tetsunosuke yoshida

80歳を境にリタイアした老ジャーナリストです。『note』では私の父が、昭和25年以降…

tetsunosuke yoshida

80歳を境にリタイアした老ジャーナリストです。『note』では私の父が、昭和25年以降、新聞に連載したコラム『あまのじゃく』を復刻して、令和の皆様にご覧頂きたいと思います。『昭和』と『令和』70年の歳月がどれだけの進歩と退化をしているか、ご考察のよすがになるかと思います。

最近の記事

印刷屋で食える域

コラム『あまのじゃく』1963/11/30 発行 文化新聞 No. 4632 家族一丸となっての会社経営     主幹 吉 田 金 八  この頃、『あまのじゃく』を書くのが相当骨折りである。ひと頃は新聞記事を書いたり、ひとさまの上げ下ろしがいくら書いても書ききれぬほど、次から次へと構想が浮かんで、「屁のような記者はいらない。君たちは汽車でなく新聞トロッコだ」と若い者を叱ったりしても、誰もろくな記事がない時には、全紙面を一人で埋める気概があったものだが、この頃はサッパリ

    • 飲み屋善哉

      コラム『あまのじゃく』1963/11/29 発行 文化新聞 No. 4631 二百軒余の飲み屋を繁盛させよう!     主幹 吉 田 金 八  ある商店の若主人が「文化さん、ちょっと頼みがある」と人前では言い憎くそうな様子で私を物陰に呼んだ。  「何事かならん」と聞いてみたら、夜、東京に飲みに行く時使う自動車を貸して貰えないかと言うのである。  そこの店には何台も自動車があるのだが、親父や店の者の手前があるから使いにくいと言うのである。  その店というのは土地の生

      • 紙大尽、設備大尽

        コラム『あまのじゃく』1963/11/28 発行 文化新聞 No. 4630 少数精鋭で効率的な会社運営     主幹 吉 田 金 八  埼玉銀行に勤めている人に聞いたが、同行では今年500人の新しい行員を採用する方針で、しかも昔のように「銀行員が高校新卒者の一番の人気があった時代と違う、座っていて志望者の中から選抜する時代を過ぎて、各支店に一般募集用の大きなビラが届けられて、掲示してPRする」のだという。  女子行員が多くなって、しかもそれが結婚のため300人も新陳代

        • ケネディ・ショックの教えるもの

          コラム『あまのじゃく』1963/11/27 発行 文化新聞 No. 4629 どこまで波及、ケネディショック     主幹 吉 田 金 八  ケネディ・ショックによる日本株式市場の暴落は、この事件が2日続きの休日という緩衝的役割があったにも拘わらず、市場開設以来5番目という大幅の下げ幅を見せ、全国から寄せられた売り物殺到で、まるで蜂の巣をつついたような状態であったという。  36年4月にダウ平均1,800円だったものが、2回にわたるケネディに関連する事件、その他で下

        印刷屋で食える域

          続くビッグニュース

          コラム『あまのじゃく』1963/11/26 発行 文化新聞 No. 4628 ひと昔前の暗黒時代が現実に…     主幹 吉 田 金 八  ケネディ大統領を狙撃した犯人がまた一人の暴漢のために留置所から別のところに移送する際、銃撃されて死んでしまった、という事件が25日朝報ぜられた。  とっさに考えられることは、最初の犯人が右翼か、左翼か知らないが、政治的意図のためにケネディを倒すことを頼まれた殺し屋であって、これが捕まって背後関係が割れることを恐れて、別の殺し屋を

          続くビッグニュース

          ケネディの暗殺

          コラム『あまのじゃく』1963/11/24 発行 文化新聞 No. 4627 世界経済への影響が心配!     主幹 吉 田 金 八  アメリカでケネディ大統領が暗殺されるという忌まわしい事件が起こって、総選挙の結末で沸いている日本人の頭に冷水三斗の思いを与えた。  日本の総選挙結果は自民、社会、両党とも減ったと言っても、僅々1名かそこらの数で、民社の意外な躍進、共産党の議席が5名になったと言っても、それは体制に影響するほどでなく、極めて無難な平凡な結末であった。  

          ケネディの暗殺

          近づく投票日

          コラム『あまのじゃく』1963/11/17 発行 文化新聞 No. 4621 身近でない選挙‥‥関心薄い     主幹 吉 田 金 八  名分のない国会解散、 争点のない衆議院選挙だと言われているせいか、今度の選挙は誠に気乗らない。  特に飯能地方は身近い候補者がいないせいか誠に低調で、稀には候補者の宣伝カーが来ないでもないが、流して歩く方も気乗らない相手では張り合いがないと見えて、意気込みがなっていないようである。  もっとも、ポスターが公営の掲示板以外貼る事が出来

          功罪物価論議

          コラム『あまのじゃく』1963/10/31 発行 文化新聞 No. 4606 自民インフレ政策に軍配 ⁈     主幹 吉 田 金 八  今度の総選挙の与野党の攻防の焦点は物価問題にありと言われる。  池田総理は「収入が増えたのだから、手直し的に多少の物価値上がりは仕方があるまい」と言う。  私も何日か前、この欄で総理大臣の主張を支持したようなことを書いた。しかし、これに対する野党の攻撃は「所得倍増は掛け声だけで、所得の増える前に物価の方は先回りして高くなった。自民党

          大野伴睦特使に添えて

          コラム『あまのじゃく』1963/10/30 発行 文化新聞 No. 4605 忌わしい過去の日本を許して‥     主幹 吉 田 金 八  日本が中共と経済国交を回復するための口火としてピニロンプラントの延べ払い輸出を許可したことに対して、台湾国民政府がご機嫌を悪くして、放置すれば何かと将来の親善に都合が悪い。  そこで今度自民党の副総裁大野伴睦氏を池田総理の特使として蒋介石総統の誕生日祝いに31日訪問させる事になったようである。  貿易ということは個人の取引と同じ

          大野伴睦特使に添えて

          いやな感じ

          コラム『あまのじゃく』1963/10/28 発行 文化新聞 No. 4604 高貴な家系の知られざる悩み     主幹 吉 田 金 八  天皇家第五女から島津家へ嫁がれた貴子さんを誘拐して、身代金5千万円を脅し取ろうとした一味が、事件の末恐ろしさから怖じ気をふるい、脱落した仲間の一人の自首から未然に発覚して主犯人等は逮捕された。  このことを新聞で見て、「日本も外国映画並みになったもんだ」と、今更に最近のニセ札、草加次郎事件など、次々とたまげるような事件の続発に感慨を

          思わざる波紋

          コラム『あまのじゃく』1963/10/27 発行 文化新聞 No. 4603 本人の意思を無視、周りが騒ぐ‥     主幹 吉 田 金 八  問題となった市川宗貞氏の代議士選出馬は本人の不出馬表明で周囲の空騒ぎに終わった。  「おどかすではないか」と、既に一応網を張ったつもりの各派は腹を立てたり、安堵の胸をなでおろしたり、二区全体とすれば局地のアダ波であったとしても、飯能地方が各候補にとって絶好の草刈り場であっただけに、与えた影響は大きかったようである。  しかし、この

          政党の気迫

          コラム『あまのじゃく』1963/10/26 発行 文化新聞 No. 4602 二大政党と言うけれど‥物足らぬ社会党     主幹 吉 田 金 八   いよいよ国会議員選挙である。  各党とも必勝の意気に燃えて、自信のある候補者を押さえて、戦列を整えつつあるがその戦績や如何。  解散の日の衆議院における各党代表の総理大臣に対する質問演説(というより)総選挙に対する自党の宣伝演説を聞いた。社会党の勝間田質問の堂々さには取敢えず感心したが、これに応酬する池田首相の答弁は、実績

          モチ屋組合の公認

          コラム『あまのじゃく』1963/10/25 発行 文化新聞 No. 4601 選挙民に喜ばれるモチは?     主幹 吉 田 金 八  いよいよ選挙戦線に突入した。  伝えられる顔振れによると、第2区における立候補者は、社会党平岡忠次郎、民社党長谷川勉、共産党牛窪宗吉の諸革新は毎回のなじみの顔で、いずれも1党1名の公認であり、それぞれの党においてもその党内においては一人では喧嘩も競争もない訳である。  これに対して自民党はさすが時の天下の与党である事ばかりでなしに、

          モチ屋組合の公認

          大根畑は花ざかり

          コラム『あまのじゃく』1963/10/23 発行 文化新聞 No. 4599 大根、さつま、ウリ‥‥の満艦飾     主幹 吉 田 金 八  解散が本決まりとなったとなると、選挙民は他人事のように思っていた候補者について、多少は切実に考え出してくる。  すでに1年も前から、天から降ったか地から湧いたかの如く何人かの候補者が現れて、いみじくも哀しき事前運動を展開して、すでに上層の網の目は曲がりなりにも整った観がある。  そのいずれもが『腹は借り物』式の腰掛け式、踏み台

          大根畑は花ざかり

          労働者天国

          コラム『あまのじゃく』1963/10/22 発行 文化新聞 No. 4598 自民党の出鱈目、社会党の屁理屈     主幹 吉 田 金 八  今度の総選挙の与野党の対決の題目は『自民党政策によってもたらされた現在の日本産業界の前古未曾有の繁栄が好ましいか、好ましくないか』というにあると思う。  池田自民党は『この景気はもっと良くなり、所得倍増は予定の10年より1、2年早く達成出来、物価値上がりはあと1、2年で解決される』と、この繁栄はまだ序幕であり、まだもっと所得

          事前運動は公然と

          コラム『あまのじゃく』1963/10/20 発行 文化新聞 No. 4597 現実実的でない選挙違反事例     主幹 吉 田 金 八  いよいよ国会も解散である。 すでに解散を前に代議士連中も国会審議は上の空で、心は選挙区に飛び、浮き足立っていると言う、さもありなんの風景である。  11月下旬もしくは12月初めの総選挙はすでに予定されたところで、これに当選すれば4ヶ年の間30万円の月給は保証され、有形無形の特典にありつけるが、この総選挙に落ちるようなことがあれば、現

          事前運動は公然と