令和の歳時記 ゲンジホタル
ゲンジホタル
地球上で一番繁栄している生物は虫であると言われている。数百万、あるいは数千万種類はいるだろうと算出されており、しかも日々新種が発見されている。そして、あらゆる虫の中でこれほどドラマティックに人生を謳歌する昆虫はホタル以外ない。水、陸、空へと、その変態の場所を変えていくからだ。
世界中にホタルの仲間は数百種類はいる。しかし、日本に生息するゲンジボタルとヘイケホタルは幼虫期、水中で過ごす特異な生態を知っているだろうか。これは学術的にもとても重宝されている。
さて、このゲンジボタルは6月の始めの蒸し暑い夜空を乱舞する。それはまさにエメラルドグリーンンの宝石だ。大きなメスは葉影でジッとオスを待つ。
こんなことわざがある。“鳴かぬホタルが身をこがす”いわゆるホタルはセミのように音を出してコミュニケーションするのではく、じっと光りを放ちオスを待っているのだ。口に出して言わない者のほうが、信念が強いという意味である。まさに日本の大和撫子ではないか!
私は子供の頃からホタルのクリスマスツリーを見るのが夢であった。そこで数匹のメスを集め1本に枝に止まらせてオスがやって来るのを待った。
案の定、オスはメスの放つか細い光に吸い寄せられて沢山集まって来る。最初こそは不規則に点滅していたが、そのうちオスの出す光が同時に輝き始めるではないか!それは我こそは一番の光りを放つホタルだ!と言いたげである。夏のツリーは冬のそれと違って、自然のため息の如く“儚い”明滅をくり返した。
メスは当然、一番強い光りを放つオスと交尾する。強い子孫を残そうとする本能である。
ホタルの名前の由来は“火垂る”から来ている。星が空から垂れてきたように見えるからだそうだ。
近年、町のレストランなどの催しでホタルを放しビールを飲みながら、ホタル狩りを楽しむ人たちがいる。そこは「てんやわんや」の大騒ぎで盛り上がっていることが多い。わたし自身は、やはり本来の生息地を訪れ、星で飾られた夜の静寂に包まれつつ、ホタルのごとく黙って夏の到来を楽しみたいものだ。
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