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2023年4月27日から、イラナイ土地を国に押し付ける制度が始まります。

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、900日以上(ほぼ)毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

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【 今日のトピック:イラナイ土地 】

昨年(2021年)、こんな法律が可決成立しました↓

どんな法律かというと、法律名に書かれているとおり、相続等により取得した土地所有権を国庫へ帰属させる制度を始める法律です。

「国庫へ帰属させる」というのは、「国に渡す」ということです。

つまり、土地を日本国にあげちゃうわけです。せっかくの土地を、わざわざ国にあげちゃうというのは、ヘンテコな制度にも見えますが、需要はあります。

というか、めちゃくちゃ必要な制度です。

今、日本では、田舎を中心に、イラナイ土地が爆発的に増えています。

「土地なんて、持っているだけで損はないんだから、国にあげちゃわなくてもよくない?」と思う人もいらっしゃるでしょう。

でも、土地は持っているだけでは損します。残念ながら。

いちばんわかりやすいのは、固定資産税です。土地は、持っているだけで固定資産税がかかるので、損しちゃいます。

ただ、高額の固定資産税がかかるような土地は、利用価値もあるはずで、固定資産税に困ることはないと思います。

イラナイ土地は、固定資産税も安いか、もしくは固定資産税が課税されないこともあります。

じゃあ、固定資産税が課税されないなら、持っていていいかというと、そういうわけにもいきません。

というのも、土地所有者は、土地の管理責任があるからです。

土地の管理不足によって、誰かに被害を与えてしまった場合、土地所有者は、その損害を賠償しなければなりません。

これが、非常にリスクなんです。民法717条です。

第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

「土地の工作物」とは、土地上の建物が典型例です。

土地上の建物が老朽化して、瓦が落ちたり壁が倒れたりして、通行人がケガした場合、土地所有者が損害賠償責任を負ってしまいます。

それが、本当に大きなリスクです。

土地を所有することは、その土地の管理についても責任を負うことを意味します。

土地の価値があれば、こういった管理責任を引き受ける理由も立ちますが、土地に全然価値がないのに、管理責任だけ引き受けるのは割に合いません。

イヤ、本当に。

この「管理責任」は、相続争いを引き起こしてきました。いわば、土地の押し付け合いです。

無価値の土地をもらっても、管理責任がくっついてくるだけで、何も得しません。だから、共同相続人どうしで、イラナイ土地を押し付け合うのです。

誰かが引き取ってくれれば、押し付けあわなくても済むのですが、イラナイ土地を引き取ってくれる神様がいるはずもなく、結局誰かが土地を引き取らなければいけません。

どうしても話し合いができずに、相続分に応じて等分することもあります。

でも、来年の4月27日から、こんなイラナイ土地を、国に押し付けることができるようになります。

ただ、100%必ず押し付けられるわけではなく、法務局の承認が必要です。

イラナイ土地を相続してしまった人は、法務局に「承認してください!」と申請して、この申請を受けた法務局は、法律に書かれた要件を満たしていると判断したら、承認しなければなりません。

そして、法務局が承認したら、それで土地を押し付けられるかというと、そうではなくて、管理費用10年分相当の負担金を納付しなければなりません。

その負担金を納付して初めて、土地を押し付けることができます。その結果、土地の管理責任から解放されるのです。

まだ、負担金の金額がいくらになるのか決まっていないので、どれだけの負担金によって管理責任から解放されるのか不明です。

かなり高額の負担金になれば、押し付けるよりも持っておいた方がいいことにもなります。

ただ、「管理責任」といっても、無一文であれば、損害賠償を払うこともできません。

だったら、負担金を払うよりは、なーんにもせずに土地を放置するのも一理あります。

負担金を高額にすればするほど、土地を押し付けるハードルは高くなり、土地は放置され続けます。

放置された土地は、当然管理されませんから、その管理不足によって、誰かに被害が及ぶ可能性があります。

その土地が国の所有物となっていれば、被害者は国に対して損害賠償を請求すればいいですが、国の所有物とはなっていない場合は、土地所有者に損害賠償を請求するしかありません。

土地を放置しているような人が無一文であれば、泣き寝入りするしかありません。「天下無敵の無一文」です。

まあ、「天下無敵の無一文」は、この世界を裏から規律するルールなので、そこを恨むのはお門違いとも思います。

イラナイ土地を国に押し付ける制度は、やっぱり、土地所有者を、負担金と引き換えに管理責任から解放するための制度で、土地の管理不足によって被害を受けるかもしれない被害者を救済する制度ではありません。

一般市民としては、負担金はなるべく安いほうがもちろん利用しやすいのですが、あまりにも安いと、押し付けられる土地が増えまくり、国の管理責任が追いつかなくなってしまいます。

だから、ある程度高額の負担金が要求されるかもしれません。

だとしたら、「イラナイ土地を押し付けられるようになった」と言っても、絵に描いた餅かもしれません。

まあ、とにかく、実際に運用が始まるのを待つほかありません。使い勝手がいいなら、ぜひ利用してみたいと思います。

それではまた明日!・・・↓

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