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令和の歳時記 ミヤマクワガタ

ミヤマクワガタとノコギリクワガタの住み分けが面白い

ミヤマクワガタは体長70ミリを越える大きなクワガタである。日本のクワガタムシの中でオオクワガタについで大きい。その名の由来は“深山”に生息するクワガタとして名付けられた。

私が育った田舎にはこのクワガタが非常に多かった。逆に低山性のノコギリクワガタは少なかった。早朝、山の樹木やホテルなどの街灯の下を見回ると案外簡単に見つけられるクワガタだった。ノコギリクワガタはひと夏に一匹見つけられるかどうかで、「我れ先に」を争うように探した。

ミヤマクワガタ1


大学生になって都市へ出て、知り合った友だちの多くはノコギリクワガタよりもミヤマクワガタを捕まえることに重きをおいていたことである。わたしとは逆だったのだ。
同時に生き物の生息場所と生き残るための知恵があることに気がつかされた。
しかも両者は自然に住み分けを作り、クワガタファンも分けている。

ミヤマクワガタのカニの甲羅のような頭部の魅力は?

ノコギリクワガタの美しくて柔らかい流線型に対して、ミヤマは強くて頑丈な男性だ。さらに荘厳な建造物を彷彿させる(ちなみにわたしのミヤマのイメージはダムになる)

ミヤマの最大の魅力は頭部にあるカニの甲羅を彷佛させる四角い形状だ。この形状こそが都市の子どもたちの憧れの的なのだ。そして虫好きには便利すぎる形でもある。

大抵、頭部を左右から指で掴んで捕まえるからだ。進化の過程で人間のことをお忘れになったのでしょうか?と質問したくなるほどフィット感がある。
でも「なぜこのような形が出来たのか?」疑問に思う。一説によると、メスを巡る決闘の際、固い頭部で相手の攻撃を最小限に抑えるための防御手段として用いられるらしい。

私もミヤマクワガタ同士が決闘している光景を何度が見た事がある。頭部の四角い形状は相手のアゴが食い込むことなく、なおかつ、その形状をテコの原理を利用して相手を吹っ飛ばす最大の防御であり、また最大の攻撃の武器になるのだなあと感心した。

ミヤマクワガタ3


ミヤマクワガタが「緑のダム」である森の“守り神”となってくれることを祈る

ミヤマクワガタは他のクワガタよりとても戦闘的なクワガタである。時にはカブトムシに戦いを挑んで巧みにアゴを使い投げ飛ばす姿を見て、何と勇敢なクワガタだろうと感動すら覚える。
メスの方はアゴが短く、戦闘能力はない。ただ、気に入らないオスが来ると、交尾を拒み、時には短いアゴでオスの脚を切り落としたりする。メスはメスなりに子孫繁栄のためより強くて大きいオスを選んでいるのだろう。
 
このミヤマクワガタは夏の始まりに現れる。7月の初頭から遅くても8月の初頭までである。それ以降は中々お目にかかれない。
幼虫期は朽ち木の中で何年も過ごすが成虫は一年生である。短い夏の“深山”でこのクワガタに出会うことが難しくなってきた。
地球温暖化、森林減少、さらに異常気象に見舞われてる昨今である。わたしの稚拙なお願いで恥ずかしいが、「緑のダム」である森の“守り神”となってくれることを祈らずにはいられない。

ミヤマクワガタ2


分布●北海道・本州・四国・九州、樺太

生息地●標高の高い山間部

繁殖期●6~8月

大きさ●オスの体長は22.9 - 78.6mm メスの体長は25 - 48.8mm
学名●Lucanus maculifemoratus(Motschulsky, 1861)

和名●ミヤマクワガタ

英名●Miyama Stag Beetle

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