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遺言1

人間いつか死ぬ。

湧き水を汲んできた。
そして家に入り時計を見ると午後3時30分。

ふと思う。
「どうせ死ぬんだ。何を悩んでいたのだろう」
「この悩みはどこから来たのだろう」

土日にまとめてポストを見ることにしている。
毎日毎日確認しなくてもそう大事な郵便物はない。

とある日曜。
ポストに大きな回覧板が入っていた。
メモがある。

「お隣へ回してください。私もわからないのでお願いします。」と。
なんだこの無責任な内容の言葉は。
開きもせず読みもせず隣のポストへ入れようとした瞬間。

隣の玄関のドアが開いた。
タイミングが悪い。
「は?なんですか?」と顔いっぱいに出している。
ここまで文字が顔に出ている人間も…

引っ越しの時に一度挨拶した程度である。
その時はとても愛想が良かったが急に態度急変。
専業主婦などそんなものだ。

近所とうまくやる必要があるのか。
近所に噂を立てられたところで何の影響があるのだろうか。

後日、うちのポストに誤って隣人主婦の郵便物が入っていた。

誤って入ってきたのであれば隣人宅のポストへ入れればいい。

しかし私はそうはない。

きちんと郵便局へ持って行き
誤送で入っていたと一言を残し、局員へ手渡した。

またドアから出てきて嫌な顔を見た私の目が可哀想だからだ。

どうせ死ぬなら美しいものをこの目に見せてあげたい。
どうせ死ぬからだ。

ずっとここに住むわけではない。
そして、どうせ死ぬのだから。

今日死んで明日はいないかもしれない。

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