#126 借地借家法(難しいことは僕もよくわかりません!)-⑫

昨日(こちら)の続きなんですが,だいぶ長くなってしまいましたね(笑)

まあ,自分の好きなだけ書けるのが,このブログの良いところなので,どうかお付き合いください。

さて,昨日は,借地借家法から少し離れて,家賃滞納しても「信頼関係がまだ破壊されていないのでは?」という事情があるのなら,立ち退かなくてもいい,という「信頼関係破壊の法理」について説明しました。

そして,家賃滞納が1ヶ月・2ヶ月くらいであれば,信頼関係がまだ破壊されていないと判断されることが多いということも説明しました。

とはいえ,いったん家賃の支払いをストップしてしまうと,家賃の滞納が毎月蓄積されることになるわけですから,そうやって家賃の滞納が膨らんでいけば,信頼関係が破壊されていないと認められる可能性はどんどん低くなるでしょう。

特に,今のような,コロナ騒動の先行きが不透明な状態では,いったん家賃の支払いをストップしてしまうと,ズルズル家賃滞納が蓄積される可能性もあります。

だから,家賃の支払いをストップする,ということではなく,大家さんと家賃の減額交渉をするという方針をとるべきと僕は考えています。そういった交渉プロセスもなく,家賃の支払いをストップしてしまうと,信頼関係破壊と判断されかねないリスクがあります。

で,ここからはちょっと法律から離れますが,僕の思想的には,信頼関係って,生きていく上でめちゃくちゃ大事です。僕が感銘を受けたアドラー心理学では,他人への信頼が,共同体感覚という幸福の形を実現するための前提条件になていますからね(詳しくは,こちら)。

もし,いきなり家賃の支払いをストップしたら,大家さんの信頼を裏切ることになります。当たり前ですが。大家さんはカンカンに怒るでしょうね。事前に何の相談もなく家賃の支払いをストップしたら。

だから,家賃の督促は受けますよ。手紙が届いたり,大家さん本人が訪問してきたり,大家さんが弁護士に依頼するかもしれません。大家さんが家賃支払いストップの情報をもらすかもしれません。だって,大家さんとしても,信頼を裏切った人から嫌われようと関係ないですからね。

自分が信頼関係を壊そうとしているなら,相手もそれに応えてきます。

自分を信頼しない相手を信頼する必要はないわけですから。

だからやっぱり,いきなりじゃなくって,事前交渉がありうると思うんです。で,交渉がまとまるまでの間,家賃の支払いをとどめおくとか,そういったことはできると思います。そういう信頼関係を維持しようとする努力を最初から放棄して,法律を振りかざすのはよくない。

世の中,法律に違反しなきゃ,何やってもいいのはそのとおりです。

法律が,僕らの行動指針になっていて,「法律に違反するかどうか」によって,僕らは行動を制御されています。

でも,じゃあ,「法律に違反しなきゃ何やっても良い」が自分自身の幸せにつながっているかというと,話は別なんです。法律に違反していないかもしれないが,信頼関係を破壊するのはよくない。それは,自身の幸せをぶち壊してしまうから。

まあ,言ってしまえば,「法律」というのが,生きる行動指針として正しくない場合もあるということなんですよね。

で,今日は,また借地借家法の話に戻るのですが,↑の信頼関係破壊の法理は,借地借家法とは違って,民法の話なんですね。家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除するというのは,民法の分野です。

しかし,賃貸借契約が終わる=立ち退きを求められるのは,家賃を滞納した場面だけじゃありませんよね。毎月毎月きちんと家賃を支払っていても,大家さんが立ち退きを求めてくることがあります。僕も,家賃を支払っている借主の立ち退きを求めるという依頼を受けたこともあります。

こういう,家賃を支払っている借主に立ち退きを求める場合に問題となるのが,「正当事由」というやつです。

ちょっと前提から説明しますね。ここでは,土地ではなく,建物の賃貸借契約を念頭に置きます。

さて,皆さん,マンションやアパートを借りるときに,賃貸借契約を結びましたよね(「契約を結ぶ」とは「契約書に印鑑を押す」と同じ意味です)。

で,その契約書に,契約期間が書いてありませんでしたか?アパートの賃貸借契約だと契約期間が2年間と書いてあるものが多いような気がします(僕もそうです)。

じゃあ,契約期間が2年間だとすると,2年後には出ていかなきゃいけないんでしょうか?

よく,「契約の更新」なんて言葉も聞きますよね。じゃあ,大家さんが契約を更新してくれなかったら,借りているアパートから立ち退かなきゃいけないんでしょうか?

これが,「正当事由」の話なんです。

実は,↑に書いたような話(契約期間が終了したら大家さんが契約を更新してくれない限り立ち退かなきゃいけない)は法律上間違いです(たまーに「定期借家」といって,契約期間が終わったら出ていかなきゃいけない契約もありますが,それは置いときます)。

というのも,契約期間が終了しても,大家さんの意向に関わらず,契約は更新されます。しかも,その期間は無期限です。

じゃあ,大家さんは契約を終わらせる=立ち退かせることができないのかというと,そうじゃなくて,「正当事由」があれば,大家さんは,契約を終わらせて立ち退かせることができます。

こういう風に,「正当事由」というのは,大家さんが契約を終わらせられるか=立ち退かせられるかどうかの分岐点となる,とっても重要な概念なんです。

今日は時間がきましたので,ここまでにします。

それではまた明日

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