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#創作怪談昔ばなし
ぼた餅ァいらんかえ(3)
痛みなんぞは怖さで忘れてしまった だが
走る喜左衛門の姿を見る佐一の眼球は怒りと悲しみをたたえながら息たえた
喜左衛門はその晩は眠れず 江戸に帰った後も役宅で魘され続けたのだ ある時 役宅の仲間内で酒をのもうと言って幾人かで集まった
その時は同じ仲間の妻女が拵えたぼた餅が振る舞われた 喜左衛門は酒に酔っていたのか ぼた餅をかるく齧ったとき ぼた餅の中から真っ赤な血が滴り落ちた 仲間も目を丸く
ぼた餅ァいらんかえ(2)
作ったぼた餅が全く売れず佐一はため息をついて帰ろうかと思ったとき
旅の武士で 名を喜左衛門と言った男がまとめて買い上げた 喜左衛門は着いた旅籠でぼた餅を
ムシャムシャと食べたが 一時ほどすると
豆が悪かったからか腹持ちがあまり良くなかったのか腹が痛みだした 腹の痛みと悪いものを食わせたぼた餅売りを許せなかった喜左衛門は
村の外れに住んでいた佐一を呼びつけ
激怒し 餅の代金を返せと言ったが
創作怪談昔ばなし ぼた餅ァいらんかえ (1)
昔 江戸も中頃に差し掛かった頃 ある村の入り口で ぼた餅売りの佐一が旅ゆく人々に声をかけていた
ぼたー餅ァーいらんかえー
ぼたー餅ァーいらんかえーと
味は小豆の味が濃く なんとも甘い味付けで
旅の人々は喜んで買っていった だがいつまでも良いことは続かず 不作の年が続き質の悪い小豆ばかりしか使えなくなってしまった 佐一も
食わねばならない 作りはしたが味の不味さを知ってしまった故か誰も見向