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次元紀行 ④『言の葉の庭』(2013年)~新宿御苑~

「旅行は晴れの日に行くものだ」という考え方は、そろそろ捨てるべきかもしれない。雨の日だからこそ、行きたい場所がある。今回の新宿御苑はまさにそのような場所だ。

作品名は『言の葉の庭』。大ヒット作『君の名は』(2016年)から遡ること3年、新海誠監督が制作した劇場用アニメーション映画である。

【概要】新海誠が原作と監督と脚本を手掛け、繊細なタッチで描くアニメーション。現代の東京を舞台に、男子高校生と生きることに不器用な年上の女性の淡い恋の物語を丁寧に紡いでいく。万葉集や日本庭園などを題材に描かれる、情感豊かな映像に引き寄せられる。

靴職人を志す15歳の高校生タカオ(声・入野自由)は、雨が降るといつも学校をさぼって公園で靴のスケッチに熱中していた。そんなある日、彼は27歳のユキノ(声・花澤香菜)と出会い、雨の日だけの再会を繰り返しながらお互いに少しずつ打ち解けていく。タカオは心のよりどころを失ってしまったユキノのために、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作ろうと決心する。

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【記録】往訪歴は執筆時点で通算3回。最後に巡礼を果たしたのは2019年4月の雨の日のことだった。

作中の舞台となる「言の葉の庭」は、新宿御苑の内部に位置する。ちなみに新宿御苑は環境省所管の庭園であるため、内部拝観は有料となる(大人500円)。

「言の葉の庭」は、新宿御苑のほぼ中央に位置するため、どの入り口から入ってもあまり移動時間に差はない。この四阿を直接探し出すことは困難なため、初心者には劇中にも登場する旧御涼亭(通称:台湾閣)をまずは目指していただきたい。

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写真右手の建物が旧御涼亭(通称:台湾閣)である。これと池を挟んで対面するように、目的地の四阿は存在するため、旧御涼亭(通称:台湾閣)から池の外周をなぞるように歩を進めていただければ無難に到着できると思う。

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目的地の四阿に到着した。ちなみにこのルートは劇中ではタカオが用いるルートである。そのため今回はタカオの位置に着席した。

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位置関係がお分かりいただけるだろうか?

劇中、ユキノは問う。「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨もふらぬか 君を留めむ」

逢瀬を重ねるうち、タカオは答えを返す「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて ふらずとも 吾は留らむ 妹し留めば」

いずれも『万葉集』からの引用である。

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しばらくベンチに腰掛け、各シーンを振り返っていると、どこからともなく声なき声の歌が聴こえてくるように感じた―「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨もふらぬか 君を留めむ」―あの『万葉集』だ。

当然、返答はひとつしかない―「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて ふらずとも 吾は留らむ 妹し留めば」

都心の中心にある緑豊かな土地、ここで恋より前の「孤悲」を五感で感じ取ってみてはいかがだろうか?

※註:劇中では公園内での飲酒のシーンがありますが、新宿御苑での飲酒行為は禁止されていますのでご遠慮ください。聖地巡礼はマナーを守って。

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【おまけ】『君の名は』(2016年)で、終盤、瀧(声・神木隆之介)と三葉(声・上白石萌音)がすれ違った歩道橋。この時はお互いの存在に気付かなかった。新宿区某所。

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