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【小説】生かされているということvol.1


AEDが作動する音が2回鳴り響いた。




2020年6月8日(月)4時49分 妻の異変で目が覚める。


コロナ禍でステイホームから少し日常に戻りつつある矢先のことであった。

「ふしゅー ふしゅー」と異常な音。

私は目が覚め、音の先を見つめる。音源は妻。

すぐにメガネをかけた。私の目は両眼0.08。メガネがないとほとんどぼやける。

ようやくはっきり見えた妻の目は、半分開き上を見つめ、いびきをかいていた。ふざけているのか?と思った。ひょうきんな妻で人を笑わせることも多いからだ。

呼びかけてみる。


「ちはる」



しかし、返事はない。

体を揺さぶり起こすが、やはり起きない。



私の声で横で寝ていた3歳の子どもが起きる。

二人で呼びかけてみる。

「ちはる!!」「ママ!!」








起きない。ここまでで約30秒経過。




いびきではなく、呼吸音のようだ。それもだんだんその間隔が長くなってきている。



おかしい!


パニックになりながらも、なんとか119に電話をした。


「火事ですか」「救急ですか」

落ち着いた口調で話される職員の方に、少し落ち着きを取り戻した私は、何とか状況を伝えた。この時点ですでに1分以上は経過。ゆっくりした口調にもどかしさを感じながらも、焦る気持ちを抑えて、冷静に。


「呼吸の際に、お腹は上下しますか?」


「…………」



「いいえ、していません」



もうすでに涙声となっている。



「心肺停止が疑われます。固い床に下して心肺蘇生をしてください。」




重い。体重は50kgもない妻がこれほどまでに重いのか。



布団から固い床に下すだけでも一苦労。


床に下したことを報告すると、再び指示が。


「30回心臓マッサージ、2回人口呼吸を繰り返してください」

それは、4時52分のことだった。

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