#117 借地借家法(難しいことは僕もよくわかりません!)-③

昨日のブログ(こちら)の続きです。

昨日は,メインの借地借家法の話からはかなーり脱線して,所有権の対抗要件について話しました。昨日は土地の二重譲渡を例に出して,お金を出して土地の所有権を手に入れたとしても,土地の「名義」という対抗要件を備えないと,他の人=後から買った人に所有権を主張することができない,ということをお話しました。

昨日の例では,古田が名義を変えないまま佐藤に土地を売ってお金をもらった後に,鈴木にも土地を売った場合,佐藤は,お金を払っているにもかかわらず,鈴木に対して所有権を主張できない,つまり,鈴木に対して,佐藤名義にするよう請求することはできない,ということでした。その理由は,佐藤が,「土地の名義」という対抗要件を備えていないからでしたね。

長々と対抗要件の話をしてきましたが,所有権に限らず,法律の世界では,権利と対抗要件は必ずセットなんですね。ずっと土地を例に出してきましたが,土地所有権だけでなく建物所有権も,対抗要件は名義です。単に「名義」と書いてきましたが,正確には「登記名義」です。もっと正確に言えば「不動産登記の権利部のうち甲区の権利者その他の事項欄に氏名・住所が記載されること」が対抗要件です。

ちょっと難しいですが,「不動産登記」とググってみてください。そうすると,不動産登記のサンプル画像が出てきます。その画像を見ると,上から「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」と,3つの欄があります。そして,「権利部(甲区)」の欄も,いくつかの欄に分かれていて,その一番右に「権利者その他の事項」という欄があります。その欄に所有権者の氏名・住所が記載することになっています。「権利者その他の事項」の欄に「所有者 〇〇(住所)〇〇(氏名)」という感じで,氏名と住所が記載されると,「名義が変わった」=「対抗要件を備えた」ということになります。

全然借地借家法の話に戻っていませんが,いよいよ戻ります。

繰り返しになりますが,権利と対抗要件は必ずセットです。「権利をどうやって取得するか(権利がどうやって発生するか)」と「その権利を誰に主張できるか・どうやったら他の人にも主張できるか」という2点をいつも考えなくちゃいけないということですね。

不動産の所有権の場合は,お金を払って所有権を取得することができるんだけれども,その所有権を他の人にも主張するためには,登記名義を変更する必要がある,ということでした。

じゃあ,この話と借地借家法がどう絡んでくるのか。実は,「借地」と「借家」も権利を発生させます。その名の通り「借地権」と「借家権」です。借地契約を結ぶと,借主には「借地権」という権利が生じ,借家契約を結ぶと,借主には「借家権」という権利が生じます。

なんか,難しいように見えますが,簡単です。

「借地契約」は,その名の通り,土地を借りる契約です。じゃあ,「土地を借りる」と,借りた人=借主は,土地を自由に使えるようになりますよね。契約で定めた使用目的(例えば,ビルを建てるとか,一戸建てを建てるとか)に従って,その土地を自由に使っていいわけです。当たり前ですが。その「契約で定めた使用目的に従って土地を自由に使える」ことを「借地権」と呼んでいるんですね。全然難しい話じゃない。土地を借りたらその土地は約束の範囲内で自由に使えるのは当たり前で,それを「借地権」と呼んでいるだけです。むしろ,借地契約は,借主からすれば,借地権を発生させるために結ぶものと言ってもいいでしょうね。

借家権も同じです。このブログを読んでいるあなたが,賃貸アパート・賃貸マンションに住んでいるならば,必ず借家権を取得しています。ここでいう「家」は,一軒家だけじゃなくて,アパートやマンションの1室,テナントビルの1区画も含むという話は既にしました。こういった「家」を借りる契約=借家契約を結ぶと,借主は,借りた「家」を自由に使えますよね(当たり前ですが)。この「借りた家(アパートやマンションの1室,テナントビルの1区画を含む)を自由に使えること」を「借家権」と呼んでいます。

ただ,アパートの1室を借りる場合,あんまり「借家契約」とは言わない気がします。別に「借家契約」でもいいんですが,普通は「建物賃貸借契約」と呼ぶような気がします。土地の場合も,「借地契約」でもいいんですが,「土地賃貸借契約」となっていることも結構あります。

借家契約(普通は「建物賃貸借契約」となっている)を結ぶと,借主には借家権が発生します。借地契約と同じです。

(あのー,「アパート」と「マンション」を一応区別して話していますが,特に区別する基準はありません(と僕は思っています)。アパートだろうがマンションだろうが,その1室であれば,「家」に含まれます。もちろん,アパートやマンションの建物全体も「家」です。)

ここまで説明したように,借地契約(土地賃貸借契約)は,借主に借地権という権利を発生させ,借家契約(建物賃貸借契約)は,借主に借家権という権利を発生させます。

「じゃあ,対抗要件はどうなるの?」という疑問が当然出てきますね。権利と対抗要件はセットですから。

その前に,そもそも,対抗要件を考える必要なんてあるのか?という疑問も浮かんできます。

確かに,二重譲渡と同じように,「二重借地契約」や「二重借家契約」なんてものも一応考えられます。でも,借地契約や借家契約って,「売って買って終わり!」という売買契約とは違って,毎月賃料を払って土地や建物を利用し続けるというものです。土地利用や建物利用が継続するのが「二重」というのは,まあほとんど考えられない。二重の土地利用や建物利用が継続するなんてことは,あり得ないですよね。

じゃあ,「権利を他の人に主張する」と言っても,借地権や借地権を主張しなきゃいけない「他の人」なんていないんじゃないの?とも思えます。

実は「他の人」は,貸主なんです。

「いやいやいや,自分で土地を貸した貸主が借地権を否定するなんて,そんなことはできないでしょ?」と思われるでしょうが,それは確かにそのとおりです。

ここで僕が言っているのは,「自分で貸した」貸主じゃありません。もちろん,自分で貸しておきながら,借地権・借家権を否定するなんてできません。だから,自分で貸した貸主に対しては,対抗要件なんて備えていなくても,借地権・借家権は主張できます。

じゃあ,「貸主」って誰だよ?という話になりますが,「貸主」というのは,「新しい貸主」です。

借主が借りている土地や建物が,売られちゃう場合もあります。なぜなら,借主は,あくまで借りているだけですから,貸主に所有権は残っているからです。その所有権をお金と引き換えに手放すのは,貸主の自由です。

そうなると,借地権・借家権は,新しい所有者に主張できるのでしょうか?

これが,借地権・借家権の対抗要件の問題です。

今日は時間がきましたので,ここまでにします。

それではまた明日


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