしまうと、ジ・エンドです。

支給された(預金口座に振り込まれた)生活保護費はすべてキャバ嬢の生活費に使っていいですから、返済に回さなくていいです。

じゃあ、使い果たされる前にどうすればいいかというと、「仮差押え」という手続きがあります。

繰り返しになりますが、判決が出れば、キャバ嬢の財産に強制執行して(財産を差し押さえてキャバ嬢本人が売れないようにして裁判所が買い手を見つけてお金に変えて)、返済を受けることができますが、ただ、強制執行までにキャバ嬢が財産をすべて使い果たしてしまうと、法的に強制執行ができるとしても、絵に描いた餅です。

キャバ嬢が財産を使い果たす前に、使い果たしを防止する必要があります。

それが、「仮差押え」です。

昨日の最後で少し書きましたが、判決が出れば、「財産開示」という手続きを用いて、キャバ嬢の財産を調査することができます。

この「財産開示」にキャバ嬢が協力しない場合(例えば、裁判所からの呼出状に応答せず、指定期日に出頭しない場合)、キャバ嬢には罰則(50万円以下の罰金または6ヶ月以下の懲役)が与えられます。

判決が出れば、こういった「財産開示」という、罰則によって協力が確保された公的な手続きが用意されているんですが、それまでは、財産を調査する公的な手続きはありません。

したがって、「仮差押え」によって、キャバ嬢の「使い果たし」を防止しようにも、財産は自分で調べるしかありません。

・尾行して住所を特定し、その住所がキャバ嬢名義の持ち家かどうか調べる

・住所近くの金融機関はどこか調べる

・勤務先を調べる

こういった感じで、地道に財産を調べるしかありません。

仮差押えするにも、金融機関の支店を特定する必要があります。だから、「三菱UFJ銀行」じゃ足りません。「三菱UFJ銀行日本橋支店」まで特定できて初めて、仮差押えが出ます。

もし、仮差押えの申立書に記載した支店に口座がなければ、仮差押えは空振りになります。

この財産の特定の問題と、「仮差押え」は、「保全の必要性」という問題があります。

「保全の必要性」とは何かというと、訴訟提起の前に、仮差押えをしなきゃいけないほど急ぐ理由があるのか、ということです。

仮に「仮差押え」が認められると何が起きるのでしょうか。

これは仮差押えの対象財産によって異なります。

不動産を仮差押えすると、不動産の登記に「仮差押え」と書かれます。

それだけです。

「それだけかい!」というツッコミが来そうですが、「仮差押え」と書かれると大変なことになります。

なぜなら、誰も買わなくなるからです。

昨日、「差押え」について「売れない状態をキープする」と説明しましたが、これは正確ではなくて、実は、「差押え」があっても不動産を売ることはできます。

ただ、「差押え」と登記に書かれた後に買った人は、後に競売によって売られちゃうことを覚悟しなきゃいけません。

つまり、買った人から見れば、せっかくお金を出して買った不動産が、競売にかけられてしまい、その代金も裁判所に納付されて、自分には支払われない、ということになってしまうのです。

そんなことになるなら、誰も買いませんよね(笑)。

だから、「差押え」は、結局、「売れない状態をキープする」になるのです。合理的に考えれば買い手はつかないからです。仮に買われたとしても、そのまま競売されてしまいます。

「仮差押え」も「差押え」と同じで、「仮差押え」と書くと、誰も買わなくなります。

そのまま競売になっちゃうかもしれないからです。

そうすると、「仮差押え」って、キャバ嬢にとってめちゃくちゃな不利益を課すことになりますよね。

本来、自分の不動産はいつでも好きに売っていいはずですが、それをできなくするのが「仮差押え」です。

だから、そんな簡単に認めるわけにはいかないのです。

本来であれば、訴訟を提起して、本当に返済を求めることができるかどうかを時間をかけてじっくり判断して初めて、「差押え」ができるようになるところを、「仮差押え」で前倒しするわけで、しかも、それによって、「差押え」と同様の不利益がキャバ嬢に発生するわけですから、それなりの理由が必要で、それが「保全の必要性」です。

仮差押えの対象財産が預金の場合は、不動産よりも更に深刻で、なんと、預金口座がロックされてしまいます。

というのも、仮差押えが認められると、裁判所から銀行の支店宛に書面が届くのですが、それが届いた瞬間から、キャバ嬢は預金を引き出せなくなるので、銀行側が、預金を引き出せないようにロックするのです。

仮にその口座がキャバ嬢の生活費を工面する口座であれば、キャバ嬢は生活が立ち行かなくなってしまいます。

預金の仮差押えって、それだけの絶大な効果があるのです。

この絶大な効果を簡単に付与してはいけなくて、どうしても急がなくてはならない相応の理由がある例外的な場合に限ってのみ認められるべきで、その分水嶺が「保全の必要性」なのです。

だから、簡単に「保全の必要性」は認められません。

例えば、キャバ嬢がお金を使い果たそうとしていないのであれば、ゆっくり訴訟をやって、判決をもらい、仮にキャバ嬢が返済しなければ、その判決に基づいて強制執行すればいいだけです。

キャバ嬢としても、「財産を使い果たす」というのは、それなりの覚悟が必要です。

キャバ嬢も人生長いですから、そう簡単に全財産を使い果たそうとはしません。

そうすると、「保全の必要性」が認められるためには、使い果たそうとしていることが明らかな事情があるとか、財産を誰か知人に移転しようとしているとか、そういった具体的な事情が必要です。

持ち家があるのなら、その持ち家を売りに出している(売却情報が公開されている)とか、勤務先を退職したにもかかわらず金遣いが荒くなって、財産が目減りしていることが明らかであるとか、そういった事情を具体的に説明できなきゃいけません。

結局、「仮差押え」によって、訴訟の前に、キャバ嬢の財産を確保することは基本的に難しいと思います。

・財産の調査・特定

・保全の必要性

この双方をクリアして初めて仮差押えを裁判官は認めてくれます。

今日はこのへんにします。

それではまた明日!・・・↓

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