脂肪由来間葉系幹細胞について
当院で受けていたくことが可能な再生医療は大きく分けて2つあります。
血液から抽出したPRPを使用する方法と、脂肪を採取しその中に含まれている幹細胞を使用する方法です。今回は幹細胞に関するお話をしたいと思います。
幹細胞にはいくつかの種類があります。
それは元々私たちの体の中に存在している「体性幹細胞」と、受精卵から作られる「ES細胞」、そして人工的に作成される「iPS細胞」です。
「ES細胞」と「iPS細胞」はあらゆる組織や臓器に分化することが出来る細胞で、多能性幹細胞と呼ばれています。
「ES細胞」は受精卵から作成するため、実際に人間に使用する際には倫理的な壁が高く、あまり現実的ではありません。一方、「iPS細胞」はリプログラミング因子と言われる特定の因子を使用し、人工的に作り出すことに成功した細胞です。ES細胞と異なり、実臨床において使用することに関しては倫理的な問題はありません。しかし、あらゆる組織への分化が可能なため、意図しない細胞への分化や癌化といったリスクが懸念されています。
「体性幹細胞」は前述のES細胞やiPS細胞ほどの高い分化能は持ち合わせていませんが、いくつかの細胞へ分化する能力を有しています。また他の細胞と比較して使用するのに倫理的なハードルも低く、将来的な未知の細胞への分化といった心配もなく安全性も極めて高いため、再生医療の現場では扱いやすい細胞と言えます。
なぜ体性幹細胞なのでしょう?
「体性幹細胞」にはいくつかの種類があり、その代表的なものに「間葉系幹細胞」があります。現在、「間葉系幹細胞」は脂肪に最も多く含まれていることが様々な研究で分かっており、脂肪から取り出した「間葉系幹細胞」を培養し病気の治療に用いることが出来るようになってきました。
当山美容形成外科では患者様から米粒2個程度の脂肪と血液を採取し、特殊な技術で5000万〜1億個程度まで患者様の幹細胞を増やします。その増やした幹細胞を様々な疾患の治療に使用しています。ではどうして自分の幹細胞を使用することで治療が可能なのでしょうか?
幹細胞が組織を修復するメカニズムについてはいくつかの説があります。
その一つが「homing(ホーミング)」と言われる特殊な能力です。これは細胞自体が自分の身体の傷んだ部分を察知し、そこに集積する能力のことです。その際にそこに集積した細胞が特殊なタンパク質を放出し、組織の修復の一躍を担っていることが分かってきました。そのタンパク質の正体がエクソソームです。幹細胞を投与することで、このエクソソームと言われる特殊なタンパク質を損傷部位に供給し続けることが細胞治療のカギだと言われています。
このエクソソームの話はまた次回以降にしましょう。
当山美容形成外科では、
「皮膚の加齢性変化」「脳梗塞後遺症」「変形性膝関節症」「難治性アトピー性皮膚炎」に対して脂肪由来間葉系幹細胞を用いた再生医療が受けられます。皮膚の加齢性変化と変形性膝関節症は局所投与で、脳梗塞後遺症と難治性アトピー性皮膚炎は点滴での治療になります。
どの治療も根本的な治療法が無く、困っている人が多いのが特徴です。
これらの疾患も再生医療で全てが解決する訳では無いのですが、ある程度の改善が見込める方もいらっしゃいます。
治療において最も大切なことは適応を最初に見極めることだと思っています。そして再生医療だけでなく、いくつかの治療方法を組み合わせることで、より効果が出やすい場合もあります。
私たちは安心・安全で効果的な再生医療の発展のために日々努力しています。