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性犯罪の損害賠償と消滅時効

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

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【 今日のトピック:消滅時効 】

弁護士の仕事をしていると、性犯罪の事案に直面することがそれなりにあります。

「めったにない」とは言えません。「しょっちゅう」とまでは言いませんが、「それなりに」性犯罪は起きています。

刑事弁護人として携わることが多いですが、被害者から加害者に対する損害賠償請求を受任したこともあります。

僕も経験豊富なわけではありませんが、弁護士が携わる性犯罪の多くは、刑事事件として立件され、なおかつ、民事的にも損害賠償を請求する事が多いです。

刑事事件として立件され、犯人に弁護人がついたら、その弁護人が示談交渉にあたり、被害者も被害回復できる、という流れが多いのかな、と思います。

真偽は定かではありませんが、被害弁償狙いで被害届を警察に提出する女性もいるとかいないとか・・・。

特に、17歳までの子ども(主に女の子)を相手にセックスしたり、その他エッチなことをしてしまうと、相手の子どもがそれを受け入れていたとしても(むしろ、相手の子どもから誘ってきたとしても)、犯罪が成立してしまいます。

青少年保護育成条例違反又は児童福祉法違反として犯罪になります。

だから、17歳以下の女の子を相手にエッチなことするのって本当に気をつけなきゃいけないんですが(18歳になっていれば、基本的に、暴行又は脅迫がないと性犯罪は成立しません。しかし、「脅迫」の程度は、かなり軽くても認められてしまいます。)、加害者目線の話はこれくらいにして、ここからは被害者視点の話です。

先ほどは、「被害弁償目当ての女の子もいる」なんてことを書いちゃいましたが、それは、そういったことが「できてしまう」というだけで、被害者が全員、そういった「被害弁償目当て」と言いたいわけではありません。

17歳以下だと、確かに、厳密には「被害」と言えない場合でも、加害者から、不起訴なり、減刑を求めて損害賠償の申し出があるのは事実です。

女の子がわいせつを受け入れていても、犯罪になってしまうわけですから。

ただ、こんなのはうがった見方です。人格が歪んでしまったせいで、こんなことを僕は考えてしまっています。

そもそも、被害を受けたのであれば、当然、被害弁償を受けるべきです。

しかし、被害者が、ただただ待っていれば被害弁償してもらえるかというと、必ずしもそうではありません。

加害者が罪を認めて、被害弁償して減刑してもらおうと思っていて、なおかつ、加害者に被害弁償できるだけのお金があれば、弁護人が示談を申し入れてきて、その弁護人が現金を持ってきてくれます。

現金ではなく、指定した口座にお金を振り込んでもらってもいいでしょう。

しかし、加害者が犯行を認めなければ、示談なんて申し入れてきません。

犯行を認めていない加害者からすれば、身に覚えがないわけですから、罪を認めて有罪判決なんてもらいたくありません。

被害弁償するいわれもないわけです。

こんな場合は、被害者の側からアクションを起こす必要があります。つまり、どれだけ待っていても1円も入ってこないので、加害者に対して、被害弁償を請求しなきゃいけないのです。

自分を傷つけた加害者に対して自分の口で被害弁償を請求するのは、文字通り「生理的に無理」ですから、弁護士を使うことになるでしょう。

そして、17歳以下というのは、同意していても犯罪が成立する点で、被害者にとって有利ではあるんですが、被害弁償することにフォーカスすると、17歳以下だからこそ、未成年なので、自分だけでは被害弁償を請求できないという大問題に直面します。

つまり、相手に被害弁償金を請求するにも、その前提として弁護士に依頼するにも、親権者の同意が必要なんです。

2022年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられるので、18歳になれば、自分だけの判断で弁護士に依頼することができますが、しかし、17歳まではやっぱり、親が同意していないと弁護士に依頼すらできないのです。

自分の子どもが性被害にあっていて、犯人がそれを認めていない場合に、被害弁償や弁護士への依頼を親が反対するなんて、普通はあり得ないんですが、そうなってしまう場面が実はあります。

それは、親自体が加害者だったり、他の家族が加害者だったりする場合です。

典型的なのは、父親が加害者で娘が被害者となる場合です。

この場合も、父親の代わりとなる「特別代理人」を選任することで、未成年である娘が弁護士に依頼できるようになるんですが、しかし、母親の立場を考えてみてください。

・娘は、被害を受けたと主張している

・夫は身に覚えがないと主張している

いったい、どっちを信じればいいのでしょうか。

被害弁償するために弁護士に依頼すれば、それは、娘を信じて夫を信じないことになります。

弁護士に依頼しないなら、それは、夫を信じて娘を信じないことになります。

考えるだけでも残酷ですが、そういった現実が、この日本で間違いなく起きています。

娘は未成年なので、親の協力が不可欠です。しかし、そのためには、少なくとも、母親が自分を信じてくれなければいけません。

父親の代わりとして特別代理人を選任できますが、母親の代わりは作れないからです。

しかし、信じてくれるかどうかは母親次第です。

そうすると、母親が信じてくれない限り、被害弁償を請求できません。

ただ、母親の考えも途中から変わる可能性が高いです。そのきっかけは、有罪判決です。

有罪判決が出れば、母親も、夫ではなく娘を信じるようになるでしょう。

これでめでたしめでたしかというとそうではなく、大きな問題があって、それは「時効」です。

性犯罪を理由に被害弁償を請求する場合、原則として、犯行の日から3年で時効となります。つまり、3年経ったら請求できなくなります。

しかし、刑事裁判は、加害者が罪を認めていないと、判決が出るまでに、犯行から1年や2年経過することもあります。

そんなこんなしていたら、時効期間が経過しちゃって、請求できなくなることもあるのです。

時効をストップさせるには、訴訟を提起する必要がありますが、最終的な訴訟提起が、犯行から3年経過後となることもあり得ます。

だって、母親からすれば、娘も夫も、大切な家族ですから、どちらかを信じてどちらかを裏切るなんて簡単な選択ではありません。

有罪判決が出て初めて、娘を信じられるようになるのも無理はなく、そうすると、刑事裁判が長引いた結果、訴訟提起が犯行から3年経過した後になっちゃうこともあります。

そんな場合、いろんな裁判例を見ると、時効期間3年のスタートを、犯行の日ではなく、有罪判決の日まで遅らせたりしています。

未成年の被害者とすれば、被害弁償の請求には親の協力が不可欠で、その親が、娘の言うことを鵜呑みにできない事情があるのなら、原則どおりに時効のスタート日を犯行の日とするのはよくないよね、というふうに考えられているようです。

今日は難しい話で、なおかつ、父親が娘に性被害を与えるというかなり残酷な事案を具体例に出しましたが、実際に起きてしまっているのは事実です。

時効と未成年の問題が絡んでいて難しいですが、こんなことを弁護士は考えていることがわかってもらえたら幸いです。

それではまた明日!・・・↓

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