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こちらの「普通」あちらの「普通」
平凡な派遣社員であると前述した私。
それは昼間の仮の姿??でして。
夜は、とある厨房でアルバイトをしております。
料理だけで食えたらいいが、そこまでの腕はないことを自覚している者の生活スタイルがこの形になっただけなので、もはやどれが仮の姿かは分からなくなっている、というのが本当のところ。
うるう日の夜、カウンターに立つ私に厨房からまっしぐらに向かってきた料理人の大先輩(=60前半のおじさん。私周辺はおじさん率が高い)。
厨房から料理をもってきてくれた!…と思ったら手ぶらだったけど、おじさんが私をまっすぐ見て言う。
「大谷翔平、結婚したよ・・・」
語尾の「・・・」は少し吐息まじりで、おじさんの心のざわつきを感じる。
ちょっと狼狽気味に、でも速報を一番に私に届けた満足感を携えながら
また厨房に引っ込んでいくおじさんの背中を見ながら、
速報を聞いた私も少し茫然とする。
「え、まじニュースですか?」
「お、お相手は誰ですか??」
「芦田愛菜ちゃん???」←まだ19歳…。
頭の中がぐるぐるするので、持ってきてくれると期待していた料理を取りに行く、というスタンス風に今度は私が厨房へ!
と、他の料理人たち(=もちろんみんなおじさん)が私を見てすぐさま言ってくる。
「おい、大谷翔平、結婚したぞ・・・」←もう、知っています。
それにしても全員、言い方がもう
「おい、店長今朝亡くなったぞ・・・」
くらいの神妙さ。(笑)
事件?の大きさを思わせる。
10年1000億円超えの報酬を得た男の伴侶となれば、そう、それは確かに事件。
相手が誰かは分からない、とのことだったが
日米の興味関心度と監視の目はもう捜査本部を立ち上げているに違いなく、
さっさと犯人(いえ、嫁です。)を突き止めるはずだ!!ということで、
閉店までには分かるだろう、との予測でみんな仕事に戻ったけれど結局その夜は分からなかった。
帰りの駅のホームで、1人まだそのザワつきの余韻を感じながら、ふと気づく。
“ま、分かったところで、私には1銭も入らないんだよなー”
急に、振り切りそうだった関心バロメーターが急降下。
その瞬間からは必然的に耳に目に入ってきた情報だけ「ふ~ん」となんとなく取り込んだ。
そして翌日。雑誌「Number」のオンライン記事。
語る語る。大谷翔平。
もう、この人のこういう全て計算ずくのメディア対応もあっぱれだ。
みんなのある種狂ったような「知りたい!」を掻き立てておいて、すぐ満たしてくる。
しかもちょっとだけ。3割くらい。
お腹が空きすぎていた我々は、その3割を8割くらいに受け取ってしまい
「そーかそーか、そーゆーことだったのか!ちゃんと話してくれてありがとう、翔平!!」
と5割増しくらいで褒め称えてしまう。
でも待て。みんな落ち着け。
やつは何も吐いてないぞ(笑)
やっぱり嫁は分からない!
手がかりは…
「いたって普通の人というか、普通の日本人です」
ん?普通オン普通??
つまりスゲー「普通」てことじゃない??
【普通】名:ふつう
ごくありふれていること。またそのさま。並み。
ほかにも。
「彼女曰く『すれ違いざまに挨拶してくれた』と言うんですけど、僕はそれがどこなのか思い出せない。練習施設の中の廊下だって…。」
ほほう。あなたと同じ練習施設て。
一般ピーポーが入れないところ。
トレセンか特別なジムでしかないじゃない。
もう特別じゃん!「普通」じゃない!!
幼い頃からずっと意味が確信できないキーワード。
それが
普通。
幼なじみのミナちゃんのおうちではいつも15時におやつが出た。
ミナちゃんちてすごいなー、と言う私に
ミナちゃん「普通は3時におやつを食べるんだよ」
つれづれ「へー…」
鍵っ子はおやつの時間なんて知らなかった。
羨望のまなざしのままおやつをいただいた。
中学に通い始めた時、学生カバンとスポーツバッグを片手で持って歩いていたら
怯えた顔のミナちゃんに話しかけられた。
ミナちゃん「片手持ちすると先輩に目をつけられるよ。両手持ちが普通なんだよ」
つれづれ「へー…」
そんな常識ある?と腑に落ちなかったので、そのまま通学したら、先輩に呼び出されてボコられた。
「普通」て、なんだ??
オトナになるにつれほんのり分かってくる。
社会人2年目、仲良くなった同期のめちゃくちゃ可愛いハナちゃんが言った。
ハナちゃん「自宅でトイレする時はドア開けぱなしが普通だよ」
つれづれ「へー…」
実家住まいの素直で可愛い一人っ子の彼女にはそのまま育って欲しいから。
「それはきっと普通じゃないよ…」と私からは言わなかった。
つれづれ家では幼少期より、オナラをトイレ以外ですると、それを聞いた人全員に100円ずつ払わなければならないシステムがあった。
すごくクサイと割り増しまで取られた。
年越しは朝までずっと家族でマージャンだ。
パパママ呼びしているのに、寝る時だけは「お父さんお母さんおやすみなさい」と言わなければいけなかった。
これらのシステムや慣習は、きっと私以外の人の「普通」ではないだろう。
そう、みんな知っている。
世の中に同じものさしの「普通」なんて無い。
さらに、かの大谷翔平くんの言う「普通」には
万人受けする「普通」なんてきっとコレっぽっちもないのだ!!!!!!
彼の「普通」は、多くの人類にとって「特別世界」だろう。
「普通」て千差万別。
誰かの「普通」は私の「特別」だったり、
私の「普通」が誰かの「摩訶不思議」だったり。
使い勝手良さそうで、10年1,000億超えが使うにはとっても使い勝手の悪い言葉かもしれない。
ま、そんなこんなで特別世界の特別女子に心当たりはなく、詮索はあきらめた。
何が言いたいかと言うと、大谷翔平とパートナーがとにかく幸せになって欲しいな、てこと。
…ということにしておきたいが。
察しの良いみなさんはお気付きだろう。
ただの普通人のふつうーーーのやっかみです。笑
さ、今日もバイトだ。
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