千億祥也 叙事詩『不思議な手紙』より 第４部 ❝μουσική❞（抜粋）

　初めに読むこと【noteに投稿する私の記事等の著作物の閲覧・引用及び利用・実践等の注意事項】（2023年5月25日更新）　

　❝γνῶθι σεαυτόν❞


 　デルポイの神託ですか？

　私の余計な問い掛けに ヌートは不機嫌に沈黙した
　その鬱ふさぎ込んだ頑なな沈黙に 私も少し不機嫌になって
　強い口調で 言葉を投げ掛けた

　貴女あなたはこんな所で一体 何をしているのですか？

　ヌートは私の問い掛けに応える様子もなく
　穏やかに『セイキロスのスコリオン』
　～ 不滅の記憶の証 ～ を詠うたい始めた

Ὅσον ζῇς φαίνου
μηδὲν ὅλως σὺ λυποῦ·
πρὸς ὀλίγον ἐστὶ τὸ ζῆν
τὸ τέλος ὁ χρόνος ἀπαιτεῖ.

生きている幸せがある限り
想い悩むのを辞めた
そして 今 この時を
束の間にも輝き続けた
命いのちが自然に終わる その日まで

　傍らでヌートを守護していた数名の天使のひとりが
　こうした光景を視みて怯えている
　急いで その場の険悪な空気を打ち壊そうと
　静かに 私へ語り掛けてきた

　この娘こは
　大変 優しいプリンセス なのですが
　試練に立ち向かうことを好みません
　どうか 神々の意図だけを汲み取って下さい
　愛が不毛な時代には
　古いにしえの預言者たちが教えた
　三つの徳が 亡うしなわれると云います
　ですから 私たちは サナトリエの降臨を 願っているのです

　…… それは 素晴らしい！　
　であれば μοῦσα の音楽を 使いましょう
　今は 神託よりも こちらの方が この場に相応ふさわしいでしょう

　私は そう云って Οὐρανία の聖杖を振り揚あげて
　サナトリエ 降臨の召喚術  ❝INVITATION❞ に取り掛かった

深夜
多くの生き物たちが
眠りに入る時
休みなく 胎動している
宇宙がある

目覚めた宇宙が
ここに在り
目覚めた心が
この静けさを破る

人の焦燥や憂いに
突き動かされている 時間の流れを止めて
あなたに晤あいたいと思った

あの時 以来　
私の躰からだを斡めぐっている 光輪こうりんが
七色の虹を創って
聖なる世界へと 導かれていく

天空の星にも
地上の掟おきてにも
逆らえない私の小さな命を
あなたは認めてくれたのだ

🤩 以下、続きは2025年公開予定！　お楽しみに～

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