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カオス1000%!「横尾忠則展 満満腹腹満腹」展◇横尾忠則現代美術館

兵庫県にある横尾忠則現代美術館で開催中の展覧会レポートです。
期間:2023年1月28日-5月7日

VOCA展と同日日(3月)に行ったのですが、まだまだ期間もあるしレポは後にしようと思っていたら、あっ・・・・・・・・という間に会期終了間近に。
ちょっともう記憶が彼方なのですが、思い出しながらレポしてみたいと思います。
やっぱり記憶が新鮮なうちに書かないとダメですね〜。


開館10周年の企画展の軌跡


今回の展覧会は同美術館の開館10周年を記念して、これまでに企画された横尾忠則展を一気に紹介。

横尾忠則展は今まで1度も見たことがなかったのですが、本当に一気も一気。
企画展名にもあるように満満腹腹満腹!ごちそうさま!もう食べられません!
といったようなカオスみ溢れる展示となっていました。

入った瞬間、なにかの遊園地?アトラクション?みたいな楽しげな雰囲気もありながら、その濃密さに圧倒されます。
ほぼ撮影可だったこともあり、ゆっくり鑑賞ってスタイルじゃなさそうなので、たくさん撮影しました。

これまで企画された30もの展覧会を一堂に紹介するので、当然作品数はとても多いのですが、会場は見るにも撮るにも余裕があり鑑賞者に邪魔にならないレイアウトになっていたように感じられました。
天井が高いのも窮屈さを感じない要因だったかも知れません。

ただ、展覧会のWebサイトには「限界まで詰め込む」とありました
(ホントにそうだった・・・)。

10年前の開館記念展「反反復復反復」のセルフ・パロディーでもある本展では、限られた展示空間に、これまで開催された約30本の展覧会を限界まで詰め込むことを試みます。

美術館Webサイトより引用


今回は雰囲気だけ伝わればと思うので

  • 30本の展覧会ポスター + 作品

  • 簡単な感想2本

に、まとめました。
画像の撮り方が荒いのは焦りと疲れの反映だと思ってお許し下さい・・・。
展示室は2・3・4階とあり、その他小部屋みたいなところにも、とにかくあちこちギュウギュウでした。

ではでは、まず30本ザッと見ていきましょう!


2Fフロア



1.開館記念展Ⅰ  横尾忠則展 反反復復反復〜二度ある美は、三度ある。(2012)

横尾作品では特定のモチーフが繰り返し描かれる。その「反復性」に着目。


2.開館記念展II  横尾忠則展 ワード・イン・アート〜字は絵のごとく 絵は時のごとく(2013)

絵の中のさまざまな文字に注目した展覧会。
“ロディー”と読めるまでなにか分からなくて暫く考え込んでしまった。
”ART”のオブジェに観客が自由に書き込める参加型展示(2012)。面白いメッセージがいっぱい。カオス。


3.横尾忠則どうぶつ図鑑 YOKOO'S YOKOO ZOO (2013)

同館で初の子ども向けの展覧会。
ルソーの眠る・・・アレ?(子ども向け)
急に平和がぶち壊される。スーラの水浴的なアレ?(子ども向け)


4.横尾忠則 肖像図鑑 HUMAN ICONS (2013)

日本近代文学者シリーズ222点の内の1人。漱●先生


5.横尾忠則の「昭和NIPPON」ー反復・連鎖・転移 (2014)

日本の戦前・戦後・現代に昭和を重ね合わせ、捉え直した展覧会。昭和がもはやどんどん遠くなる。


6.横尾探検隊 LOST IN YOKOO JUNGLE (2014)

横尾忠則が少年時代に影響を受けた様々な物事、作品に与えた影響を見る。


7.横尾忠則展 枠と水平線と・・・ グラフック・ワークを超えて

グラフィックワークと絵画制作という作家の2つの中心となる表現活動の制作過程を見る。


8.記憶の遠近術 〜篠山紀信、横尾忠則を撮る (2014)

作家の「私のアイドル」との2ショット写真を篠山紀信が撮影。
様々な事情から四半世紀をかけて出版された写真集『記憶の遠近術』は、すでに作家の伝記のような位置づけとなった。

ポスターがカッコよかったのだけど、撮っていいのか分からなくてやめておきました。
※作品の写真は撮影は不可


9.横尾忠則 大涅槃展


10.横尾忠則展 カット&ペースト 切った貼ったの大立ち回り展 (2015)

「生きることはコラージュかもしれない」とは作家の言。
本来の場所から切り離し、新たな場所に貼られることで、新たな意味が生まれる。


11.横尾忠則 続・Y字路 (2015)

2000年以降に描かれている「Y字路」シリーズに焦点を当てた展覧会。


12.幻花幻想幻画譚 (2015)

こんな作品もあるんですね。1974~75年の新聞掲載された瀬戸内晴美(寂聴)の作品「幻花」の挿絵。
横尾さんは一度見たものは、それを見ずに描き出せるらしいです。


13.横尾忠則展 わたしのポップと戦争 (2016)

戦争とポップという真逆の産物を、作家の戦争の記憶と高度経済成長期の大量生産・大量消費とを作品から読み直す。
横尾忠則というとこのイメージでした。


14.ヨコオ・アニマリスム vol.1 (2016)

当館の作家の膨大な資料から調査中も含め紹介。存命する作家だけれど、関連資料と併せて1つの展覧会としての公開という形はもう歴史上の人物並…?


15.ようこそ!横尾温泉郷 (2016)

銭湯と温泉の国ニッポン。
国内の温泉地を巡って取材した作品たち。
なぜ宇宙人。


16.ヨコオ・ワールド・ツアー(2017)

「旅」をキーワードとした、作品や資料、その表現活動の変遷過程を紐解く。


17.横尾忠則 HANGA JUNGULE (2017)

版画とジャングル。タイトルがもうカオス。HANGA=新版画。今ならシン版画とかになりそう。
HANGA!


18.横尾忠則の冥土旅行 (2018)

「死」の様々なイメージを投影した作品の展覧会。作家自身の重要なテーマでもある。


19.横尾忠則 画家の肖像 (2018)

耳、といえば。パブロ・ピカソは作者が画家転身となるきっかけとなった人物。


20.横尾忠則 在庫一掃大放出展 (2018)

特定のテーマがない展覧会。ただひとつのの基準は、「まだ当館で展示されたことがない作品」だったとか。作品が間に合わず、あるものでどうにかした、みたいなことをギャラリートークで言っていたようないないような・・・(23.横尾忠則 自我自損展(2019) の時期は、本来この展覧会が開催されるはずだった。この時の作品が間に合わなかったからと・・・)



21.横尾忠則 大公開制作劇場 〜本日、美術館で事件を起こす (2019)

公開制作に焦点を当てた展覧会。画家転身後にアトリエがなかったから、その場所の確保のための公開制作?そんな人いる??右の方に映像があります。



22.人喰いザメと金髪女 ー笑う横尾忠則展 (2019)

ぱにぱにし過ぎ。緑の箇所がメディアて使うときピーっとなったらしい笑
出入り口から。


3Fフロア


謎の?小部屋

ちょっと休憩・・・

みんな寝てる。
寝てる。
寝てるzzz


23.横尾忠則 自我自損展 ゲストキュレーター:横尾忠則  (2019)

作家自身がキュレーターとして参加。自分の美術館で自分の作品のプランを考えるって過程が気になる。「自我自損」=「エゴに固執すると損をする」=「自己否定」というとネガティブなイメージだが、それが「自我からの解放」となる。



24.兵庫県立横尾救急病院展  (2020)

思考や言葉より、肉体からの認識を重視する作家の活動に着目。多くの病歴を持つ作家にちなみ、美術館を病院に見立てる演出を行った。


25.横尾忠則の髑髏まつり(開催中止)

開催3週間前の中止・・・。


26.横尾忠則の緊急事態宣言 (2020)

Y字路シリーズ20周年の展覧会の予定が、コロナ禍を考慮し別企画として開催されたもの。ライオン再び。



27.Curators in Panic 〜横尾忠則展 学芸員危機一髪 (2021)

東京で開催された過去最大規模の展覧会「GENKYO展」に主要作品を貸し出し過ぎてピンチになった学芸員が、その逆境を乗り越え企画した・・・という体の展覧会(ピンチは事実らしい)。普段あまり顔の見えない学芸員がゆるめにマニアックな裏話の解説をする異色の企画。
学芸員Mさんチョイス《同士討ち》
タランティーノ監督「レザボア・ドッグス」から着想?ちなみにこの映画のOPはアニメ「チェンソーマン」のOPでもオマージュされているとか(出だし5秒あたりから)。見ると確かにおぉ!ってなります。両方めちゃくちゃカッコいい!



28.横尾忠則の恐怖の館  (2021)

ここも別の小部屋。

美術館を「お化け屋敷」に見立てた展覧会。「美術館コスプレ」はこの美術館のお家芸。いや美術館コスプレって。



4Fフロア


29.Forward to the Past   横尾忠則 寒山拾得への道  (2022)

多くの画家たちが描いてきた寒山拾得。


30.横尾さんのパレット (2022)

画家生活40年を振り返る展覧会。作品の鮮やかな色彩に着目した展覧会。
20.横尾忠則 在庫一掃大放出展 (2018)では「よくできました」「もっとがんばりましょう」などのスタンプを作家本人が即興的に押すイベントが行われた。その時のものかな?
Y字路《N市 霧の夜》
突然現れてビックリした。奥まで行けます。美術館のプライベートなロッカーぽかった。


以上、簡単に、簡単に30本の展覧会のご紹介でした。

ここからは簡単な感想を少し。

まさかの絵金さんに出会う。

今年大阪あべのハルカス美術館では話題の「絵金展」が開催されます。
絵金は高知出身の謎多き絵師なのですが、前回の展覧会から約半世紀、高知県外での開催はなかったそうです。
それが2023年に開催されるわけですが。

昭和45年の絵金展

こちらに昭和45年に西武百貨店池袋で開催した時のポスターが展示されていたのです!
まったく知らなかったのでボーッと見ていてビックリしました。

令和5年の絵金展。横尾作品は結構エグめで物語性があるデザインですね。こちらは「美」が強調されている気がします。



トイレの神様ならぬ、寒山拾得。

ヘトヘトになりながら辿り着いた最後のフロア。

2、3階とは少し雰囲気がかわり、最後ということもあって椅子に座ってボンヤリ見ていました。
目の前の寒山拾得をモチーフとした作品、なんかいいなぁ好きな雰囲気。
と思ったのも束の間。

この「寒山拾得」なんか…変??

寒山と拾得は中国の伝説的な隠者(世俗から離れて暮らす人)。
実在したかは不明。
寒山は「巻物」、拾得は「」をアイテムとして持っている姿で描かれることが多い。
※ちなみにトイレの神様は烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)

拾得、クイック◯ワイパー?持ってない?
寒山、トイレットペーパー自在に操ってない??ていうか用足してない???

いや、ちょっと待てぃ。

完全に用を足す人とトイレ掃除してる人だし。
しかもなんか楽しそうだし。

もうなんか、一気に脱力。と共に笑えてきて、疲れていた身体と気持ちがスゥッと落ち着きました。

今までも「うわぁ・・・」と思う寒山拾得は見たけど、さらなる自由の境地を見た気がしました。
恐るべし、寒山拾得。

コロナ禍で外出を控えている頃、籠って描いた新たなモチーフが寒山拾得。
作家の難聴や腱鞘炎といった、身体的な感覚の変化から生まれた表現。
掃除してるのに悠然と用を足すメイワクな人、みたいになっている。
経巻・・・じゃないトイレットペーパーで遊んじゃいけません。


東京の秋は寒山拾得ですね。


まとめ

知名度もあり、作品も知っているのに中々見ることがなかった横尾忠則作品を、一生分見た気がします。

そもそもご存命の作家の美術館にも行ったことがなく、ここまでのボリュームで見たこともなかったので、不思議な気持ちです。

今回の展覧会で、作家の業績・アイディアもさることながら、ここまで人と作品が近く、また美術館自体を温泉や病院や特売セール会場に「見立てる」構想の面白さなど、展示の仕方って有限なようで無限にあるのかも、と思ったりしました。

わたしたちは、博物館が作り出来上がった状態の展示会場を見ているけれど、もしかしたらそれがすべてではないのかも、と思わされる展覧会でもありました。
(もちろんこれは作品や資料、施設の設備や制約などがあるのを承知の上での妄想です)




併設されているカフェ”ぱんだ”さんにて。珍しくカフェでお茶をしました(いつも時間がなくなってカフェとかほとんど行けない涙)
ドクロ!(横尾作品が絵付されている)
カフェからの眺め。向かいに神戸文学館。行きたかったけど時間があるはずもなく涙。元は1904年建設の関西学院のチャペル。建築としても見たかった〜〜〜
珍しくグッズも買いました。なんとなく。

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