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顎関節症という歯科医療被害3-19 画像診断について(10)  腫瘍・腫瘍類似疾患について(5)

(52P)

[図19]顎関節腔二重造影CT像
紛らわしいので解説する便宜上
①〜⑯まで番号を振っている。
いずれも左側下顎頭を通る前頭断CT像で
①が最も後側、⑯が最も前側の断面となっている。

  私が先の項で解説した「二重造影」CT像として提示しているはずなのに「下関節腔は単一造影」だとして担当著者の意味不明な説明文を添えられた[図18]は矢状断CT像であるが、[図19]では同一症例が前頭断CT像で示されている。前頭断は身体を正面方向から観察した様な状態であるが、次はその「顎関節腔二重造影CT像[図19]」の説明文である。

「図15 bと同症例の修正前頭断像。(中略)
 上関節腔の辺縁は不整で、
 下顎窩面の不整な軟組織肥厚が存在し、
 (説明の中身が無いので中略)
 また、上関節腔内側部に腫瘤が
  集積している箇所がある(黄色矢印)。」

 先の項[図18]の説明でも示したが、関節構造把握の為に二重造影CTの撮影ではX線透過率の異なる造影剤を2種類使用する。像に明るく反映される液体の陽性造影剤と、像に暗く反映される気体の陰性造影剤である。直ぐに溶け入る事のできない液体と気体が同じ空間に閉じ込められたなら、質量が軽い気体は上に逃げて液体は下に沈んでしまうというのは当然の沈殿現象である。
 重力がヒトの身体にも働いているのは言うまでもないことだが、それは顎関節腔二重造影CT撮影時の顎関節包内においても変わらない。勿論、使用される2種類の造影剤にもそれぞれの質量があって明確な差がある。気体と液体を陰性・陽性造影剤として撮影に用いるのだから、上下関節腔が円板軟骨と付随組織によって完全に封鎖されていないとなれば、時間経過とともに2種類の造影剤は各々重力に従って顎関節腔内を動くはずである。
 それに加えて顎関節をCT撮影する時の姿勢を考えると、患者は横を向いて寝台に眠るような姿勢であるものと推察される。

[私図]一般的なCT撮影の図
CTは撮影方向を自由に変えることができず
ガントリー内の狭い範囲で撮影するため
患者は顎関節二重造影CT撮影時に
不自然な姿勢を取ることになる。
[私図]左側下顎頭の前頭断CT像を撮影する姿勢
患者は寝台の上で右を向いて横になり、
下顎枝の方向と撮影断面が並行になるよう
狭いガントリー内で首を反らせた不自然な姿勢で
二重造影CT像を撮影することになる。
閉口位(矢状断)→開口位(矢状断)→閉口位(前頭断)
という撮影順序になるものと考えられる。

 また造影剤と同様、起立状態ではぶら下がっているような下顎骨全体にも重力が作用している。首を反らせた状態でCTを撮影して観察したならば、普段の開閉口動作とは異なる状態を正常な姿勢の動作として観察することになる。そこまで口腔外科医師の考えが回っているかはともかく、顎関節二重造影CT像を前頭断で撮影する際には患者の身体が横を向いて眠るような姿勢である可能性が高い。
 そうであれば観察される側は天井を向いているはずであり、前頭断CT撮影時の姿勢で重力が働く方向は横を向いて眠る身体の寝台側である。[図19]のように前頭断で左側顎関節を観察するならば、観察する顎関節の内側が下になるので前頭断CT像[図19]の向かって左側が重力の働く方向になる。

 「上関節腔内側部に腫瘤が集積している箇所がある(黄色矢印)。」と説明の終わりにあるのだが、腫瘤が集積しているものとされお得意の黄矢印で示された箇所は下顎頭の内側(CT像内左側)に位置していて、明らかに骨よりも白く映り込んでいる。更にいえばまるで心霊写真のように不自然に白く映るその中でもグラデーションがある。これはどういうことなのか。

[図19]⑩
腫瘤が集積しているという白い像だが
外側に向かって外側に向かうほど像が薄暗く
グラデーションになっている。

 滑膜性骨軟骨腫症の断定に必要な石灰化物は、例えるならば「骨になりそびれた石灰化物」あるいは「損傷して擦り減った骨の削りカス」が関節内に滞留して再結晶化したものであるといえるだろう。骨を修復する為に顎関節骨格へ送られた骨の成分がどれだけ寄せ集まって腫瘤のように結晶化して見えたところで、それが外力の加わる本物の骨よりも密に固まってCTで高信号に明るい像として反映される事などあり得ない。

[図19]③、⑦、⑩
説明文には「関節円板・後部結合組織上面の不正な突起が内外側的連続しているのがわかる(赤矢印)。」とあり、二重造影CT像⑩に特別な病変でも見つけたかのような文面である。だが、円板後部結合組織は血管や神経が密集した組織なので元々明確な輪郭など持っておらず、健康な人であっても注入された陽性造影剤が円板後部結合組織に染み込めばそれが不規則な像として映し出されても何ら不思議なことではない。柔らかい後部結合組織にまるで硬い突起でも生えたかのような説明文は状況の誤解を招く
全く的はずれな観察日記である。
[図19]③、⑦、⑩の構図を私が解説したもの
説明文には「上関節腔の辺縁は不整で、下顎窩面の不整な軟組織肥厚が存在し(白矢印はその一部)、」とあるのだが、上関節腔と下顎窩の間に映る
ぼやけた薄暗い像は空気の圧力で押し付けられた
上側の後方靭帯に染み込んだ陽性造影剤である。
赤矢印で示した「不整な突起」とやらも
本当は円板後部結合組織などではなく
下側の後方靭帯が同様に空気に押し付けられて
後方靭帯に染み込んでいた陽性造影剤が
不規則な像として映り込んでいるだけである。

 また、[図18]bでは、僅かながらも下関節腔が骨よりも白く反映されている箇所が見受けられるが、[図18 ]aと同じ条件で撮影して陽性造影剤の使用量が同じであるならば、もっと明瞭に下関節腔が白く像に反映されていたはずである。

①[図18 a閉口位]と同じ量の造影剤を
 使用していたのならば、
 空気より重たい「液体」である
 陽性造影剤は何処に逃げたのか。
②同じ症例で、同じ二重造影CT像で、
 周囲の骨格には目立った変化が無いのに、  
 下関節腔の像に現れる濃淡が
 全く違うのは何故か。
③造影CT撮影時の姿勢を考えた時、
 重力が働く方向は
 観察する顎関節の内側か、外側か。
④パノラマエックス線でも
 確認出来なかった石灰化物が骨よりも
 高信号で明るくCT像に映るものなのか。
⑤顎関節内に腫瘤のもとになる
 石灰化物が「集積」するとして、
 顎関節の内側だけに溜まるのは何故か。
⑥担当著者が「腫瘤」とする黄矢印の
 白い像にグラデーションがあり、              
 それが顎関節の内側になるほど
 白く明るく映っているのは何故か。

 以上の6点を考えるとこの著者が「腫瘤」として黄矢印で示しているのものが何なのか、状況から考えられることは1つしかない。腫瘤とする物の正体、それは自分達で患者の顎関節腔に注入した「陽性造影剤」に間違いないだろう。

 考えれば考える程に馬鹿らしくなる話であるが、[図18・19]の状況から白く映る「腫瘤」は造影された病変などではなく、陽性造影剤そのものであると考えるのが妥当である。撮影姿勢の変化に伴い液体である陽性造影剤が重力に従って下になる顎関節内側へ「集積」するように沈殿した結果、不自然なほどに骨よりも白くCT像として映っただけの事なのである。

[私図]二重造影CTで造影剤が偏る原理
左側顎関節の前頭断CT撮影で右を向いて横になると
左側顎関節の内側が下になる。
陰性造影剤よりも陽性造影剤の方が重いので
時間経過で沈殿現象が進むと造影剤が偏ってしまい
腫瘤やその他の病巣など無くても内側部分が
骨よりも白く明るく映ることになる。
[図19]③、⑦、⑩の観察断面と位置関係の比較
下顎頭の断面形状と腫瘤とする像の位置関係からも
内側部分で白く明るく映る像はCT撮影時の姿勢で
陽性造影剤が沈殿しただけだと考えるのが妥当だ。

 考えるのも恐ろしいが、患者はその後で顎関節症専門家の口腔外科医師からどのような処置を受けたのだろうか。顎関節の内側は関節結節を切除しても覗けない身体の深部であるし、狭くて入り組んでいるとあれば内視鏡も届かない。自分達で腫瘤と決め込んだ物を取り除こうと考えたなら、デタラメな外科処置によって患者の顎関節骨格はノミで切り割られて医療廃棄物にされたのかもしれない。 
 それは決してあり得ない話ではなく、現実にそのような処置がこの医学書に後で現れる。それは下顎骨の「関節突起」を1cmほど、鶏ガラでもぶった切るかのように真横から切断・除去する処置である。しかし、それでも腫瘤は取り除けない。何故ならば腫瘤は顎関節症専門家が訳も分からぬまま二重造影造影CTで創り出した心霊写真であり、白く映った箇所に病巣など初めから存在していないのだから。

 これまで滑膜性骨軟骨腫症の画像診断として説明されてきた[図15~19]であるが、結局のところこのインチキデタラメな歯学書を読むだけでは滑膜性骨軟骨腫症という「お化け」の定義が分からないのだが、そもそも実体がないのだから当然と言えば当然である。
 「典型例」とする症例では石灰化物の存在が十分に疑えるが、「非典型例」として[図17~19]に示された同一症例では最終的に石灰化物も見られず、彼らが腫瘤とするものも自分達で注入した造影剤そのものである。そもそも石灰化物が滑膜性骨軟骨腫症の条件として全く関係が無いのならば本末転倒であり、これまでに示してきた画像やおかしな日本語の説明文は何だったのか、読み手には意味も意図も分かるはずが無い。

結論
パノラマX線でも石灰化物が検出できない
滑膜性骨軟骨腫症の非典型例として
提示されてきたこの症例であるが、
最終的に二重造影CTで検出した腫瘤とする像は
滑膜性骨軟骨腫症の病巣などではなく、
二重造影の原理を分かりもせずに自分で注入した
陽性造影剤が沈殿して明るく映っただけであり、
この患者が滑膜性骨軟骨腫症とする論拠は
どこにもなく誤診であることは間違いない。
心霊写真を見つける心霊現象専門家と同じように
この著者は二重造影CTで病を捏造して
滑膜性骨軟骨腫症だと空騒ぎしているのである。

 禄に診断画像の構図を解説することもなく手前勝手に写真を並べてテキトーに矢印を振り、不要な専門用語を並べてはソムリエよりも抽象的でおかしな日本語説明文を添え、関節二重造影CTの原理も理解していないのに知ったかぶりをして何もかもが矛盾だらけ。
 学びを得るための教書としては読む価値も無いほどに酷い内容であるが、この歯学書に収められた日本顎関節学会所属のヤブ医者達による馬鹿な行いは歯科医療被害を訴える人間にとっては悲惨な歯科医療の告発に信憑性を増す為の状況証拠として価値のあるものだ。 エリートな彼らは立派な墓穴を今日も自分で掘り続けている事だろう。だが、落ちるのは自分だけにして欲しいものである。

















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